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Ⅱ 基盤的な調査・研究活動:終了時の評価
4.環境健康研究

1)研究の概要

環境化学物質や大気汚染物質等の環境ストレスを対象とし、それらが及ぼす健康影響を的確かつ速やかに評価することをめざし、影響評価の実践と、適切かつ新たな影響評価手法、疫学手法・曝露評価手法、高感受性要因も対象としうる適切な動物モデルや培養系等の開発を進める。また、影響評価の実践、応用、検証とともに、健康影響発現のメカニズムの解明を推進し、得られた知見を影響評価手法の開発・改良にフィードバックする。これらの研究を通じ、環境ストレスの影響とその発現機構を明らかにするとともに、簡易・迅速で、かつ、感度と特異度に優れた曝露・影響評価系の開発を進め、健康影響の未然防止をめざした施策に資する科学的知見の蓄積をめざす。

2)外部研究評価委員会による年度評価の平均評点

平均評点  4.4点 (五段階評価;5点満点)

3)外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

大変質の高い研究成果があがっていると評価出来る。具体的には、科学的検証においてはエピジェネティクスやアレルギー増悪影響等での新規な発見、疫学研究においては成果の一部が政策的にも使われており、政策貢献や市民啓発の点でも高く評価できる。

ただし、いずれも個別課題型研究であって、社会的な要請や環境行政対応を考慮した環境健康領域全体としての研究方針や位置づけが具体的に示されていないのが残念である。また、各研究室が共同体制のとりやすい担当範囲を持っていることのメリットがあまり見えていない印象がある。

[今後への期待、要望]

学術研究として多くの成果が得られていると判断されるが、他分野との連携、環境政策へ寄与できる情報の提供など、他の研究機関との差別化をさらに進めて研究を発展させてほしい。

また、健康影響研究はひとつの論文のみで結論が導かれるものではなく、多くの研究の総合的な評価に基づき環境要因が健康影響を引き起こす特性が明らかになるものである。その意味で、環境研究所における健康影響研究の特徴をどのように出していくか、何(物質、影響、手法等)に焦点を当てて研究を深め、プレゼンスを高めていくか、戦略が必要であるように思う。

4)対処方針

今後も、本研究所における健康影響研究の強み、特徴ともいえる分野に焦点を置き、研究を深め、プレゼンスを高めていくことを心がけたい。特に、実験的研究においては、免疫・アレルギー増悪影響の評価と機構解明、細胞や疑似組織を用いた新規評価手法の開発、エピジェネティクスに着目した影響機構の解明と評価手法開発等に、疫学研究においては、大気汚染物質や環境化学物質の健康影響評価、特に、小児に対する影響の評価に重点を置きたい。これらにより、学術的貢献のみならず、政策貢献や市民啓発にも一層寄与したいと考えている。基盤領域における研究資金としての交付金配分額は重点プログラムに比較し非常に少なく、研究者各個人が獲得する競争的資金を主たる資金とせざるをえない状況であるために、個別課題型研究となっている側面は必ずしも否めない。しかし、領域全体で共通するミッションを掲げ、確固たる理念と方向性を持って、多くの研究課題を進展させており、疫学的研究や評価手法の開発に関わる研究については、社会的要請や環境行政対応を考慮した研究も進めている。今年度より、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」が開始された。これに関連し、次期中期計画では、各研究室が共同し、他分野との連携をはかり、環境汚染化学物質をはじめとする環境要因が小児・次世代に及ぼす影響を、疫学、実験的研究の双方向から総合的に検討、評価、解明することを計画している。これらの試みにより、環境政策へ寄与できる情報の提供など、他の研究機関との差別化をさらに進めて研究を発展させてゆく所存である。

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