Ⅲ 知的研究基盤の整備:終了時の評価
2.スペシメンバンキング、レファランスラボ、細胞・遺伝子保存
1)研究の概要
環境研究者の研究開発活動を安定的かつ効果的に支える知的基盤として、(1)環境標準試料の作製と分譲、 (2)分析の精度管理、(3)環境試料の収集と長期保存、(4)絶滅危惧生物の細胞・遺伝子を保存し、保存する試料をより広範に活用するための先端的技術開発を行い、(5)環境微生物の収集・保存と分譲、及び(6)生物資源情報の整備を行うことで、環境分野における物質及び生物関連のレファレンスラボラトリー(RL:環境質の測定において標準となる試料や生物および手法を具備している機関)としての機能の整備と強化を図る。
[外部研究評価委員会事前配付資料]
2)外部研究評価委員会による年度評価の平均評点
4.5点(五段階評価;5点満点)
3)外部研究評価委員会の見解
[現状評価]
多数の生物・非生物資料の保存や、環境標準試料および分析用標準物質の作製を担っており、目標をはるかに超す成果が上がっている。鳥類については独創的な技術を背景に、世界的にも重要な役割を果たしていることも高く評価できる。また、事業の在り方についても検討が行われている。
[今後への期待、要望]
収集した材料をどうやって使っていくか、どういう形であることがsustainableなのかのイメージ作りが必要であり、積極的・戦略的位置づけを明確にすることや他の類似の試みとの峻別が今後の大きな課題であろう。
いずれの活動も過去・現在・未来の環境問題のベースライン研究のために重要な課題であるが、限られた人的資源と施設の中で、業務の目的と優先順位を明確にする、たとえばバンキングスペシメンについても収集する試料の種類と数量に関しての理論的基礎を持った数値目標と活動方針を確立することが必要な時期にきている。
実験水生生物の供給などは重要な使命であり、供給する生物の薬物への耐性などがより規格化されることが期待される。
4)対処方針
今後の事業の方向性に関しては、現時点で試行錯誤を行っている。何とか努力してより高い価値を付与できるようにしたい。
収集試料のより積極的かつ戦略的な位置付けの必要性は強く感じている。標準試料に関しては、他の機関が同様の標準試料の作製を行っている中、より環境研究に特化した資料作成の方向を明確に示すことで、特徴を出していきたい。
スペシメンバンキングに関しては今後の課題として検討したい。ただし、最初に大量に保存して、測定回数が増える毎に数と量が減少していくという試料の性格の問題もあり、収集する試料数や量が初期に多くなる傾向があるのでバランスをとりながら検討したい。
水生生物に関しては、現時点でようやく報告できる段階に至ったところであり、更に規格化を進めたい。