ホーム > 研究紹介 > 研究計画・研究評価 > 外部研究評価 > 平成20年外部研究評価実施報告 > 環境リスク研究プログラム中核研究プロジェクトの中間評価

ここからページ本文です

VI-3 環境リスク研究プログラム中核研究プロジェクトの中間評価
3.環境中におけるナノ粒子等の体内動態と健康影響評価(平成18年度〜22年度)

1)研究の概要

課題1の環境ナノ粒子の生体影響に関する研究 では、モード走行時におけるディーゼルエンジンから排出するナノ粒子の挙動と成分分析に関して明らかにし、ナノ粒子を暴露した実験動物における好中球の浸潤を伴う肺の炎症を起こすこと、酸化的ストレス、心血管系への影響に関して明らかにしつつある。 課題2:ナノマテリアルの健康リスク評価に関する研究では、カーボンナノチューブの細胞毒性は極めて高く、その細胞障害性と細胞膜との反応性に関して研究を進めた。また、ナノファイバーの吸入暴露装置の開発を行った。 課題3:アスベストの呼吸器内動態と毒性に関する研究では、400度から100度単位で1000度近くまで熱処理したクリソタイルとクロシドライトに加えて、アモサイトに関しても研究を進めた。マクロファージ、肺胞上皮細胞、中皮細胞に対する細胞毒性試験を実施し、加熱により水和しなくなったアスベストは繊維構造が残っていても細胞毒性が低下すること、また、腹腔内に投与した場合の影響についても調べた。

2)外部研究評価委員会による中間評価の平均評点

4.0  点

3)外部研究評価委員会の見解

[現状評価]
本プロジェクトは、“環境ナノ粒子の生体影響に関する研究”、“ナノマテリアルの健康リスク評価に関する研究”、“アスベストの呼吸器内動態と毒性に関する研究”の3つのサブテーマで構成される。世界的に、化学物質としての毒性評価ではなく、物性としての毒性評価に重きを置く状況に移行しつつある中で、超微細構造等の実態観察に成功した点や、高い組織透過性を見出した点など、明確な研究対象と適切な研究手法を用いることで着実な成果を挙げており、高く評価できる。本研究で、ナノ粒子の体内挙動を明らかにすることは意義があり、サブテーマ間の相互関連性も高い。

[今後への期待、要望]
今後、ディーゼル排ガス中のナノ粒子への長期暴露実験など、長期影響のデータが出てくることを期待している。また、健康影響の発現が、物理的な刺激によるものか、あるいはナノ粒子の化学組成の影響を受けた化学的な反応によるものかといったアプローチはないかを検討して頂きたい。

4)対処方針

粒子状物質の生体影響は、固体物質との生体反応を起点としており、界面での反応を考慮に入れる必要がある。生体内に取り込まれた粒子状物質は、主として網内系で処理されるため、マクロファージなどの貪食細胞が粒子のクリアランスや影響に関して重要な役割を担っているが、ナノ粒子は、マクロファージに認識されにくいと考えられている。ナノ粒子の生体影響に関するこれまでの研究結果は、概ね粒径が小さい粒子ほど生体に与える酸化的ストレスが大きく、単位重量当たりの毒性が高くなる傾向があることはかなり確からしいと考えられる。粒子状物質の生体影響を評価する上において、個数、表面積、重量のうちどのような用量計測量(dose metric)が最も適切であるかに関しても検討する予定である。また、これまでの研究結果から、ナノ粒子が心臓などの機能をはじめとして呼吸器以外の臓器へ影響を示唆している。粒子として直接移行したためなのか、あるいは化学的な影響によるものかといった影響の発現機序を引き続き検討する。カーボンナノチューブの毒性・発ガン性に関する論文が発表され、カーボンナノチューブの吸入毒性は喫緊の課題であると考えられるが、今年度より本格的に研究を推進する予定である。また、以上のことを、現在計画中のディーゼル排ガス中のナノ粒子への長期暴露実験においても対応してゆく予定である。

Adobe Readerのダウンロードページへ PDFの閲覧にはAdobe Readerが必要です。Adobe社のサイトからダウンロードしてください。