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X 平成20年度新規特別研究の事前説明
1.九州北部地域における光化学越境大気汚染の実態解明のための前駆体観測とモデル解析

1)研究の概要

春季に高濃度の越境光化学オゾンが発生する長崎県福江島において、光化学オゾン前駆体である非メタン炭化水素類(NMHC)、窒素酸化物(NOy)、および二次生成粒子の長期連続・集中観測を実施する。これによって、中国や韓国から九州北部に輸送されるオゾン前駆体の実態を把握すると共に、汚染イベント時の光化学反応履歴を解析する。また、モデル計算によって光化学大気汚染の全体像(鉛直構造、粒子状物質の越境汚染など)を把握すると共に、大気汚染予報システムの検証・改良を行う。

[外部研究評価委員会事前配付資料抜粋]

2)研究期間

平成20〜22年度(3年間)

3)外部評価委員会の見解

(1)研究内容

[内容評価]

本研究は、地道に行ってきた研究に基づいてデザインされている。このため、研究目的、研究計画、手法が明快であり成果が期待される。

大気環境内での光化学オゾンの発生メカニズムの解明はきわめて重要であり、九州北部をフィールドに研究を遂行することは十分な意義を認められる。

光化学大気汚染の連続自動計測システムの開発は、社会的価値が高いので、研究を通じて低価格化をはかり、普及が容易にできるようになれば良いと感じた。

東アジアにおける光化学の実態解明や、予報も含む解決に向けて、社会・行政への貢献は非常に高いと考えられる。

[提案、要望]

取得されたデータが国際的にも認知されるように公表等に配慮して欲しい。

本研究の結果として、原因が中国由来の大気汚染物質であると結論づけられた場合、次には削減手段・プロセスに関しての政策的な課題が浮かび上がる。この点についても検討して頂き、本研究の成果が社会的、行政的あるいは政策的な貢献につながることを期待する。

九州北部地域に限定するように見える点が気になる。本来は、アジア自然共生研究プログラム中核プロジェクト1と連携し、東アジアを対象にして相補的に進めるべき研究と思われる。

(2)研究の進め方・組み立て

[内容評価]

研究計画は妥当で、サブテーマ間の繋がりも良い。

[提案、要望]

アジア自然共生研究プログラム中核プロジェクト1と連携体制を組み立てることによって、得られた科学的知見の社会的・行政的な貢献のレベルが一層高まるものと期待する。

複数の観測点で得られた観測データとの比較は、発生域と対象域の違いの把握やプロセス研究、モデル検証にも不可欠であるので、これを補完するような連携研究を考慮していただきたい。

ライダーによる粒子の鉛直分布と併せて、MAX-DOAS装置などを用いてNO2などの鉛直分布情報を得てはどうか。

航空機観測による検証も他の観測計画と合わせて行ってはどうか。

観測期間中に高濃度オゾンイベントが出現するか、その発生条件などの仮説を立ててはどうか。特に、イベントの時空間的な広がりをモデル以外でも検証する手段が必要ではないか。

実験的な研究で光化学オゾン発生の原因物質が明らかにされているのであれば、現場の複雑な要因との関係からメカニズムを解明するのは困難であろう。特に、太陽光の強さや、相乗的な物質の存在など、現象は複雑であり、広い目配りが必要であると思われるが、成果に期待したい。

4)対処方針

(1)研究内容

[対処方針]

取得されるデータの国際的認知については、研究成果を国際学術誌に積極的に発表することによって達成したい。

本研究は、越境光化学大気汚染の実態解明を目的としたものであり、社会や行政施策に対する直接的な貢献を目的とした研究ではない。しかし、本研究で得られる科学的知見は、中核プロジェクト1の成果と併せ、社会的、行政的あるいは政策的な貢献に資するものであり、行政の各種委員会や講演会などを通して情報発信・提供していきたい。

本研究は、アジア自然共生研究プログラム中核プロジェクト1と連携して相補的に進める予定である(本研究担当者の大原と高見は同プロジェクトの主要メンバーである)。

(2)研究の進め方・組み立て

[対処方針]

本研究は、アジア自然共生研究プログラム中核プロジェクト1と連携して相補的に進め、越境大気汚染に関する科学的知見を集積することにより、社会的、行政的あるいは政策的な貢献に資することを目標としたい。

ライダーについてはすでに福江島で観測を継続しており、粒子の鉛直分布のデータを充分活用していく。MAX-DOASについては、他機関と連携することも含めて、その導入可能性について検討したい。

平成20年春に中核プロジェクト1の観測として東シナ海域で航空機観測を実施し、オゾンを始めCO、NOy、粒子状物質を観測した。東シナ海上空での汚染物質の空間的な分布や鉛直構造について情報を得ることができ、今後、地上観測やモデルシミュレーションと比較検討を予定している。これらの結果を参照することで、間接的ではあるが、航空機観測による検証と同等の成果が得られると考えられる。

観測期間中の高濃度オゾンイベント発生に関する仮説については、モデルの活用を考えている。イベントの時空間的な広がりの検証については、全国の地上常時測定局データやライダー観測データを使用するとともに、対流圏観測衛星データも活用していきたい。

太陽光の強さや、相乗的な物質の存在など、現象は複雑であり、広い目配りが必要である点については、重要な視点であるので、福江島で行われている他の観測項目も幅広く活用し、総合的な解析を進めていきたい。

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