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Ⅰ 重点研究プログラムの年度評価
3.環境リスク研究プログラム (平成18年度〜22年度)

1)研究の概要

様々な環境要因による人の健康や生態系に及ぼす環境リスクを包括的に評価できる手法を見いだすため、中核プロジェクト(化学物質曝露に関する複合的要因の総合解析による曝露評価 、感受性要因に注目した化学物質の健康影響評価、環境中におけるナノ粒子等の体内動態と健康影響評価、生物多様性と生態系機能の視点に基づく環境影響評価手法の開発)を実施するととともに、「環境政策における活用を視野に入れた基盤的な調査研究」として、化学物質の高感度・迅速分析法の開発、新たな生態毒性試験法の開発、発がんリスクを簡便に評価するための手法開発、バイオインフォマティックスの手法を活用した化学物質の類型化手法の検討、生態毒性に関する構造活性相関モデル作成など既存知見を活用した新たなリスク評価手法の開発を進める。また、「知的基盤の整備」として、化学物質データベース、侵入生物データベースなどの構築・更新を実施する。リスク管理政策における環境リスク評価等の実践的な課題に対応するとともに、環境リスクに関する情報・知識の提供を行う。

2)外部研究評価委員会による年度評価の平均評点

3.9 点

3)外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

様々な視点から環境リスクを具体的に指摘し、社会に対して警鐘を発することが重要な目的である本プログラムは、研究対象、研究手法が多岐にわたって展開される性質のものである。従って、プログラム全体のまとまりというよりも、個々の研究要素の先見性が重視されるべきであり、この点で、ナノ粒子の影響評価法をはじめとして興味深い研究成果を着実に挙げていると評価できる。また “フィールド研究と数理モデルを組み合わせての環境影響評価手法の研究開発”は、今後の発展を期待できる。リスク情報の発信や、政策貢献についても積極的である。

一方で、上記プログラムの性質上やむを得ない面もあるが、プログラム全体としての最終成果が見えにくいと感じられた。また、作業仮説が若干見えにくいプロジェクト(中核プロジェクト1 〜 3)が見受けられた。

[今後への期待、要望]

今後、多岐にわたる研究要素の中で、限られた資源で何をどのように達成すべきかを絞り込む必要があると思われる。その際、長期的目標と、5年間の中期計画での達成目標との関連を明確に示して頂きたい。

次期中期計画を検討する際に以下の点に留意して頂きたい。すなわち、細胞レベル、遺伝子レベルでの進歩が著しい生物毒性試験法を用いたリスク評価法の早期確立、この新しいリスク評価法に基づく化学物質に関する環境基準などの見直しに資する研究と、代替試験法開発という意味ではなくリスク評価の省力化に向けた研究である。

4)対処方針

今期中期計画では、化学物質の曝露評価法、高感受性要因、ナノ粒子及び生態影響評価に関する4つの課題を、今後の環境リスク評価において確立が必要な要素と特定し、中核研究プロジェクトとして先見性を重視した研究を実施している。各プロジェクトの作業仮説は、(1)多種類の化学物質による複合的な曝露による影響の存在、(2)神経系、免疫系等の生体高次機能の恒常性や、胎児、小児等発達期には脆弱性が存在、(3)微小な粒子の物理的形状と有害性との関連性、(4)生物多様性や生態系機能の低下をエンドポイントとする自然生態系の環境影響評価手法の提示が可能、である。長期的目標は、開発された新たなリスク評価手法を社会的なニーズを受けて実施されるリスク評価に体系的に組み入れることにより、将来にわたる環境の安全性の確保に資することである。中期計画での達成目標は、(1)バイオアッセイとモデル推定手法を活用し複合的な曝露の現状を把握しこれを提示する。(2)影響の臨界期を特定し低濃度曝露に有効な動物モデルを開発する。(3)ナノ粒子の健康影響評価法を提示する。(4)具体的な生態影響評価の事例を提示し、新たな評価手法を実験系で検証する、である。in vitro試験法など革新的技術を活用したリスク評価法は、国際的な状況を把握しつつ、引き続きその実現の可能性を検討したい。

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