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Ⅴ 平成22年度新規特別研究:事前説明
3.生物多様性の保全をめざす広域的土地利用の最適化ツールの開発

1)研究の概要

日本国内で8割近くの陸地面積を占め、中程度の人為影響を受ける里地里山・田園地域(農地・草地・二次林・植林地などを含む)を対象に、現在から2050年までに、生物多様性の保全を目的として土地利用を再デザインする場合の最適な資源配分を算出するためのツールを構築する。本ツールは、公的な投資総額などのコスト、保全のための最適化の目標(複数の生物多様性指標)、および人口減少などの社会状況に応じた土地利用の変化のトレンドなど複数の制約条件の入力に対応可能なものとする。

最適化ツールのコアとなる、土地利用変化に対する生物多様性の応答予測は、現状の土地利用パターンと生物分布データをもとに多数の生物種の分布推定モデルを構築し、そのモデルを用いて行う。

[外部研究評価委員会事前配付資料抜粋]

研究目的  /  研究予算  /  研究内容

2)研究期間

平成22〜25年度(4年間)

3)外部研究評価委員会の見解と対処方針

(1)研究内容

[内容評価]

重要であり、推進すべき課題である。特に、サブテーマ2は、今後、さまざまなモデルとの統合等が見込める重要な一歩だと考える。また生物多様性指標の作出も大きな広がりのある大変興味深いテーマである。

一方、地域毎の保全が大切だとよく言われている中で、どのように住民の同意形成を扱い、どうやって日本全体での広域的土地利用の政策へと結びつけるのか、明確でない。理想的な状況が何なのかもよく見えない。

[提案、要望]

成果の活用に関するニーズを十分に考慮して、使う側に都合が良いデータベースができることが期待される。最適化ツールの具体的なイメージを定着させることが大切である。生物多様性を指標にすることは重要であるが、土地利用と関連付けるとき、生物の一つ一つの種の構成および生物の存在量も重要であろう。どう組み込むのか興味深い。

[対処方針]

実際の保全の現場では、合意形成にもとづいて対策を実施することが重要であることは認識するところである。本課題で構築するツールは明示的に合意形成のプロセスを組み込むものではないが、広域的な視点から土地利用を介した対策とそれに対する生物多様性の応答との関係を定量化することで合意形成の際の指針を提供することができる。

本課題では、個々の生物ごとに土地利用に対する反応をモデル化するため、一つ一つの種の構成の変化にもとづいた生物多様性指標の算出が可能になる。また、既存データが十分にある生物種については、個体数など存在量にかかわる変数も対象としたい。

(2)研究の進め方・組み立て

[内容評価]

短い研究期間の中で、生物分布データの収集・整備等と土地利用変化を10km区画毎でどうやって結びつけるのか、また生物変化の予測の正しさをどうやって検証するのかが示されると良い。

[提案、要望]

経済性の評価のため、多様性の価値を経済的に見つもることも必要になるであろう。また、空間スケールだけでなく、時間スケールも考慮に入れた研究計画が必要であると思う。CGERの活動と連携した方が適切ではないか。

[対処方針]

データのもつ不確実性を明示的に組み込んだ統計モデルを用いることで、評価・予測結果も誤差を明示したアウトプットとする。また、時系列の分布データが得られる生物については、過去データから現状を予測し、実際と比較することでモデルの検証を行いたい。

生物多様性の経済価値評価は、本課題で扱う範疇を越えているものの、重要な課題であることから環境経済学分野の専門家との連携をはかりつつ、より発展的な課題として位置付けたい。

本課題では、2050年までという一ステップしか時間スケールを考えていない。これは、生物分布の時間変化に関するデータが利用できない場合が多いためである。ただし、対象となるのはごく一部の種に限られるものの、データが利用可能な生物種については複数の時間スケールでの予測を行いたい。

CGERの活動のアウトプットを必要に応じて解析に組み込む形で適切に連携をはかりたい。

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