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Ⅴ 平成21年度新規特別研究の事前説明
2.資源作物由来液状廃棄物のコベネフィット型処理システムの開発

研究目的

東南アジアを中心とする地域には、資源作物の生産が集中しており、サトウキビ由来の砂糖生産は世界生産量の約48%、パームオイルの生産量は約85-90%を占める。これらの産業からは、高有機物濃度の液状廃棄物(廃液)が多量に排出されるが、その殆どが開放型の池(安定化池)で放置され、メタン等の温室効果ガスの発生(有機物の半分がメタンに転換されるとして試算:糖蜜由来, 約6,000万t CO2/年、パームオイル由来, 約4,500 万t CO2/年)と水環境汚染の要因となっており、バイオエタノール(糖蜜原料)やバイオディーゼル(パームオイル原料)の需要拡大から排出される廃液量も増大してきている。

本研究開発では、これらの資源作物由来廃液の適切処理技術(メタン発酵と水質確保のための後段処理)の開発により、温室効果ガス発生抑制、エネルギー回収、水環境保全等を実現化するコベネフィット型処理技術の確立を目指す。

研究予算

(単位:千円)
  H21 H22 H23
適切メタン発酵技術開発 11,800 11,500 11,500
省エネ後段処理法の開発 6,700 6,000 6,000
廃液の排出・処理状況調査 1,500 2,500 2,500
合計 20,000 20,000 20,000
総額 60,000 千円

研究内容

資源作物由来の廃液は高有機物濃度であり、微生物への阻害成分(硫化物[硫酸塩]、カチオン類)や難分解性成分(分色素成分など)を含む。そのため、廃液の基礎的な微生物分解特性の評価と、最適な処理プロセスの開発が必要となる。また、開発技術の評価を行う上で、開発途上国における廃液処理状況の把握(水質、温室効果ガスの発生状況等)が必要である。

本課題では、典型的な資源作物由来の高濃度廃液である糖蜜系廃液(糖蜜、バイオエタノール廃液等)の適切処理技術の確立を目指し、以下の項目について研究を進める。

サブテーマ1:

高濃度廃液(糖蜜)の適切メタン発酵処理システムの開発

資源作物由来の高濃度廃液として、糖蜜系廃液を処理対象としたメタン発酵技術の開発を行う。メタン発酵処理の際に微生物反応への阻害を引き起こす硫化物等の除去や、高負荷処理(菌体流出防止、アルカリ度の供給等)に対応するための装置開発を行い、糖蜜に含まれる有機物の分解・除去とエネルギー回収法の確立を目指す。また、保持汚泥の微生物学的な特性の評価を行い、装置構造や運転方法の最適化のための基礎データとする。

サブテーマ2:

省エネ型後段処理システムの開発

処理水質の確保を目指し、メタン発酵処理水の省エネ型後段処理システムの開発を行う。具体的には、低濃度対応嫌気処理と無曝気型好気処理との組み合わせによる省エネルギー型の後段処理システムをベースとし、水質の改善(残存有機物、栄養塩、色素などの除去)に関する検討を行う。また、廃水処理液の液肥としての利用効果に関する検討を行う。

サブテーマ3:

廃液の排出・処理状況調査と開発システムの有効性評価

アジア地域に生産が集中している砂糖(バイオエタノールを含む)、パームオイル等の製造に関わる廃液の排出状況(処理状況)や温室効果ガスの発生状況について調査を行い、適切処理導入による温室効果ガスの削減や創エネルギー効果の試算を行う。

また、バイオエタノール蒸留廃液等を液肥として利用した場合の環境影響評価(温室効果ガスの発生等)を行う。