2.資源循環・廃棄物研究分野
研究の概要
生産・消費活動の負の側面である廃棄物問題を解決し、資源の効率的な利用と健全な物質循環が確保された循環型社会への転換を進めることが、わが国のみなならず世界共通の課題であり、問題解決のための科学的、技術的課題の克服が求められている。そこで、社会経済活動に伴う物質の利用と付随する環境負荷の実態解明及び将来展望、資源性・有害性の両面からみた物質の評価・管理手法の構築、並びに資源の循環的利用、廃棄物・排水等の適正処理及び汚染された環境の修復・再生のための技術・システムの開発、評価及び社会実装に関する調査・研究を行う。
また、平成23年3月に発生した東日本大震災は被災地各地に大量の災害廃棄物をもたらし、さらに、原子力発電所の事故により放出された放射性物質に汚染された廃棄物や土壌等が広域かつ大量に発生し、その除染や適正処理処分が危急の課題となっている。これらの課題を取り巻く状況の変化に適応しながら各課題に迅速かつ適切に対応するため、所外の関係機関との連携を図りつつ、環境省及び地方自治体からの協力依頼・要請等に対応しながら、緊急的な調査研究を実施し、災害廃棄物及び放射性物質 汚染廃棄物等の処理の推進に貢献する。
このような資源循環・廃棄物研究分野は、より大きな資源循環・廃棄物分野のパラダイムである循環型社会の構築に関する研究をプログラムとして柱立てし機動的に推進するとともに、政策課題でありかつ廃棄物管理に関する個別の研究課題を政策対応型廃棄物管理研究として着実に進めていくこととした。また、資源循環・廃棄物分野の新たな研究技法や概念に関する萌芽的な基盤研究及び環境研究の基盤となる情報・データ等の整備に関する環境研究基盤の整備を研究の柱として構成した。今期より資源循環・廃棄物研究センターに新設した「研究開発連携推進室」を本格的に立ち上げ、連携推進のテーマに応じて「アジア等研究・技術開発推進基盤チーム」「循環型社会地域再生チーム」「災害・放射能汚染廃棄物等対策チーム」の三チームを編成した。これらのチームを機動的に機能させ、研究プログラムや政策対応型廃棄物管理研究と連携し、さらには国内外の諸機関とも協力・連携しつつ、精力的な活動を展開する。
[外部研究評価委員会事前配付資料 (PDF 3,652KB)]
研究の概要/今年度の実施計画概要/研究予算/平成23年度研究成果の概要/今後の研究展望/自己評価/誌上発表及び口頭発表の件数
外部研究評価委員会による年度評価の平均評点
総合評価の平均評点 4.50 点(五段階評価;5点満点)
外部研究評価委員会からの主要意見
[現状についての評価・質問等]
○ 災害対応、放射能汚染問題対応の緊急研究の社会貢献性は極めて高く、これまでの現場重視の研究の進め方が効果的に活かされている。
○ サプライチェーンは重要であるが、本研究領域全体として、長期的あるいは究極的な理念を確立すべき段階に来ている。
○ アジア地域を中心とした電子機器の廃棄物(E-Waste)問題についてのフィールド研究はよく実施されているが、次の研究へ展開する段階にさしかかっている。
[今後への期待など]
○ 当初計画された研究のうち、震災対応で遅れたものの推進を期待するが、災害廃棄物・放射能汚染廃棄物対応を含めて、全体の研究計画を見直すべきかもしれない。
○ アジアへの技術移転については、共同研究を通じて、各国の政策的な制度への導入を図るなど、国環研ならではのルートを構築するとよい。
主要意見に対する国環研の考え方
① 廃棄物処理における放射性物質の挙動に対する評価においては、これまでの有害物質管理や適正処理技術に関する現場的な研究アプローチが役立っています。放射性物質汚染廃棄物の問題は、これからが正念場であり、放射線管理の分野との連携を図りながら貢献していく所存です。
② 長期的・究極的な資源循環の理念のニーズについては同意いたしますが、その一方で、震災や経済変動など時々刻々変わる状況への対応だけでも困難な現状がございます。国際的にも国内的にも、資源・材料・製品のフローの構造把握と適切な事例解析に基づいた研究の蓄積を優先させながら、同時に理念提示につながるよう努力してまいります。
③ E-Waste問題については、フィールド研究と国内模擬実験によって、有害物質の排出状況の把握を更に進めていく必要があると認識しており、研究を継続しています。また、それと並行し、これらの成果を活かす方法として、国際的なESM(環境上適正な管理)の基準提示を目指しながら、現場での情報共有や製品設計のあり方などへの展開も検討しており、両者のバランスをとることを図りつつ研究を進めていきます。
④ 災害廃棄物・放射性物質汚染廃棄物の対応は優先課題であり、新たな体制作りや外部連携も進めているところですが、それにも限界があり、中期目標は堅持しつつ、その達成に向けた当初の研究スケジュールを見直さざるを得ないと考えています。社会還元のために優先順位と戦略性を持って進めてまいります。
⑤ アジア展開については、タイを拠点としたアジア各国若手研究者の受け入れ・廃棄物管理技術システムに関する共同研究、ならびにベトナムを拠点とした廃棄物管理システム改善・分別排出システムの導入に関する自治体・研究機関との共同研究を通じて、人材育成と能力開発を進めています。また、分散型液状廃棄物処理に関する中国での研究ネットワーク構築や、廃棄物・副産物の環境安全品質管理の標準化に関する日中韓の国立研究所との連携も進めています。このように国環研が蓄積してきた独自ルートの活用に加え、JICA等援助機関とも連携を図りながら、アジア地域での技術システムづくりに研究成果を反映させていきます。
