ホーム > 研究紹介 > 研究計画・研究評価 > 外部研究評価 > 平成21年外部研究評価実施報告  > 省エネルギー型水・炭素循環処理システムの開発

ここからページ本文です

Ⅳ 平成20年度終了特別研究の事後評価
4.省エネルギー型水・炭素循環処理システムの開発

1)研究の概要

日常生活と産業活動の結果、多量に排出される低有機物濃度排水(食品製造排水、都市下水)の省・創エネルギー処理を目指した嫌気排水処理技術の開発を行った。具体的には、生物膜メタン発酵法における菌体滞留時間の維持や排水循環条件の最適化を図り、有機物濃度0.3-0.8 gCOD/l(既存技術下限値の1/3-1/5)、水温10-20℃(既存技術30-35℃)の産業排水処理に対応可能なグラニュール汚泥床法を開発した。また、開発途上国にも展開可能な嫌気性処理と無曝気型の好気性処理を組み合わせた排水システムによる実下水処理実証試験を通年で行い、その排水処理性能(嫌気処理性能と水温との関連)と省エネルギー効果(既存処理法に対し7割削減)を明らかにした。

[外部研究評価委員会事前配付資料抜粋]

2)研究期間

平成18〜20年度(3年間)

3)外部研究評価委員会による年度評価  (評価実施要領へ)

平均評点 5.0   (五段階評価;5点満点)

4)外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

基礎的研究から外部資金を使った共同実用化研究、特許の取得を含めて、低温・低濃度での嫌気処理をテーマとして極めて理想的な形で排水処理システム技術が確立された成果であり、高く評価できる。いろいろな工夫をすることで、好気処理と同程度の処理能力を発揮できるシステムが開発できたことは高く評価できる。低温クラスター水素資化菌の発見など、学問的に興味深い知見も得られている。発生したメタンの処理も考慮されている点も優れている。

[今後への期待、要望]

今後、メタンとしての回収と利用まで改良が加えられれば、より現実的な炭素循環システムの開発に発展するであろう。維持管理、建設費のコストダウンなど、総合的なコスト評価が欲しい。ただ、このような技術開発は、国環研としてどのように位置づけるのか、今後もこのような技術開発を続けるのか、検討を要するのでは?

アジアへの適用では、溶存メタンの処理に好気処理をするよりも、むしろ人工湿地などで仕上げ処理をしたほうが効率および経済性がよいといえる。技術移転については、特に初期投資および運転費用などの経済条件が一層重要ですので、この観点から更なる研究連携が展開できると期待します。

5)対処方針

本研究課題では、日常生活や産業活動の結果多量に排出される低温(10-25℃)・低有機物濃度排水に対応可能な嫌気処理(メタン発酵)技術の開発に取り組み、好気処理と同程度の水質を確保しつつ、処理に関わるエネルギーを7割以上削減出来る水処理技術の基礎を確立することが出来た。今後は、嫌気処理の結果生じるメタンガスの効率的な回収と利用方法の検討を継続的に行い、炭素資源循環型の処理技術の確立を目指したいと考えている。開発した排水処理技術では、維持管理に関わる費用(エネルギー)は、好気処理に対して大幅に削減出来るものの、建設費は1-2割程度高くなるという試算である。今後は、開発途上国の研究機関とも連携し、より低コストで実現的な仕上げ処理法の検討も含め、技術の最適化に関する研究を推進していく予定である。

Adobe Readerのダウンロードページへ PDFの閲覧にはAdobe Readerが必要です。Adobe社のサイトからダウンロードしてください。