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VI 中核研究プロジェクト
研究課題名 衛星利用による二酸化炭素等の観測と全球炭素収支分布の推定

実施体制

代表者:
地球環境研究センター衛星観測研究室 室長 横田 達也
分担者:
【地球環境研究センター】
衛星観測研究室 横田 達也(室長)、山野 博哉(主任研究員)、森野 勇(主任研究員)、青木 忠生、Sergey Oshchepkov (NIESフェロー)、Andrey Bril 、江口 菜穂、吉田 幸生、太田 芳文、田中 智章、齊藤 龍、Raphael Desbiens、荒木 光典(NIESポスドクフェロー)
主席研究員 Shamil Maksyutov (主席研究員)、
Anna Peregon 、Claire Carouge*)、古山 祐治、齊藤 誠、Dmitry Belikov、Nikolai Kadygrov (NIESポスドクフェロー)、中塚 由美子 (NIESアシスタントフェロー)、Vinu Valsala(JSPSフェロー)
地球環境データベース推進室 松永 恒雄(室長)
陸域モニタリング推進室 小熊 宏之 (主任研究員)
【大気圏環境研究領域】
大気物理研究室 日暮 明子(主任研究員)

※所属・役職は年度終了時点のもの。また、*)印は過去に所属していた研究者を示す。

研究の目的と実施概要

温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)プロジェクトは、環境省・国立環境研究所(NIES)・宇宙航空研究開発機構(JAXA)の三者共同プロジェクトである。京都議定書の第一約束期間(2008年〜2012年)に、衛星で太陽光の地表面反射光を分光測定してSN比300以上を達成し(JAXA目標)、二酸化炭素とメタンのカラム濃度を雲・エアロゾルのない条件下で二酸化炭素については相対誤差1%、メタンについては相対誤差2%の精度で観測する。これら全球の観測結果と地上での直接観測データを用いることにより、インバースモデル解析に基づく全球の炭素収支分布の算出誤差を地上データのみを用いた場合と比較して半減すること(NIES目標)を目標にしている。

本プロジェクトではこの目標達成に向けて、種々な観測条件下において取得されたデータに対して、雲・エアロゾル・地表面高度などの誤差要因を補正し、高精度で二酸化炭素・メタンのカラム濃度を導出することを目的に、衛星観測データの定常処理アルゴリズムを開発する。衛星打ち上げ前には、数値シミュレーションに基づいてデータ処理アルゴリズムを開発し、航空機や地上で取得する擬似データや直接観測データによりアルゴリズムの精度を評価し改良する。また、衛星打ち上げ後は、データ処理の結果(データ質)を直接測定・遠隔計測データを用いて評価・検証し、データ処理アルゴリズムの更なる改良を行う。また、この衛星観測データと地上での各種の直接測定データとを利用して、全球の炭素収支推定分布の時空間分解能と推定精度を向上することを目的にインバースモデルを開発し、データ解析を行う。

18年度は、データ解析アルゴリズムの開発、地上・航空機実験によるアルゴリズム検証、インバースモデル開発に関し、プロジェクト内の三つの担当グループにより、以下の研究を実施した。

1) 衛星観測データの処理アルゴリズム開発・改良研究
GOSATの観測するデータを処理して二酸化炭素及びメタンのカラム濃度を導出するためのアルゴリズムの開発研究として、処理フローの確定、巻雲・エアロゾルの影響と各パラメータ推定の可能性の検討、放射伝達計算上の問題点の調査等を、計算機プログラミング及びシミュレーションを中心に実施する。

2) 地上観測・航空機等観測実験による温室効果ガス導出手法の実証的研究
地上(山頂)や航空機に搭載した機器により、GOSATの観測する信号(太陽の地表面反射光及び直達光の分光スペクトル)を模擬的に取得し、同時に直接測定などにより二酸化炭素濃度の参照データ(in situデータ)を取得して、両者の解析結果を比較することによりデータ処理アルゴリズムの妥当性を評価する。

3) 全球炭素収支推定モデルの開発・利用研究
従来の地上測定局データを用いたインバースモデル解析に、衛星観測データを付加し適用するために、モデルの時間・空間分解能の向上とフォワードモデル計算手法の改良、関連データベースの整備を、計算機プログラミング、シミュレーション、現地調査等により実施する。

19年度は、上記の三つの担当グループにより、以下の研究を実施した。

1) 衛星観測データの処理アルゴリズム開発・改良研究
短波長赤外波長域での測定に関して、巻雲やエアロゾルの存在する様々な大気条件下での取得データに対応するデータ処理手法を開発し、それらにより導出される二酸化炭素カラム濃度値の誤差評価を行う。また、偏光データの利用手法を確立する。

2) 地上観測・航空機等観測実験による温室効果ガス導出手法の実証的研究
18年度に実施した実験データの解析を通してデータ処理手法の妥当性・改良すべき点などを確認し、データ処理手法の検証及び衛星打ち上げ後のデータプロダクトの検証に必要な実証手段の検討と準備を進める。

3) 全球炭素収支推定モデルの開発・利用研究
大気輸送計算によって地上測定データ及び関連データベースから二酸化炭素の空間分布を求めるフォワード計算手法を改良し、その時間・空間分解能を精緻化する。更に、このフォワード計算結果と衛星データを利用して全球の炭素収支分布を推定するインバースモデル解析手法のシステム化を行う。

研究予算

(実績額、単位:百万円)
  平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 累計
運営交付金 35 24        
受託費            
科学研究費 4 2        
寄付金            
助成金            
総 額 39 26        

今後の研究展望

GOSATの打ち上げが平成20年度冬期に迫っている。平成20年度は、GOSATデータの定常処理システムの完成と実際の観測データ処理に向け、システムに直接に反映する研究を実施するとともに、その後のデータ処理、検証、データ利用(炭素収支解析)の手法改良に向けた研究を進める。また、データ処理手法とデータプロダクトの検証のための準備研究を進める。

衛星打ち上げ後は、センサーの初期チェックアウトの後に観測データが配信された後に、その処理結果を見ながら処理手法の調整と改良を目指した研究に全力を注ぐ。