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VI 中核研究プロジェクト
研究課題名 廃棄物系バイオマスのWin-Win型資源循環技術の開発

実施体制

代表者:
循環型社会・廃棄物研究センター 資源化・処理処分技術研究室 室長 川本 克也
分担者:
【循環型社会・廃棄物研究センター】
副センター長 井上 雄三
資源化・処理処分技術研究室 小林 潤(研究員)
循環技術システム研究室 大迫 政浩室長)、倉持 秀敏(主任研究員)、稲葉 陸太(NIES特別研究員)
バイオエコ技術研究室 稲森 悠平*)(室長)、徐 開欽(主任研究員)、蛯江 美孝(研究員)、*)(NIESフェロー)、李 東烈(NIESポスドクフェロー)、近藤 貴志(NIESポスドクフェロー)

※所属・役職は年度終了時点のもの。また、*)印は過去に所属していた研究者を示す。

研究の目的と実施概要

全体的な計画として、エネルギーまたはマテリアルリサイクルを内容とする個別の要素技術等の研究開発を実験実施によって進めると同時に、各種の調査等を援用したシステムの設計を行うこととした。

各サブテーマの実施概要のうち、サブテーマ1については、中核技術の一つとするガス化-改質プロセスでの回収エネルギーの評価を行うのと同時に改質触媒の長時間耐久性試験評価により、生成ガスの制御を含め触媒の活用を可能とする技術的要件等の解明を進めることとした。バイオフューエル製造技術については、未利用の低品質廃油脂類からバイオディーゼル燃料を製造できる新規技術を開発し、その技術特性を明らかにした。第2の中核技術とする水素/メタン2相式発酵システムについては、エネルギー回収効率の向上を目指すとともに、対象バイオマスの発生特性等を考慮した解析・評価を行う。また、脱離液からのアンモニア除去プロセス実用化のための設計条件を見直し、改良した装置による運転条件を確立することとした。

サブテーマ2については、食品廃棄物を対象とした乳酸回収技術の最適化を行い、さらに発酵残さを養鶏等の飼料に利用するというカスケード利用を行う際の効果の特性評価や各種条件の解析を行うこととした。生活排水を対象とした高効率リン回収技術・システムの規模要件および廃液特性等に応じた現状分析を行い、リン等の吸着/脱離/資源化/吸着剤再生の技術因子を求め、リン酸鉄含有汚泥からの回収効率向上をはかることとした。

サブテーマ3については、既存の動脈プロセスと廃棄物系バイオマス等のエネルギーや再生マテリアルへの質転換プロセスとの連携/一体化システムの設計と評価を行う。まず廃棄物系バイオマス賦存量と需要特性等を把握し、地域条件に応じたシステムの基本設計、動脈プロセスへ受け入れるための各種質転換技術の評価を行い、基礎データ集積によるシステムモデルの設計を行うとともに、モデル実証に向けて特定エリアにおける適用を想定した評価を行うこととした。

研究体制は、前項で記載のように、3つのサブテーマに分けて進行させている。各サブテーマのうちサブテーマ1については、主に資源化・処理処分技術研究室、循環技術システム研究室およびバイオエコ技術研究室が取り組み、全体代表の川本が担当代表を兼ねている。サブテーマ2については、副センター長室およびバイオエコ技術研究室が取り組み、井上副センター長が担当代表である。サブテーマ3については、循環技術システム研究室が取り組み、大迫室長が担当代表である。サブテーマ1を担当する研究員は5名、サブテーマ2は同4名、サブテーマ3は同2名であり、複数のサブテーマを同一研究員が担当する場合もある。

サブテーマ1の研究方法は次のようである。ガス化-改質法によるエネルギー回収については、径50 mm、長さ約1 mの反応管をガス化と改質について設け、木質廃棄物等の試料を約150 g/hの速度で供給する。650〜850℃の温度を試験範囲とし、さらに改質触媒の適用を因子として生成するガスの組成や回収エネルギー等について詳細データを取得・解析した。水素/メタン発酵システムについては、研究所内で発生する食堂残飯を対象とした水素/メタン二段発酵プロセスのミニパイロットシステムを構築し、水素発酵、メタン発酵プロセスの連続運転による基質特性解析を行うとともに、本ミニパイロットシステムにおける負荷特性、温度特性、栄養塩類除去機能の解析等を行った。メタン発酵廃液のアンモニア除去については、MAP1水和物の生成防止・最適加熱条件を選定し、本プロセスのエネルギーおよびコストを算定し、従来法と比較評価した。

