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X 平成20年度新規特別研究の事前説明
2.湖沼における有機物の循環と微生物生態系との相互作用に関する研究

1)研究の概要

湖沼において有機物と微生物生態系(バクテリア)等の相互作用を評価する。長期モニタリングデータ(組成、分子サイズ、同位体比等)解析から、湖沼流域における有機物の循環とDOMの難分解性化メカニズムを明らかにする。流域河川流出モデルと生態系を考慮した湖内3次元モデルを組み合わせて、湖内の特定地点において、流域の個々の特定発生源や湖水域毎の内部生産源からの寄与を定量的に算定する。

[外部研究評価委員会事前配付資料抜粋]

2)研究期間

平成20〜22年度(3年間)

3)外部評価委員会の見解

(1)研究内容

[内容評価]

水質の長期変化の把握に資する重要な研究である。水道管内での微生物付着は、特に管路が長い場合に顕在化するが、その原因は難分解性有機物DOMといわれている。しかも、現在の凝集沈殿を主体とする水処理ではDOMの除去は困難であり、水道源水である河川や湖沼で、これの発生原因を解明する研究目標は社会的にも重要である。また、中でもPOMの生成メカニズムは環境問題としても、また科学的問題としても重要であり、原因解明が期待される内容である。研究計画に示された研究目的・目標が十分に達成されれば、その科学的知見がもたらす貢献は大きいと期待される内容である。

[提案、要望]

湖沼、沿岸域における難分解性有機物の挙動は、水環境基準や総量規制をはじめとする水環境施策の動向にきわめて重要な位置を占めているため、本研究の成果が期待される。有機物と微生物の相互作用の基礎的な測定や解析手法の確立への貢献も期待している。

(2)研究の進め方・組み立て

[内容評価]

過去からの水環境変遷の把握は、重要であり、その解析が必要である。その基礎的なデータの蓄積もあると理解している。海外と異なり、放射性同位体が調査に使えないのはハンデであり苦労することになるが、それは新たな調査手法を誕生させるチャンスでもあると思う。

[提案、要望]

難分解性有機物について、水中における濃度増加に加えて、河川、湖沼、海域を通じた各断面におけるフラックスを把握することにより、各水域における種々の時間スケールでの収支を明確にできるとよい。一方、実験室的な研究の組み込みも検討した方が良いかもしれない。これらの成果を展開して、難分解性有機物を主体とする新たな流域や湖内の動態モデルの提案に結びつけることを期待する。また、今後のモニタリングシステム構築の提案も検討して頂きたい。それぞれのサブテーマに関しては、まずサブテーマ1では、POMの生成メカニズムは科学的にも非常に興味深い課題であるため、研究手法を精査して、緻密な研究を積み上げ、成果をあげて頂きたい。サブテーマ2に関しては、これまで多くの研究者が研究してきた内容が多いので、十分な文献調査と現状分析を行って頂きたい。

今後とも、外部資金の獲得や他の研究機関との共同研究を積極的に推進するなどして、長期研究を継続するため努力されることを望む。

4)対処方針

(1)研究内容

[対処方針]

信頼できるデータを着実に地道に取得することによって、目的の達成に向けて研究をステップ・バイ・ステップで進展させてゆく。有機物と微生物の相互採用に関しては、新しい分析法等を駆使して、多くの新規性の高い知見を導出すべく努力したい。

本研究は主に湖沼流域を対象としたものであるが、水の循環という観点から、沿岸域における難分解性DOMについても考慮してゆきたい。

(2)研究の進め方・組み立て

[対処方針]

本研究において、フィールド調査、メカニズム解明のための室内実験、および流域流出モデルや湖内流動モデルによるモデル解析を組み合わせて、河川や湖沼における難分解性有機物のフラックス・物質収支を明らかにしてゆく。湖沼流域を研究対象とするため、湖沼と海域の断面でのフラックスを検討することは現時点で想定していない。しかし、水循環という観点から陸水が沿岸域に流れ込むプロセスは重要であるため、定量的とはいかないまでも定性的に、河川・湖沼と海域との間における難分解性有機物の変化・動態を検討したい。

本研究ではフィールドにおいて微生物生産量を測定する新しい手法の開発・確立を目指す。微生物生産量と水質パラメータの連動関係を踏まえたモニタリングの在り方について検討する。

本研究は溶存有機物(DOM)を主に対象としているが、懸濁有機物(POM)についてもフィールド調査と室内実験によってその特性・起源について検討する。POMの生成については、植物プランクトンや細菌の生産という形で主に評価する。POMの分解性等ついてはPOMの組成分析等によって評価する。また、POMのサイズや凝集能についても検討したいと考えている。 サブテーマ2については、十分に既存の知見を活かす方向で、研究を進展させてゆく。

本研究は長期的スタンスで実施する研究であり、取得するデータは未来の水環境保全に大いに役立つはずである。このような研究を長期的に継続してゆくための枠組みや工夫について検討してゆきたい。

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