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VI-4 アジア自然共生研究プログラム中核研究プロジェクトの中間評価
3.流域生態系における環境影響評価手法の開発(平成18年度〜22年度)

1)研究の概要

特定流域の高解像度土地被覆分類図・湿地機能評価図を作成し、流域生態系の自然劣化実態を把握する。代表的生物の多様性・生態情報及び気象・水質等の環境データを取得し、流域生態系環境データベースを構築する。環境影響評価に不可欠な水環境のデータ取得とモデル化並びに好適生息地評価のための景観生態学的手法や河口域生態系への影響評価手法を開発し、流域生態系管理手法を検討する。

2)外部研究評価委員会による中間評価の平均評点

3.9  点

3)外部研究評価委員会の見解

[現状評価]
本プロジェクトは、“流域生態系及び高解像度土地被覆データベースの構築”、“人間活動による生物多様性・生態系影響評価モデルの開発”、“持続可能な流域生態系管理を実現する手法開発”の3つのサブテーマで構成される。国際河川メコン河流域の資源に依存する日本にとって、客観的データを蓄積し科学的知見を提供することができる本研究の意義は大きい。ダム湖などといった人間活動の個別要素(魚類やマングローブ林など)への影響評価において顕著な成果を上げつつあり、影響評価手法としての有効性を実証する研究も進められている。

[今後への期待、要望]
今後、どのようなモデルに基づいて生物多様性への影響評価を行うのか、また持続可能な流域生態系管理の具体的な方法論をどのように確立していくのかに関しての一層の検討を期待したい。今後のプロジェクトの推進には、雨期・湛水期の観測、流速測定などができる水理学関係の研究者の参画が必要ではないかと思う。また、海岸侵食に関しては、近年だけの変化でなく航空写真利用などによる中長期的視点から議論すると良いだろう。一方、着手したばかりと思えるマングローブ林の研究の今後の進展に期待したい。現地との共同研究に関しては、体制は整っているように見受けられるので、さらに踏み込んで現地研究者がルーチン的にフィールドデータをとれるようになることを要望する。

4)対処方針

生物多様性へ影響評価、流域生態系の管理手法としては、メコン川中流域に対しては、河川が形成する景観が持つ生息空間としての多様性・ポテンシャルを評価する視点から進めている。水と土砂の動態を記述する水文地形モデルを開発し、例えば、ダム等による流量操作による洪水氾濫域の冠水頻度や湛水面積の変化が生息場の多様性に及ぼす影響を評価する方法の確立を目指す。また、河川の生物回廊としての役割については、淡水魚類の耳石解析に基づいて種ごとの回遊経路を明らかにすることにより、河川改修等の潜在的な影響を評価する。特に生物種ごとに必要とされる河川景観を明らかにし、水文地形モデルにより河川構造物築造等に伴う縦断方向の河川景観変化を再現し、想定される生活史の変化などとの関係を検討することで、生物的な観点から生息場の評価を加味する予定である。

一方、河口部においては、マングローブ林を対象として、多様な生物種の存続に必要とされる条件を現場データから推定し、管理に活かす方法を展開する。

雨期・湛水期の観測、流速測定など水理学関係の調査研究は大変重要と考えて進める。しかし更に協力が得られる水理学関係の所員の増員が予定できないため現メンバーの土砂流出専門の研究者が水理モデルを扱える外部委託を利用して対応したい。更に指摘頂いた航空写真利用などによる中長期的視点から議論する事は重要と考え、データの入手や新たな撮影の可能性について関係機関に図って行きたい。

マングローブ林の研究の今後の進展の期待に応えられるよう、ベトナムにおける第一人者や行政機関担当者と連絡を取り、土砂堆積や生態系機能の評価を進める。また、共同研究者の体制、時系列的なモニタリング体制が整ったのでこれから現地調査が進み確実なデータが蓄積されると考えている。

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