サブテーマ2の研究方法は次のようである。食堂や食品工場等の食品残さからの発酵生成物(乳酸)の品質確保のため、L-乳酸菌植種による劣化防止の評価および過熱蒸気による殺菌条件の評価を行った。また、発酵試験で生成した発酵残さ飼料を用いた肉用鶏の飼養実験を行い、発酵残さ飼料評価を行った。リンの回収については、集中処理システムとして中規模浄化槽と接続したミニパイロットシステムを構築し、高濃度リン含有排水からの効率的なリン除去方法の検討を行うとともに、鉄電解脱リン法を導入した小型浄化槽の調査を行い、高濃度リン含有汚泥からのリンの溶出および回収試験を行った。また、汚泥減容化・リン回収システムについては、ベンチスケールの活性汚泥プロセスにおける微生物解析に基づいて、汚泥転換率が低く、リン含有率の高い運転条件に関する解析を行った。

サブテーマ3の研究は、関東エリアを中心にして廃棄物系バイオマスの需給状況をデータベース化し、特定の地域を想定したシステム設計を行い、ライフサイクルアセスメントの手法により評価を行うという方法で実施した。

研究予算

(実績額、単位:百万円)
  平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 累計
運営交付金 80 72       152
受託費 5(エネ特-水素) 25(民間受託(エネ特))       30
科学研究費 50+5(+学振科研費-基盤B) 3(学振科研費-基盤B)
7(廃科研費)
      65
寄付金            
助成金            
総 額 140 107       247

今後の研究展望

平成18および19年度の研究から抽出された課題等を踏まえ、各サブテーマについて以下のように展望する。

(1) サブテーマ1において、ガス化・改質技術に関しては、生成ガスの成分組成制御に関する要素技術開発を引き続き行いつつ、当該プロセスのスケールアップのための速度論的検討を行う。また、生成ガスの供給先としての発電プロセスまたは化学原料合成プロセス等について、総合効率および環境負荷低減効果等を指標とした検討を進める。バイオディーゼル燃料(BDF)製造技術開発については、前処理技術およびBDF超高速合成技術の省資源化かつ省エネルギー化に向けた最適化を行い、ベンチスケールの実証プラントの設計を行う。水素/メタン発酵システムについては、回収エネルギーの利用形態との連携を踏まえたガス化効率の向上を図ると同時に、モデル地域における発生バイオマスの特性に対応した水素発酵特性解析および適用性評価を行う。また、脱離液処理における栄養塩類除去技術の効率化、システム化技術の確立を図る。

(2) サブテーマ2において、乳酸発酵による食品廃棄物の循環技術システムの構築については、食品残さ原料の排出段階での劣化防止に対する技術適用のFSを行い、さらに発酵残さを豚や鶏などの飼料とすることに向けたシステム評価を行い、ビジネスモデル構築に向けて必要な要件を検討する。液状廃棄物中リンに対する吸着・鉄電解法等の分散・集中処理に対応した要素技術開発を進めると同時に、システム的な適用性について検討する。また、回収リンの活用方法に照らしたリン形態、純度などを評価し、回収技術の確立を図る。

(3) サブテーマ3において、地域の需給特性に応じた類型ごとに動脈・静脈プロセス連携システムを設計する。そのための市町村ベースのバイオマス賦存量データベースおよび物質・エネルギーの需要ポテンシャルのデータベースを整備する。システム設計においては、(1)、(2)で研究開発している次世代型の技術を導入したケースのシステムについても考慮し、まず関東エリアを対象とした評価を実施し、その後に全国ベースの評価を行う。近未来の需給バランスの変化を想定したシナリオ分析についても、近未来ビジョンに関する中核研究プロジェクトと連携して進める。