ホーム > 研究紹介 > 研究計画・研究評価 > 外部研究評価 > 平成20年外部研究評価実施報告 > 環境リスク研究プログラム中核研究プロジェクトの中間評価

ここからページ本文です

VI-3 環境リスク研究プログラム中核研究プロジェクトの中間評価
2.感受性要因に注目した化学物質の健康影響評価(平成18年度〜22年度)

1)研究の概要

化学物質による高次生命機能の撹乱に起因する生殖、発生、免疫、神経、学習・行動等生体の恒常性維持機構への影響の解明を通して、環境中に存在する化学物質に対する感受性を修飾する生体側の要因を明らかにし、さらに、感受性要因を考慮した化学物質の健康影響評価手法を提案する。具体的には、(1) 低用量の環境化学物質曝露により引き起こされる神経系、免疫系等の生体高次機能への新たな有害性を同定し評価するモデルを開発する。(2) 胎児、小児、高齢者等感受性の時間的変動の程度を把握し、発達段階に応じた影響を包含したリスク評価に必要となる科学的知見を提供する。(3) 高感受性を呈する集団への化学物質を含めた様々な要因の複合した影響を評価するスクリーニングシステムを開発する。

2)外部研究評価委員会による中間評価の平均評点

3.4  点

3)外部研究評価委員会の見解

[現状評価]
本プロジェクトは、“遺伝的感受性要因に注目した化学物質の健康影響評価”、“時間的感受性要因に注目した化学物質の健康影響評価”、“複合的感受性要因に着目した化学物質の健康影響評価”の3つのサブテーマで構成される重要なテーマである。多岐にわたる本研究では、基礎研究データとして大変興味深く、価値がある成果が出始めている。また、種々の要因をマトリクス的に解明しようとする試みに期待したい。一方で、プロジェクト全体としての方向性がわかりにくいという印象を受けた。また、遺伝子発現やタンパク量としてのチェックが、健康影響、最終的にはヒトへの影響にどのように結びつけていくのかの言及が足りないという印象を受けた。

[今後への期待、要望]
今後、一度成果を振り返り、重点的に資源を投入すべき課題について検討して研究を集中するなど、出口を見据えたプロジェクト全体の戦略の一層の検討が望まれる。

4)対処方針

本プロジェクトは、神経、免疫、内分泌よりなる恒常性維持という生命現象に対する感受性要因の問題を3つのサブテーマ構成で扱っており、各要因間でもそれぞれ関連性をもって研究されている。恒常性維持機能への影響という未解明の問題を扱うため、プロジェクト前半では、個々のサブテーマで基礎的研究の手法により有害な影響の誘導因子を解明することに重点をおいた。これまでの研究は多岐にわたる内容であるが、価値がある成果が出始めていると評価をいただいた。しかしながら、プロジェクトが扱う範囲が広く、研究を集中することにより研究の方向性を明確にすべきとのご指摘を受け、これまでの研究成果をもとに、リスク評価の視点から有害影響をもたらす新奇のメカニズムおよび感受性要因として考慮すべき課題を選別し、それらに研究を集中するよう検討を進めたい。具体的には、脳・神経系、免疫系に焦点を絞り、低濃度曝露に鋭敏な動物モデルの作成、および鋭敏な領域、指標の提示、マトリクス的なアプローチによる発達期における臨界期の特定と作用機構の解明、化学物質の組織特異性と発達期影響に重点を置き、重篤な影響に関わる感受性要因を解明し、メカニズムに基づいた健康影響評価手法を提示したい。

Adobe Readerのダウンロードページへ PDFの閲覧にはAdobe Readerが必要です。Adobe社のサイトからダウンロードしてください。