W 平成19年度終了特別研究の事後評価
3.鳥類体細胞を用いた子孫個体の創出
1)研究の概要
- 鳥類始原生殖細胞(PGC)の大量培養法を開発した。
- 長期培養後のPGC由来細胞が細胞特性を保持してPGCと全く同じように子孫個体を作出することを実証した。
- 異種間生殖巣キメラ個体では種を越えて精子、卵が生殖巣内で分化することが確認できた。
- 細胞融合による始原生殖細胞が、ホスト始原生殖細胞の生殖巣への移動能を確保しながら細胞核を不活化するUV照射量を確定できた。
- ホスト始原生殖細胞と体細胞との融合は低率ながら成功した。
- 融合始原生殖細胞が生殖巣へと到達することが確認できた。
2)研究期間
平成17〜19年度(3年間)
3)外部研究評価委員会による年度評価の平均評点
4.0 点
4)外部研究評価委員会の見解
[現状評価]
本研究は、希少種の保存・再生に向けた、世界に先駆けた鳥類の増殖培養手法の開発として高く評価でき、一定の成果があげられたと評価できる。狭義の環境問題を超えた、科学的ポテンシャルの高い研究課題および研究手法であると思われる。また、最近の鳥インフルエンザの爆発的広がりを防止するために役立つ期待が持てる成果であると言える。
[今後への期待、要望]
本研究は、希少種の保存・再生のための技術に留まらず、極めて応用性の高い成果であると思われるため、今後、大型の外部資金を獲得するなどして研究を継続できるように検討して頂きたい。今回の基礎研究の成果をもとにして、どのような応用研究をすれば生物多様性の中で重要なテーマである種の保存問題に貢献できるのかを検討して頂きたい。
4)対処方針
全く新規の希少鳥類増殖法を開発し、基盤的な研究技術を開発・整備するための本研究は当初予想の80%程度の達成率と自己評価している。未達成の原因は、研究期間に対して達成目標が高すぎた可能性も否定できない。仮に本研究が同程度の予算規模で継続できた場合、枢要な研究成果は本中期計画内で達成可能であり、更に成果を実際の希少鳥類個体増殖に応用するためには、その後三年程度であると予想している。
ただ、特別研究の継続申請及び2件の外部競争的研究資金の新規申請が不採択となり、本研究の継続は基礎研究、応用研究共に困難な状況にある。今後は、技術、ノウハウ、人的資源を含めた研究の継続の手立てについて、外部研究組織への移転も視野にいれて模索することとなる。