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Ⅳ 平成20年度終了特別研究の事後評価
7.化学物質の動態解明のための同位体計測技術に関する研究

1)研究の概要

金属元素の同位体存在度および有機化合物の放射性炭素同位体比の精密計測技術の開発、改良を行い、高精度な同位体分析法や化合物選択的な放射性炭素同位体分析システムを確立した。さらに、本研究で完成された同位体分析技術を応用して、室内の埃(室内塵)や空気など実際の環境試料中に含まれる鉛やアルデヒド類の分析を行い、測定された同位体存在度からこれら有害物質の発生源推定など動態解析を行った。

[外部研究評価委員会事前配付資料抜粋]

2)研究期間

平成18〜20年度(3年間)

3)外部研究評価委員会による年度評価  (評価実施要領へ)

平均評点 3.6   (五段階評価;5点満点)

4)外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

汚染源の解明手法の一つとして、技術面での開発の目的は十分に果たされた。また、同位体比によって、化学物質等の環境動態や発生源についての情報を明らかにすることを確認したことは意義がある。この手法によりアセトアルデヒドとホルムアルデヒドの起源について、化石燃料由来だけではないということを示し、発生源の特定とリスクへの考え方に新しい視点を与えた。しかしながら、現実的にどんな環境リスクの解析・解決のために使えるのか、それに見合う分析法(検出レベルや検出法等)となっているのか、生体濃縮などがあるかどうかなど今後に残された課題もある。

[今後への期待、要望]

本手法は様々な応用が考えられるので、他の技術や分析手法も併用し、ほかの有害元素にも拡大しつつ、生態学的な視点を取り入れて研究の応用と展開を図って欲しい。よりニーズの高い応用分野をターゲットとして技術開発した方がよかったかもしれない。

物質によっては長期的影響が問題となる環境リスク分野において、有効な手法となる可能性は十分にある。

5)対処方針

有害物質の環境中における動態解明や発生源推定の方法の一つとして、同位体分析は有効な手段である。この特別研究では、有機物の放射性炭素から、無機元素の安定同位体まで、いろいろな環境試料に応用できる、試料前処理法を含めた高精度な同位体計測システムの確立を目指した。残念ながら、環境中にある無機、有機有害化学物質は多数で、その全てをカバーできる普遍的な同位体分析手法を作り上げることは困難であるが、本研究で確立した鉛やアルデヒドの同位体分析技術は、今後、水銀などの有害金属の同位体分析や多環芳香族炭化水素などの有害有機物の放射性炭素測定に応用できるので、他の微量分析法や状態分析法などと組み合わせることにより、こうした有害物質の起源推定と環境中におけるその濃度低減対策に役立てて行く予定である。また、多種多様な環境試料について、この同位体分析手法を応用して行く中で、同位体の生物濃縮などについて解明を進めるとともに、さらに高度な同位体計測技術が蓄積されることにより、将来問題となってくる有害物質の環境問題解決、リスク低減へも貢献できるものと考えている。

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