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W 平成19年度終了特別研究の事後評価
2.環境化学物質の高次機能への影響を総合的に評価するin vivoモデルの開発と検証

1)研究の概要

化学物質のアレルギー増悪作用の有無を皮膚炎病態により判定することが可能なin vivoスクリーニングモデルを用い、複数の環境化学物質のアレルギー増悪影響を評価した。一部のフタル酸エステル類、キノン類、ビスフェノールA、ベンゾピレン等、検討対象とした物質の一部が、既報告のNo Adverse Effect Level (NOAEL) 近傍、もしくは、より低用量でアレルギー増悪作用を発揮することを明らかにした。さらに、DNAマイクロアレイを用いた短期スクリーニング手法と樹状細胞、脾細胞等を利用したin vitroスクリーニング手法の有用性を検討し、より簡易で汎用性に富み、in vivoスクリーニングを反映する有望なin vitroスクリーニング手法を提案することができた。

[外部研究評価委員会事前配付資料抜粋]

2)研究期間

平成15〜19年度(5年間)

3)外部研究評価委員会による年度評価の平均評点

4.1 点

4)外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

本研究では、明確な目標設定の下での着実なアプローチにより、ユニークなモデルを作り、遺伝子を指標とする簡便な評価モデルや培養細胞を使った簡便かつ短期間で実施可能なアッセイ系を確立した点で高く評価できる。具体的には、アレルギー増悪影響を判定するin vivoスクリーニング系、in vitroスクリーニング系が開発されている。簡易スクリーニング系については、DNAマイクロアレイ、培養細胞の二つのアプローチが取られているが、人の健康影響のスクリーニング系としてより有効なものとするための吟味が行われており、高く評価できる。今後の更なる改良、バリデーション、データの蓄積等により、信頼性の高い確立したスクリーニング手法となることが期待される。また、培養細胞系において、極低濃度でアレルギー作用を引き起こすという結果は興味深い。

一方で、アレルギー増悪化学物質の確定とアレルギーの種類という実用化の可能性について不明瞭な点が伺えた。

[今後への期待、要望]

今後の化学物質政策や対策にも、この成果を十分に活かしていく必要があると思われるため、定量的な評価法の開発へと持っていけるように研究を今後も進め、発展させて頂きたい。また、ヒト培養細胞を用いるなど、ヒトを対象とした研究へと移行されることを期待したい。

4)対処方針

今後、スクリーニング系の簡便性、汎用性、信頼性をより高め、一層の改良と検証を進めてゆく必要があると考えている。また、対象とする環境化学物質を増やし、スクリーニング間の相関性をより厳密に検証していくことが望ましいとも考えている。具体的には、現在、免疫反応の起点である樹状細胞を用いたin vitroスクリーニングシステムの改良と検証について研究を進行しつつある。この系は、人を対象とした研究への移行を念頭に置いたものである。また、簡便性、汎用性の観点からは、脾細胞を用いたin vitroスクリーニングシステムの改良と検証も必須で一層進展してゆく必要が高いものと認識しており、何らかの予算措置を得るべく努力したいとも考えている。将来的には、多数の環境化学物質についてin vitroスクリーニングを実行し、増悪作用が示唆される化学物質のin vivoにおける増悪影響をin vivoスクリーニングモデルにおいて確認し、定量的に評価し、大規模疫学における検討対象化学物質として提案すると共に、環境政策の今後の方向性の設定に示唆を与え、国民の健康の保持(安全と安心)と環境影響の未然防止に役立てていきたい。

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