ホーム > 研究紹介 > 研究計画・研究評価 > 外部研究評価 > 平成20年外部研究評価実施報告 > 環境化学物質の高次機能への影響を総合的に評価するin vivoモデルの開発と検証

ここからページ本文です

W 平成19年度終了特別研究の事後評価
2.環境化学物質の高次機能への影響を総合的に評価するin vivoモデルの開発と検証

研究目的と実施内容

[研究目的]

環境化学物質は年々増加しており、その健康影響を速やかに明らかにする必要がある。また、環境汚染物質の健康影響については、大量曝露による古典的な毒性発現という観点ではなく、低濃度曝露による免疫・アレルギー、内分泌、神経・行動等を主軸とする高次機能への影響という観点から再評価する必要性が増している。本研究課題は、「免疫・アレルギー系に焦点を当て、環境化学物質の高次機能への影響をより簡易・迅速に、総合的に評価することが可能なin vivoスクリーニングモデル、in vitroスクリーニングモデルを開発し、その短期化、簡便化を一層図るとともに、複数の環境化学物質を対象としてその有効性を検証する。」ことを目的とした。

[実施内容]

本研究課題は以下のサブテーマから構成された。

(1)in vivoスクリーニングによる化学物質のアレルギー増悪影響評価
(2)アレルギー増悪影響のより簡易なスクリーニング手法の開発

(1)in vivoスクリーニングによる化学物質のアレルギー増悪影響評価

本サブテーマにおいては、研究代表者が平成16年度終了特別研究において提案した「アレルギーを起こしやすい高感受性動物 (NC/Ngaマウス)を用いたin vivoスクリーニングモデル」を利用し、検討対象とする化学物質を増やし、そのin vivoにおけるアレルギー増悪影響を評価した。対象とする化学物質は、内分泌かく乱作用が疑われている化学物質 (ビスフェノールA、ノニルフェノール、スチレン、トリブチルスズ等)、デイーゼル排気微粒子 (DEP) にも含まれているAhレセプター刺激物質 (ベンゾピレン、ナフトキノン、フェナントラキノン)、PPAR刺激物質 (ペルフルオロオクタン酸:、ペルフルオロオクタンスルホン酸) 、フタル酸エステル類 (フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル)、可塑剤代替物 (フタル酸ジイソノニル、アジピン酸イソノニル、トリメット酸エチルヘキシル)、食品添加物 (アクリルアミド)等とした。なお、これらの環境化学物質の曝露量は、環境省における曝露影響評価の基礎データ等も参考に、既報告のNOAELの10倍量程度を最高濃度とし、より低濃度をも含む用量設定とした。また、NOAELが報告されていない物質に関しては、NOAELが規定されている類似の化学物質の含有量、あるいはヒトの推定曝露量の100倍程度を上限として換算し、より低濃度をも含む用量設定とした。一方、フタル酸ジエチルヘキシルに関し、増悪メカニズムを詳細に検討し、かつ、曝露時期による影響発現の特異性に関しても詳細な検討を加えた。

(2) アレルギー増悪影響のより簡易なスクリーニング手法の開発

上出のin vivoスクリーニングモデルも、3週間と、比較的短期間でアレルギー増悪影響の判定が可能であるが、本サブテーマでは、より短期、あるいは、簡便に評価が可能なシステムの開発を目指した。また、汎用性の高いスクリーニングシステムの開発にも心懸けた。

1) DNAマイクロアレイを用いた短期スクリーニング手法の開発

第一に、DNAマイクロアレイを用いた短期スクリーニング手法の開発について検討した。われわれは、すでに、化学物質の集合体とも言えるDEPによるアレルギー性気管支喘息増悪影響を明らかにしているが、この増悪作用における遺伝子の発現変化を、網羅的、かつ、経時的に解析した。その中で、病態潜在期、早期、進行期、完成期と進むにつれ、より多数の遺伝子が、より大きく発現変化することを見出した。その一方、比較的少数の遺伝子が、病態の潜在期や早期から共通して発現変化をきたしていることも明らかにした。これいった少数の早期変動遺伝子を利用することにより、アレルギー疾患の病態増悪をより早期に簡便に予知することが可能か否か、試みた。

2) 培養細胞系を用いた簡易スクリーニング手法の開発

研究所や一定規模以上の試験所・施設においては、実験動物を用い、実際の病態をよく反映する影響の評価やDNAマイクロアレイを用いたスクリーニング手法を実施することが可能である。しかし、より多くの施設で影響評価が可能な汎用性の高い手法としては、細胞培養系を用いた簡易スクリーニング手法が適当な候補となることと考えやすい。本サブテーマの第二の小テーマとして、免疫・アレルギー反応に深く関わる樹状細胞、リンパ球、脾細胞の単独、あるいは、複合培養系を用い、in vivoスクリーニング結果をよく反映するin vitroスクリーニング手法の開発が可能か否か検討し、その簡便性、普及性を含め、総合的に有用性を検討した。

研究予算

(単位:千円)
  H18 H19 H20
サブテーマ1 15,000 12,000 10,000
サブテーマ2 5,000 8,000 10,000
合計 20,000 20,000 20,000
総額 60,000 千円