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VI 中核研究プロジェクト
研究課題名 気候・影響・土地利用モデルの統合による地球温暖化リスクの評価

実施体制

代表者:
地球環境研究センター温暖化リスク評価研究室 室長 江守正多
分担者:
【地球環境研究センター】
温暖化リスク評価研究室 高橋 潔(主任研究員)、小倉 知夫、伊藤 昭彦(研究員)、横畠 徳太、岡田 直資*)、塩竈 秀夫、長谷川 聡、 阿部 学、増冨 祐司(NIESポスドクフェロー)、長友 利晴(NIESアシスタントフェロー)
主席研究員 山形 与志樹(主席研究員)、
木下 嗣基(NIESフェロー)、岩男 弘毅、清野 達之*)、加藤 悦史*)(NIESポスドクフェロー)、石渡 佐和子(NIESアシスタントフェロー)
【大気圏環境研究領域】
大気物理研究室 野沢 徹(室長)、日暮 明子(主任研究員)
【アジア自然共生研究グループ】
広域大気モデリング研究室 永島 達也(研究員)
【社会環境システム研究領域】
原沢 英夫(領域長)
統合評価研究室 肱岡 靖明(主任研究員)、花崎 直太(研究員)

※所属・役職は年度終了時点のもの。また、*)印は過去に所属していた研究者を示す。

研究の目的と実施概要

効果的な温暖化対策を策定するためには、近未来および長期の将来に亘って人間社会および自然生態系が被る温暖化のリスクを高い信頼性で評価することが必要である。そこで、本プロジェクトは、近未来については、将来30年程度に生起すると予測される極端現象の頻度・強度の変化を含めた気候変化リスク・炭素循環変化リスクを詳細に評価し、適応策ならびに森林吸収源対策の検討や温暖化対策の動機付けに資することを目的とする。また、長期については、安定化シナリオを含む複数のシナリオに沿った将来100年程度もしくはより長期の気候変化リスク・炭素循環変化リスクを評価し、気候安定化目標ならびにその達成のための排出削減経路の検討に資することを目的とする。地球温暖化研究プログラムにおける位置付けとしては、炭素循環観測研究から得られる最新の知見を取り込みつつ、主として自然系の将来予測情報を対策評価研究に提供する。

この目的を達成するため、本プロジェクトでは、極端現象の変化を含む将来の気候変化とその人間社会および自然生態系への影響を高い信頼性で予測できる気候モデル、影響モデル、および陸域生態・土地利用モデルの開発と統合利用を行い、炭素循環変動に関する最新の研究知見も取り入れた上で、多様な排出シナリオ下での全球を対象とした温暖化リスクを、不確実性を含めて定量的に評価する。

18年度は、気候モデル、影響・適応モデル、陸域生態・土地利用モデルの各サブテーマについて、各モデルの開発・改良ならびに各モデルを用いた将来予測実験およびその解析を行うとともに、モデル間の結合もしくは統合利用に向けての準備作業を進めた。また、サブテーマ間の連携を密にするため、サブテーマを横断する主要な研究項目を以下のように3つ設定して研究を進めた。

1) 極端現象の確率的予測・影響評価(気候/影響)について、特に20〜30年後の近未来に注目して、気候の自然変動の不確実性を考慮した極端現象の確率的予測を行うとともに、それに基づいた風水害などの影響評価を行う。

2) 人間活動を含む水資源モデルと気候モデルの結合(影響/気候/土地利用)に関して、ダム、灌漑などの人間活動を含む水資源モデルに気候モデルの結果を入力して水資源影響評価を行うとともに、この水資源モデルと気候モデルの相互作用を実現する結合の準備を行う。

3) 土地利用変化モデルの開発・気候モデルの土地利用変化実験(土地利用/気候)について、経済原理等に基づき土地利用変化を予測するモデルを開発するとともに、土地利用変化が気候に及ぼす影響を気候モデル実験により評価する。

19年度は、環境省地球環境研究総合推進費S-5「地球温暖化に係る政策支援と普及啓発のための気候変動シナリオに関する総合的研究」が開始され、その4つのテーマのうち2つで、本中核研究プロジェクトが主軸となり、国内の他の研究機関と密接に協力して研究を推進する体制が確立した。また、文部科学省「21世紀気候変動予測革新プログラム」も同時に開始され、本中核研究プロジェクトにおける気候モデル研究の一部はそこに位置づけられた。このため、主にこれらの研究課題に沿う形で以下の研究を進めた。

1) 気候感度の確率的推定を用いた簡便な確率的気候変動シナリオの構築および効果的な影響評価手法の開発を行う(推進費S-5テーマ1)。

2) 社会経済活動の空間分布情報の解析および現状における排出量の空間分布推定を行う(推進費S-5テーマ4)。

3) 気候モデルの改良および不確実性評価手法開発を行うとともに、地球システム統合モデルによる実験の準備を行う(文科省革新プログラム)。

4) 気候/水資源・農業影響/土地利用変化のモデルの統合利用作業を推進する。

研究予算

(実績額、単位:百万円)
  平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 累計
運営交付金 41 53        
受託費 45 59        
科学研究費            
寄付金            
助成金            
総 額 86 112        

今後の研究展望

IPCCの第5次評価報告書に向けた国際的な温暖化研究のデザインが決まりつつある。第5次報告書のスケジュール等は決まっていないが、新シナリオ開発のスケジュールが提案され、動き出している。この中で、本中核プロジェクトは、社会経済シナリオを開発する中核プロジェクト4との連携を進め、20年度中ごろまでに社会経済シナリオの空間詳細化および空間詳細な排出、土地利用変化シナリオの開発を完成するとともに、21年度には国内他機関との連携により次期の気候モデル実験国際相互比較に対応する必要がある。また、国内においては、文部科学省の21世紀気候変動予測革新プログラムおよび環境省の地球環境研究総合推進費S-4ならびにS-5に参加する他機関と有機的な連携を図ることが重要である。本中核プロジェクトは、これらの国内外の研究動向と整合性の高い形で、温暖化リスク評価研究における当研究所からの貢献をまとめあげる枠組みとして機能することを目指す。