4.アジア自然共生研究プログラム
5年間の研究概要
本プログラムでは、アジアの大気環境、水環境及び生態系についての実態把握・解析、環境政策の解析等の科学的知見の集積、データベースや数値モデル等の研究ツール、環境管理ツールの開発、技術・政策シナリオの構築等を行うことを目的とする。
中核プロジェクト1「アジアの大気環境管理評価手法の開発」においては、東アジア地域を対象に、大気汚染物質と黄砂の地上観測、航空機観測、ライダーネットワーク観測等を行い、国内外の観測の連携を進めるとともに、数値モデルと排出インベントリの精緻化を進めた。これらの観測データ、数値モデル、排出インベントリ、更に対流圏衛星観測データを活用して、アジア地域の広域大気汚染と日本への越境大気汚染の全体像を把握し、日本国内を含むアジア地域の大気環境施策立案に必要な科学的知見とツールを提供した。中核プロジェクト2「東アジアの水・物質循環評価システムの開発」においては、衛星観測と地上観測を組み合わせた観測システムによって得られるデータと汚濁負荷に関する現地調査、水・物質循環モデルを組み合わせた評価システムの有効性を実証し、南水北調や退耕環林政策などの環境影響評価を行った。また、東シナ海における長江起源水が流入する海域において、赤潮の原因となる植物プランクトンの出現を見出すと共に、観測とモデリングによってその動態を把握した。更に、中国の拠点都市瀋陽市における実証研究として、都市環境のデータを統合的なGISデータベースとして整備し、水・物質・エネルギー統合型モデル研究を推進した。中核プロジェクト3「流域生態系における環境影響評価手法の開発」では、メコン河流域全体の自然環境を把握することの出来る高解像度の地理空間データベースを構築すると共に、ダム建設が年間の氾濫動態や淡水魚類の回遊に及ぼす影響を評価する手法を開発した。また、メコンデルタのマングローブ林の生態系機能と汚濁負荷の関係を明らかにした。
[外部研究評価委員会事前配付資料 追跡調査シート(PDF 359KB)]
研究開始時の背景と5年間の研究概要/第2期の事後評価結果と対処方針/学術的貢献/社会・環境政策などへの貢献・波及効果/研究成果の発表状況等
外部研究評価委員会からの主要意見
[学術的貢献について]
○ 第2期では、研究対象が地域的に限定され、目標が絞られているほか、観測にくらべモデリングを主体としたことにより、小さな資源・予算でも十分な研究成果が得られた。第2期から第3期への展開は明確であり、東アジア大気環境評価システムのマルチスケール化、排出シナリオなどを包含した統合システム評価研究に期待する。これらは国際的研究ネットワークや多くの国際研究活動に貢献している。
○ 高水準の個別研究成果が、アジア各国の科学的知見、環境管理の共通基盤形成にどうつながりつつあるのか。東南アジアの流域生態系研究が日本の国益にどのようにつながるのか。また、中核プロジェクト間の有機的連携も不十分であり、今後も「自然共生」研究を継続するのであれば、それにふさわしい概念構築と外部発信が必要である。
[社会・環境政策などへの貢献・波及効果について]
○ 第2期では、国際的研究ネットワークにより、越境・広域汚染に関わる今後の東アジア環境管理計画に向けた科学技術外交や、科学的観測結果・科学技術に裏づけられた国際的環境保全政策に貢献しうる研究成果が得られた。特に、黄砂のライダーネットワークを活用した予報システムの構築、対流圏オゾンの起源別解析や汚染物質放出量の定量的評価などは、高度な科学的知見として国際的に評価されている。
○ アジアの環境問題に対する「科学技術外交」は不十分なままであり、従前のデータや情報の蓄積を、学術貢献以外を含め、どのように生かすべきか、継続的に検討する必要があろう。越境汚染研究の自治体政策貢献までの道筋を検討することにも期待する。例えば、国内の気候変動適応策などの検討の成果をアジアに展開してはどうか。国際環境人材の育成にも期待する。
主要意見に対する国環研の考え方
○ 個々の研究成果は、アジアでの環境管理の共通基盤形成に一定の貢献をしたと考えていますが、その有機的連携による総合的な展開・幅広い活用の点では必ずしも充分でなく、また、東南アジアの流域生態系研究などの国際的な位置付けや日本の国益との関係が不明確な部分もあったことは確かであり、これらの教訓を第3期における所全体としてのアジアを対象とした研究に活かしたいと考えています。
○ 第3期で国内とアジアの環境問題を対象とする地域環境研究センターが発足し、その中において、社会センターと連携したコネベフィット型水処理技術を東南アジアに展開する研究、地球センターと連携した東アジアの広域大気汚染と地球温暖化に係る研究など、環境外交政策に資する研究を推進しており、これらの研究要素を全所的なアジア等国際環境研究推進戦略に位置づけることによって、アジア環境研究を戦略的・総合的に推進したいと考えております。
○ 越境汚染研究成果を自治体の政策に活かすためには、自治体における越境汚染影響を定量的に把握すること、それをもとにしてその自治体と連携して政策検討することが重要です。その面での自治体研究機関との連携は今後とも推進したいと考えております。更に、国際的な環境問題に取り組む人材の育成は、第3期でも継続して取り組む所存です。
