ホーム > 研究紹介 > 研究計画・研究評価 > 外部研究評価 > 平成20年外部研究評価実施報告 > アジア自然共生研究プログラム  (平成18年度〜22年度)

ここからページ本文です

Ⅰ 重点研究プログラムの年度評価
4.アジア自然共生研究プログラム (平成18年度〜22年度)

1)研究の概要

現在急速に発展しつつあるアジア地域が持続可能な社会に移行できるか否かは、我が国及び世界の環境の持続可能性の鍵を握っている。そのアジア地域において、環境の現状が、持続可能な社会に向けたシナリオに沿って推移しているか否かを評価するとともに、持続可能な社会を実現するために必要な技術・政策等の評価を行い、政策提言の科学的基盤を築くことが不可欠である。アジア自然共生研究プログラムにおいては、下記の中核研究プロジェクトを中心に、関連プロジェクト等と連携しつつ研究を推進する。

(1)アジアの大気環境評価手法の開発

東アジア地域を対象に、大気汚染物質と黄砂の地上観測、航空機観測、ライダーネットワーク観測等を行い、国内外の観測の連携を進めるとともに、数値モデルと排出インベントリの精緻化を進める。これらの観測データ、数値モデル、排出インベントリ、更に対流圏衛星観測データを活用して、アジア地域の広域大気汚染と日本への越境大気汚染の全体像を把握し、科学的知見を蓄積する。日本国内を含むアジア地域の大気環境施策立案に必要な科学的知見とツールを提供する。

(2)東アジアの水・物質循環評価システムの開発

東アジア地域の流域圏について、国際共同研究による水環境に関する科学的知見の集積と持続的な水環境管理に必要なツールの確立を目指し、観測とモデルを組合せ、水・物質循環評価システムの開発を行う。

(3)流域生態系における環境影響評価手法の開発

東南アジア・日本を中心とした流域生態系における環境影響評価手法の開発を行い、特に、メコン河流域の持続可能な発展に必要な科学的知見を提供する。主にメコン河の淡水魚類相の実態解明、流域の環境動態の解明を行うこと等により、ダム建設等の生態系影響評価を実施する。 (関連プロジェクト)

・省エネルギー型水・炭素循環処理システムの開発
・湿地生態系の時空間的不均一性と生物多様性の保全に関する研究

2)外部研究評価委員会による年度評価の平均評点

3.9 点

3)外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

本プログラムでは、データに基づきモデル化を通して、中国を中心とするアジアの大気・水環境を評価しており、今後の環境保全のための国際的取り組みに貢献が期待できる成果が得られている。大気質の問題については研究の達成度は目標を上回っているが、プロジェクトによって達成度がかなり異なる。海外を対象とした研究が主体となるプログラムであるため、他のプログラムとは異なる困難度があることを考慮すれば、得られる成果は貴重である。

一方で、アジア地域の持続可能な社会構築に向けた、総合的な考え方・戦略が明確ではなく、政策立案を含めた研究方法の具体的な提示が行われていない様子である。

研究の相手国における環境研究対応の能力開発についても検討が必要と見受けられた。

[今後への期待、要望]

今後、一層、国環研の独自性を念頭において、問題解決に向けて進めて欲しい。

アジア統合モデルに関しては、内容を詰めることによって、アジアをどのように理解していくのかの検討を進めて頂きたい。このモデルおよびシナリオは日本発となる訳だが、さらに発展させ、関係諸国の合意を得るプロセスを具体化して頂きたい。この点においても、現実的に利用価値と信頼性のあるモデルの完成が望まれる。

これらを達成するためには、アジア諸国の研究者への、育成を含めた一層の協力、連携が必要である。IGESとの連携も研究の一助となる可能性があると思われるので、検討頂きたい。日本および対象地域への研究成果の還元方法についても検討頂きたい。

次期中期計画への期待となるが、自然共生にどのようにつなげるのかに対する明確な方針を立てた上で研究を進めて頂きたい。

4)対処方針

第2期中期計画期間においては、政策提言の科学的基盤を確立するために、観測・調査及びモデリングを通じてアジアの環境の評価手法を開発することに重点を置いている。同時に、アジア地域の持続可能な社会構築に向けたシナリオ作成とそれを可能にする技術、政策・社会システムの評価が戦略的に重要であると認識しており、今後、次期中期計画における展開を目指して具体化し、総合的な考え方・戦略をより明確にして行きたい。

アジア統合モデルについては、アジアを対象とした、大気環境、水環境及び生態系のモデル研究の相乗効果と相補性を高めること、及びシナリオ研究等について国環研におけるこれまでの集積を踏まえ、連携を進めることを通して国環研の強みを生かした独自性のある研究展開が可能になると考えている。その際、既に形成しているアジア諸国の研究パートナー及び行政担当者等との連携を活用することにより、関係諸国の合意が得られる現実的で利用価値と信頼性のあるものにしたい。

アジア諸国との協力・連携、IGES等との連携については、中核PJ1、中核PJ2、中核PJ3のそれぞれにおいて具体的に進め成果を挙げているところであるが、更に充実させたい。

Adobe Readerのダウンロードページへ PDFの閲覧にはAdobe Readerが必要です。Adobe社のサイトからダウンロードしてください。