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VI-3 環境リスク研究プログラム中核研究プロジェクトの中間評価
1.化学物質曝露に関する複合的要因の総合解析による曝露評価(平成18年度〜22年度)

1)研究の概要

課題(1)地域GIS詳細モデルおよび地球規模など複数の空間規模階層を持つ動態モデル群の総合的構築:地域GIS多媒体モデルの開発を行い、流域動態の再現性を確認した。全球多媒体動態モデルの開発とPCB等で検証を進めた。小児の曝露特性に関する検討及び東京湾のPCB、PFOS等の観測と室内移行実験を行った。

課題(2)バイオアッセイと包括的測定の総合による環境曝露の監視手法の検討と曝露評価への適用:環境水および環境大気のin vitro試験のための濃縮・分画法を確立し、全国多数の環境水・大気試料への適用性の検討を開始した。また、各種in vivo水生生物試験法を用いWET概念等での包括的影響把握の検討を実施した。

課題(3)モデル推定、観測データ、曝露の時間的変動や社会的要因などの検討と総合解析による曝露評価手法と基盤の構築と整備:モニタリングデータの統計解析手法の開発および曝露の総合解析の考察を行った。

2)外部研究評価委員会による中間評価の平均評点

3.2  点

3)外部研究評価委員会の見解

[現状評価]
本プロジェクトは、“動態モデル推定により、多種物質による複合的な暴露状況を把握”、“バイオアッセイおよび網羅的分析の環境調査により、複合的な暴露状況を把握”、“総合解析により複合暴露状況を示す”の3つのサブテーマで構成される。本研究では、多用な化学物質による複合暴露に関するバイオアッセイデータの全国調査を精力的に行うなど、意欲的に多くのテーマを扱い、データを蓄積している点は評価できる。また、化学物質の暴露量を確度高く把握し、GIS等の視覚的情報や他の情報との関連性をリンクするという本研究目的の意義は大きい。一方で、サブテーマ内およびサブテーマ間の成果の活用に関して工夫が十分でないと思われる。その結果、蓄積したデータを、環境リスクとして認識するための具体的評価に結びつける方法が不明確に見受けられた。

[今後への期待、要望]
今後、各研究の位置づけとつながり、プロジェクトとしての目標とそのリスク評価における位置づけを再検討して頂き、研究を進めて頂きたい。
また、バイオアッセイに関して、バイオアッセイの結果を実際の生態影響と関連づける研究を検討されることを要望する。一方、バイオアッセイには,“曝露”とはかなり隔たりのあるものが含まれている。あくまで両者を生かすとすれば,環境中濃度からの予測とバイオアッセイの隔たりが大きい事例(場所・生物種・化学種)に注目することで,多重曝露を考えるときの問題点が指摘できるのではないかと思う。
マコガレイのような底性魚あるいは,子供の大気曝露と屋内・屋外の滞在時間などを子考慮するなど、生物種の生活形態の特性を反映した曝露モデルの構築を検討する必要もあるかもしれない。今後、レスポンスの確度を高める努力をして頂き、時間軸に沿った評価を行って頂きたい。
また、注意すべき政策提言ないしは市民への警告を考察してまとめて頂きたい。

4)対処方針

多種物質による複合的な曝露状況を動態モデル推定、バイオアッセイ等により把握し、これをGIS等の視覚的情報とリンクして蓄積するという研究の概要と意義については評価していただいたものと理解する。一方、各課題の位置づけと連携、プロジェクトの目標の更なる明確化と複合的な曝露を環境リスクとして認識する具体的評価の方法、データの確度の確保、バイオアッセイの結果と生態影響や多種物質による曝露との関連性などについて更なる検討の必要性をご指摘いただいたと理解する。

本評価を受けて、地域規模での多種物質による複合的曝露の推定結果をより速やかに提示できるよう、動態モデルによる推定実施に前倒しに集中するよう計画を見直す。化学物質の環境中濃度の動態モデルによる推定については既存データを含めた実測データとバイオアッセイのデータも参照しつつその確度を検証する。生物種の生活形態の特性を反映した曝露モデルの構築が必要との指摘に対して子供の年齢・成長に伴う時間軸の曝露変動と生活空間の要素を意識した曝露モデルとしての構築を進めることとし、また、化学物質の魚介類への移行について魚種ごとの生活史での生活空間の特性を反映させ、魚介類を介した人への曝露を環境濃度から推定する手法を提示したい。多種物質の環境中濃度や曝露量の予測結果については、データの確度・精度について明示した上での、GIS上での効果的な視覚的提示を意識したシステム開発を進め、曝露の状況とバイオアッセイの活用について新たな研究情報を提示できるよう努める。

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