8.環境計測研究分野
研究の概要
顕在化した環境問題の解決、問題の拡大の防止、更には新たな問題の発生の未然防止のためには、環境問題の発生メカニズムの理解とそれに基づく将来予測、有効な対策の立案と対策効果の検証が必要である。そのためには、環境の状態やその変化とその影響を把握、追跡、評価することが不可欠である。
そこで当該研究分野、環境の状態や変化を把握・監視するための環境計測・モニタリング手法や、環境ストレスに対する生体・生物応答の計測技術の開発・高度化に関する調査・研究を実施する。また、大量・多次元の計測データから必要な環境情報を抽出するための情報解析技術の開発・高度化に関する調査・研究を実施する。更に、化学分析精度管理手法の改善や相互比較などによるデータ質の評価、環境標準物質の調製と環境計測への応用、並びに環境試料の保存や保存試料の活用技術の開発等に関わる調査・研究を実施する。以上により、環境計測技術等の革新的進展、環境保全の基盤となる計測データ質の保証と管理の充実、新たな環境悪化の懸念要因の発見やその評価等に貢献することを目標とし、環様式1境計測研究センターが主体となって研究に取り組む。
環境計測研究センターで実施する研究活動は、(1)先端的計測手法の開発、(2)計測データ質の確保と管理、(3)計測手法の整備と計測能力の向上、(4)計測手法の応用、の4つに分類して研究を推進している。この内、(1)の先端的計測手法の開発については、先導研究プログラムとして、様々な対象(大気、水、土壌、植物、生体試料など)における残留性有機汚染物質(POPs)をはじめとした化学物質の監視のための手法開発、環境の変化やその状態を読み取れる環境トレーサーの開拓を含むモニタリング手法開発、衛星搭載センサの開発(データ解析を含む)に関わる研究を進めている。研究プログラムを含む当該研究分野の本中期計画期間における研究目標は以下の通りである。
① 環境分析方法の正確さと分析値の信頼性を支える観点から、国際標準となる環境標準物質の作製・頒布を進める。
② 環境汚染の長期的変遷の追跡の観点から、POPs類を含む分析対象媒体の拡大や広範な化学物質を対象とした分析を可能にするような分析法を開発する。
③ 環境中化学物質の動態解明の一つの手段として、同位体(14Cを含む)や生物起源化学物質あるいは人為起源化学物質をトレーサーとした動態解析手法の開発とその活用研究を行う。
④ 化学分析手法を用いた研究と連携を図りながら、磁気共鳴イメージング(MRI計測)手法や動物行動試験法など、環境ストレスに鋭敏に応答する脳神経系への影響評価手法を開発する。
⑤ 雲エアロゾルの計測手法の開発・高度化として、次世代型レーザーレーダー(ライダー)や衛星搭載型ライダーの原理検証とデータ解析手法開発、ライダーデータを活用したエアロゾルの種別判定手法開発、ライダーと受動型センサの併用手法並びにライダーデータの品質管理手法の開発を進める。
⑥ 大量かつ多次元の環境計測データからの環境情報の抽出手法開発として、ハイパースペクトルセンサのデータ解析手法を開発する。また、生物分布や生態系の変化を観測する各種計測手法及びそのデータ処理手法の開発研究を進める。
[外部研究評価委員会事前配付資料 (PDF 1,465KB)]
研究の概要/今年度の実施計画概要/研究予算/平成23年度研究成果の概要/今後の研究展望/自己評価/誌上発表及び口頭発表の件数
外部研究評価委員会による年度評価の平均評点
総合評価の平均評点 3.92 点(五段階評価;5点満点)
外部研究評価委員会からの主要意見
[現状についての評価・質問等]
○ 震災で被災・停止した施設・分析機器の復旧といった問題はあったものの、全体としては順調に研究が推進されており、特筆すべき成果も出てきている。
○ 環境計測に不可欠な装置・技術が着実に開発されている。
○ 放射性物質に対する二枚貝モニタリングや放射性核種の粒径分布など、個別研究的に重要な取り組みがなされていることは高く評価できる。
○ 様々な研究項目の中から、本分野としての優先順位付けが必要である。
[今後への期待など]
○ 化学計測に関しては、エコチル研究、化学物質リスク研究などへの成果の活用、物理計測に関しては地球環境研究などへの成果の活用が期待される。
○ 他の研究機関との共同研究として成り立つものもあり、国環研としての貢献が見える形での対応が望まれる。
○ 環境標準物質は、我が国の分析精度管理としてだけでなく国際的にも高い信頼性を得ているので、今後も着実な進展を期待する。
主要意見に対する国環研の考え方
① 現在開発に取り組んでいる計測手法については、研究所内ならびに所外の研究機関・グループとの連携を図り、計測手法の応用研究を常に意識して研究を進めていきます。
② 開発した計測手法の活用だけでなく、手法開発自体においても、研究所内外に向け、その進捗情報の発信や共同研究提案を行うなど、他の機関・グループとの連携に心がけます。
③ 今後とも災害環境研究の一環として、二枚貝モニタリングを始めとした環境監視を継続し、貴重なデータの提供を推進していきます。
C 所内外のニーズの把握・先取りを踏まえた対象とする標準物質の優先順位付けと、国際的にも特徴のある環境標準物質(環境媒体中の標準物質)の作製・頒布に努めていきます。
