記者発表 2009年2月5日

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国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第31号
「有害廃棄物の処理−アスベスト、PCB処理の一翼を担う分析研究」
の刊行について(お知らせ)

(環境省記者クラブ、筑波研究学園都市記者会同時配付 )

平成21年2月5日(木)
独立行政法人国立環境研究所
企 画 部 長  : 松井  佳巳 (029-850-2302)
環境情報センター長  : 松本  公男 (029-850-2340)
環境儀WGリーダー  : 大迫  政浩 (029-850-2835)
広報 ・ 国際室  : 広兼  克憲 (029-850-2308)


国立環境研究所の研究成果を分かりやすく伝える研究情報誌「環境儀」第31号「有害廃棄物の処理−アスベスト、PCB処理の一翼を担う分析研究」が刊行されました。この号では、有害廃棄物であるアスベスト(石綿)、PCBの処理技術の開発や評価に関する分析化学面からの研究を取り上げました。

アスベストは建材を中心に大量に使用され、アスベストによる中皮腫の発症は大きな社会問題になりました。今後も大量のアスベストが廃棄物として排出され続けることから、適切な無害化処理対策が求められています。一方、1960年代に起きたカネミ油症事件を契機に、製造が禁止された使用済みPCBが現在も大量に残されたままであり、その適正処理が進められています。

このように、有害性の認識がありながら、安全・安心な処理技術がなかったため、廃アスベストと廃PCBは長い間「負の遺産」として存在してきました。本号では、有害廃棄物対策の研究分野で分析化学的アプローチを用いて長年研究を進めてきた二人の研究者の活動に焦点をあて、リサイクルできない、厳重に最終管理すべき有害廃棄物の対策に関する研究を紹介します。「循環型社会」や「3R」を目指す中で、私達の社会経済活動が生み出した過去の「負の遺産」の適正な処理も、安全・安心な循環型社会づくりに不可欠であることを再認識して頂ければと思います。

1  第31号の内容

「有害廃棄物の処理」をテーマに、長年この分野で研究を行ってきた二人の研究者の活動に焦点が当てられます。「Interview研究者に聞く」では、二人が地方環境研究所の時代から現在にいたるまでの30年余の間、時々の有害廃棄物を中心とする廃棄物問題にどのように研究面から対処してきたかが熱く語られます。最近では「循環型社会」に関心が移っていますが、現場で起こっている廃棄物問題や現場での問題解決がどのように行われてきたかを改めて考えさせてくれる内容になっています。現場での問題解決を知った上で、政策的な課題研究に取り組むべきとの主張は説得力があります。

廃アスベストや廃PCBの対策については、二人のライフワークである分析化学的アプローチからの研究が紹介されています。アスベストは溶融などの技術で無害化処理されますが、どのレベルまで処理したら安全なのかを判定する分析方法が確立していませんでした。そこで、透過型電子顕微鏡を用いた方法を新たに開発しました。一方、廃PCB処理については、化学処理技術の評価に資するPCB分解メカニズムの解明や、処理基準判定のための分析手法を確立しました。その成果は、現在の国レベルの処理対策に活用されています。

「循環型社会」や「3R」を目指す中で、私達の社会経済活動が生み出した過去の「負の遺産」の適正な処理も、安全・安心な循環型社会づくりには不可欠なのです。


環境儀第31号

内容は、

(1) 研究担当者へのインタビュー

  • 貴田 晶子(きだ あきこ)
    循環型社会・廃棄物研究センター廃棄物試験評価研究室長
  • 野馬 幸生(のま ゆきお)
    循環型社会・廃棄物研究センター物質管理研究室長

(2) 研究成果のサマリーや国内外の研究の動きの紹介のほか、『負の遺産』『石綿(アスベスト』『PCB(ポリ塩化ビフェニル)』、などについてのコラム、その他用語解説等



2  閲覧・入手についての問い合わせ先

「環境儀」は、研究所のホームページで閲覧することができます。
http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/
   
冊子の入手については、下記へお問い合わせ下さい。
連絡先:国立環境研究所環境情報センター情報企画室出版普及係
(TEL: 029-850-2343、E-mail:pub@nies.go.jp)


(参考)これまで「環境儀」で取り上げたテーマ

30号 : 「河川生態系への人為的影響に関する評価 よりよい流域環境を未来に残す」
29号 : 「ライダーネットワークの展開−東アジア地域のエアロゾルの挙動解明を目指して」
28号 : 「森の息づかいを測る−森林生態系のCO2フラックス観測研究」
27号 : 「アレルギー性疾患への環境化学物質の影響」
26号 : 「成層圏オゾン層の行方 - 3次元化学モデルで見るオゾン層回復予測」
25号 : 「環境知覚研究の勧め−好ましい環境をめざして」
24号 : 「21世紀の廃棄物最終処分場−高規格最終処分システムの研究」
23号 : 「地球規模の海洋汚染−観測と実態」
22号 : 「微小粒子の健康影響―アレルギーと循環機能」
21号 : 「中国の都市大気汚染と健康影響」
20号 : 「地球環境保全に向けた国際合意をめざして  ― 温暖化対策における社会科学的アプローチ」
19号 : 「最先端の気候モデルで予測する『地球温暖化』」
18号 : 「外来生物による生物多様性への影響を探る」
17号 : 「有機スズと生殖異常−海産巻貝に及ぼす内分泌かく乱化学物質の影響」
16号 : 「長江流域で検証する『流域圏環境管理』のあり方」
15号 : 「干潟の生態系−その機能評価と類型化」
14号 : 「マテリアルフロー分析−モノの流れから循環型社会・経済を考える」
13号 : 「難分解性溶存有機物−湖沼環境研究の新展開」
12号 : 「東アジアの広域大気汚染−国境を越える酸性雨」
11号 : 「持続可能な交通への道−環境負荷の少ない乗り物の普及をめざして」
10号 : 「オゾン層変動の機構解明−宇宙から探る  地球の大気を探る」
9号 : 「湖沼のエコシステム−持続可能な利用と保全をめざして」
8号 : 「黄砂研究最前線−科学的観測手法で黄砂の流れを遡る」
7号 : 「バイオエコ・エンジニアリング−開発途上国の水環境改善をめざして」
6号 : 「海の呼吸−北太平洋海洋表層のCO2吸収に関する研究」
5号 : 「VOC−揮発性有機化合物による都市大気汚染」
4号 : 「熱帯林−持続可能な森林管理をめざして」
3号 : 「干潟・浅海域−生物による水質浄化に関する研究」
2号 : 「地球温暖化の影響と対策−AIM:アジア太平洋地域における温暖化対策統合評価モデル」
創刊号 : 「環境中の『ホルモン様化学物質』の生殖・発生影響に関する研究」

バックナンバーはホームページから閲覧できます。
http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/