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VI-3 環境リスク研究プログラム中核研究プロジェクトの中間評価
4.生物多様性と生態系機能の視点に基づく環境影響評価手法の開発(平成18年度〜22年度)

1)研究の概要

人為的開発に最も晒されている生態系の事例として東京湾、および社会変化から管理されなくなってきた里地・里山の事例として兵庫県ため池地域の双方をモデルフィールドとして、(有用)個体群の再生産の阻害、生物多様性や生態系機能の低下をエンドポイントとして、リスク因子の解明と具体的な生態影響評価の事例を提示するための野外調査を実施した。侵入種の生態リスク評価に関しては、在来種と外来種の交雑実態をヒラタクワガタやオオマルハナバチで明確に評価した。2006年度末にカエルツボカビの侵入が確認されたことを受けて、緊急に検査耐性を整え、国内における本菌の侵入・分布実態を調べた。生物群集を対象とした環境影響評価のために、生物群集の環境応答を機能形質の変化として予測するモデルを完成させた。生態系機能(物質循環)を促進する上で重要な機能形質を推測するために、3栄養段階の生態系モデルを作成し、数値的解析を行った。東京湾のシャコの個体数変動を予測するために個体群マトリックスモデルを作成し、生活史感度解析をおこなった。

2)外部研究評価委員会による中間評価の平均評点

4.0  点

3)外部研究評価委員会の見解

[現状評価]
本プロジェクトは、“東京湾における底棲魚介類の個体群動態の解明と生態影響評価”、“淡水生態系における環境リスク要因と生態系影響評価”、“侵入種の生態リスク評価”、“数理的手法を用いた生態リスク評価手法の開発”の4つのサブテーマで構成される。本研究では、内容が多岐にわたるものの、環境を丁寧に観察することで、それぞれ質の高い、貴重かつ有用なデータを取得できており、評価できる。種々のリスク要因調査も着実に行われており、管理手法への応用が期待できる。フィールド研究は、個別事例に関する研究に終始しがちである中で、本研究では数理モデルの組み込みにより、環境行政への貢献が期待できるまとまった一つのプロジェクト構成になっているが、現段階では、4つのサブテーマ間の関係、プロジェクト全体としての方向性、環境政策への活用方法が若干見えにくい部分もうかがえた。

[今後への期待、要望]
提案している数理モデルの正しさの実証が重要であり、今後の発展に期待したい。
数理モデルをサブテーマとして独立させるよりは、サブテーマ1〜3に組み込んでプロジェクトを進めるなどの方法もあるのではないだろうか。また、サブテーマ1〜3の相互関係から得られる環境評価手法に関して一層の検討を行い、まとめて頂きたい。

4)対処方針

生態影響評価に関して、本プロジェクトでは幾つかの新しい数理モデルを提案したが、指摘のとおり数理モデルの正しさの実証は重要だと認識している。そのため、現在、3栄養レベルからなる実験生態系(藻類―動物プランクトンー魚)の構築に取り組んでおり、第一段階として、実験生態系レベルで数理モデルの検証を進めたいと考えている。さらに、具体的なフィールドや実験系での検証が可能かどうかについても検討を試みる。プロジェクトのサブテーマ構成に関する指摘については、サブテーマ4(数理的手法を用いた生態リスク評価手法の開発)がサブテーマ1〜3と密に連携する形で取り組むことで対処したい。個別のフィールドや問題となる侵入種での生態リスク評価を扱っているサブテーマ1〜3においても、評価手法を意識して研究を進めることで、それぞれにおいて生態影響評価の事例の提示を試みる。

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