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VI 中核研究プロジェクト
研究課題名 流域生態系における環境影響評価手法の開発

実施体制

代表者:
アジア自然共生研究グループ 野原精一(室長)
分担者:
【アジア自然共生研究グループ】
福島路生(主任研究員)、亀山哲(主任研究員)、井上智美(研究員)、島崎彦人(NIESポスドクフェロー)
【社会環境システム研究領域】
一ノ瀬俊明(主任研究員)
【水土壌圏環境研究領域】
今井章雄(室長)
【生物圏環境研究領域】
広木幹也(主任研究員)、矢部徹(研究員)
【地球環境研究センター】
小熊宏之(主任研究員)

※所属・役職は年度終了時点のもの。また、*)印は過去に所属していた研究者を示す。

研究の目的と実施概要

目的

持続可能な自然と共生する社会を実現するため、東南アジア・日本を中心とした流域生態系における環境影響評価手法の開発を行い、国際プログラム間のネットワークを構築し、国際共同研究による流域の発展に必要な科学的知見を提供する。主に国際河川・メコン河の淡水魚類相の実態解明、流域の環境動態の解明を行うこと等により、ダム建設等の生態系影響評価を実施する。

必要性

メコン河はインドシナ半島を流れるアジア最大の国際河川であるため近代以降、水、エネルギーおよび生物の天然資源として国際的に開発への強い興味が持たれ続けてきた。日本は天然資源・農水産物・繊維製品等の多くをその流域を含む東アジア地域に依存して来ている。その流域において都市化・工業化・農薬及び肥料を多用する農業の近代化やダム建設によって自然が急速に失われつつあり、農業・産業・生活による水資源の枯渇と水質悪化や水生生物等の生物多様性の減少が危惧されている。そのため、日本を含む東アジア地域の自然と共生した持続的発展のため科学的知見を政策に反映させてゆくことが必要とされている。

緊急性

本流上流部に位置する中国側、中流域のラオス側およびタイ側の支流のほとんどにおいてダムが建設中または建設計画がある。メコン流域諸国においては、水資源の農業・産業・生活利用の増大に伴う水不足あるいは水質悪化は避けられず、汚染などによる利用可能な水資源の減少や水生生物多様性の減少がおこると予想されている。

環境研究における位置づけ

国際河川であるメコン河生態系の長期的変動のトレンドを把握する多国間の国際共同長期モニタリング体制の構築、観測・観察・解析手法の標準化、精度管理システムの構築、関連諸国の水質・生物多様性分野の容量の把握とその向上、データ・情報の共有システムがGEMS/Waterプログラムとの連携の下で確立される。それにより途上国の国際河川管理のための国際共同研究のモデルケースとなり生物・水資源及び国際河川生態系に関わる地球観測へのアジアからの貢献となる。

研究予算

(実績額、単位:百万円)
  平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 累計
運営交付金 36 36 32      
受託費 23 7 18      
科学研究費 4 2 1      
寄付金            
助成金            
総 額 63 45 51      

今後の研究展望

(1) メコン河の重点流域(タイ北部、タイ東北部、メコンデルタ)を対象とした河川・干潟湿地の多時期衛星観測データを整備し,過去の地形変化に関する解析を行い,当該流域における環境の変化と流域土地利用との因果関係のモデリングを行う。 特にダムの流量変化に伴う河岸浸食、堆積に関する定量的なデータを収集する。

(2) メコン河流域中流域の魚類画像データベース及び耳石データベースを作成し、GIS環境に対応する空間情報(土地利用,流域基盤,生物捕獲等)を整備する。前年度に続き淡水魚類に関する既存データ、またダム建設に伴って実施され環境アセスメントの報告書などを収集し、そのデータ整備を行う。

(3) メコンデルタの広範囲に生育しているマングローブ主要樹種の生理機能が底質中の物質代謝機構へ及ぼすなどの生態系への影響を、ベトナム及び石垣島での野外調査および圃場での実験から明らかにする。更に、流域開発に伴う堆積物の量・質の変化がこの生態系機能へ及ぼす影響についても検討する。

(4) 生物の好適生息地評価や河口域生態系への影響評価をするため、タイ北部及びメコンデルタにおいて景観生態学的評価技術を開発する。

(5) メコン河委員会、環境NGO、各大学研究者、森林管理局等の間で情報共有ネットワークをつくり、それらの協力のもとに、メコン河流域の環境影響評価に不可欠な生物・水環境の空間変化及び時系列変化のデータの取得を行う。