7.社会環境システム研究分野
研究の概要
環境問題の根源となる人間の社会経済活動を持続可能なものとする環境と経済が両立する持続可能社会への転換に貢献するためには、人間と環境を広く研究の視野に入れて、社会経済活動と環境問題との関わりを解明するとともに、環境と経済の調和した持続可能な社会のあり方とそれを実現するための対策・施策を提示する必要がある。
持続可能な社会の早期実現を目指して、社会環境システム研究分野の調査・研究を実施する。特に、環境・社会・経済のモデル開発と改良を進め、内外の諸問題へ適用し、現状及び政策分析を進めるとともに、国内及び世界を対象とした持続可能性の検討、シナリオ・ビジョンの構築、持続可能な生産と消 費のあり方の検討を行う。
具体的には、持続可能な社会に向けた実現シナリオやロードマップの構築と実現方策の立案、持続可能な都市のあり方の検討、コベネフィット型の環境都市とモデル街区のシステム設計と社会実証に関する研究など、持続可能な社会の構築に重点をおいた研究を推進する。また、これらに関連して、環境意識等に関するモニタリングや社会と科学に関するコミュニケーション、環境政策の経済的評価や効果実 証と制度設計など基盤的な研究を行う。
以上の調査・研究を推進することにより、以下の方向を目指す。
① 持続可能な社会の将来シナリオの基礎となるドライビングフォースとしての社会・経済のビジョンを、シナリオアプローチにより分析し、今後生じうる様々な環境問題を想定しつつ、持続可能な社会実現に必要な対策や社会・経済のあり方、消費やライフスタイルのあり方を定性的及び定量的に提示する。
② 人間活動から発生する環境負荷の環境資源と都市活動への影響を解析する環境シミュレーションを踏まえつつ、環境影響の低減と社会経済の改善を同時に実現するコベネフィット型の技術と施策を 組み合わせる環境ソリューションとその計画システム及び評価方法論を構築する。
③ 統合評価モデルや環境経済モデルの開発・改良を進め、上記@及びAへの適用、内外の諸問題へ適用し、現状及び政策分析を進めるとともに、環境政策の経済的評価や効果実証などの研究を行う。
①及び②は、それぞれ先導研究プログラム「持続可能社会転換方策研究プログラム」、「環境都市システム研究プログラム」を中心に研究を進める。
③については、本研究センターの当該分野の研究活動(基盤的研究)として進める。
以上は、当初の研究計画であるが、本年3月11日に発生した東日本大震災は、地震、津波、原子力発電所の事故による放射性物質の放出など、社会、経済、環境、人々の生活の多大な影響をもたらした。社会環境システム研究分野を担当する当研究センターとしては、大震災からの復旧・復興に資する調査研究、とくに復興都市づくりや地域づくり、大震災後のエネルギー対策と温暖化防止対策の検討など、研究プログラム及び基盤的研究の一部研究計画を変更して、対応することとした。
[外部研究評価委員会事前配付資料 (PDF 3,168KB)]
研究の概要/今年度の実施計画概要/研究予算/平成23年度研究成果の概要/今後の研究展望/自己評価/誌上発表及び口頭発表の件数
外部研究評価委員会による年度評価の平均評点
総合評価の平均評点 4.17 点(五段階評価;5点満点)
外部研究評価委員会からの主要意見
[現状についての評価・質問等]
○ 震災対応型研究に関して、身近な問題の検証から、原発のあり方と将来予測というこれから考えていくべきシナリオをいち早く提示し、社会的な要求や疑問に答えていることは高く評価したい。
○ 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や締約国会議(COP)への貢献など国際的活動も精力的に行っており、評価できる。
○ コベネフィットという考え方がアジアへの展開の中心的な思想になっているが、この概念がどこまで適応可能であるか再考の必要がある。
[今後への期待など]
○ 持続可能社会システムの実現に向けて、大きく研究が進展しており、この方向で更に研究を進めることで、社会に有用な成果が得られていくものと期待される。
○ エネルギー収支、物質収支、価値の収支を指標とした社会システムの評価が広く行われることが期待されるとともに、これらの収支と人間活動(生活)への機能提供との関係、ライフスタイルによる影響などが明らかにされた上で、持続可能性がわかりやすく説明され、社会に情報発信が行われることが期待される。
○ 研究所の省エネ実践結果から有効な情報を抽出し、普及してほしい。
主要意見に対する国環研の考え方
① 震災対応型研究については、引き続き他研究センターや地球温暖化研究プログラムと連携して進めていきます。また、得られた成果を積極的に発信するなど、社会ニーズに対応する役割を果たすよう努めます。
② 研究成果を国際学術論文として発信することが重要ですが、同時にIPCCなどの国際的な研究活動に実際に参画し日本の研究成果を伝えること、またCOPなど温暖化国際交渉を研究の視点から分析・評価することなど、引き続き活動を進め、研究所が国際的な中核研究拠点としての役割を果たすために努力していきます。
③ 地球環境問題への対応と地域環境の改善を両立する必要があるという点でコベネフィットアプローチは環境省の国際展開の主要な考え方の一つになっていますが、複数の環境価値を同時に視野に入れるだけではなく、多元的な意思決定支援に向けた科学的なプロセスを提供するという立場で、リスク比較やQOLの観点から総合的に評価する研究を行います。
④ 持続可能社会の実現は難しい課題ですが、大震災後のエネルギー対策と温暖化対策の在り方や、コンパクトで低炭素な環境未来都市の在り方の検討も踏まえて、持続可能な社会の考え方、実現方策について、引き続き取組みます。
Dエネルギー収支、物質収支、価値の収支を指標とする環境および経済に加え、社会関係資本の関係について研究することで、持続可能性を分かりやすく説明するとともに人間活動(成果)との相互関係を明らかにし、社会に発信することを目指します。
E昨夏の研究所の節電・省エネの実践を一過性のものとせず、今後研究活動面で節電・省エネによるエネルギー消費削減やCO2削減効果の分析と具体化を進めるとともに、未来型節電・省エネ方策などの検討を進め、成果を積極的に社会に発信することを目指します。
