記者発表 2010年2月12日

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国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第35号
「環境負荷を低減する産業・生活排水の処理システム
−低濃度有機性排水処理の「省」「創」エネ化」の
刊行について
(お知らせ)

(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付 )

平成 22年 2月 12日(金)
独立行政法人国立環境研究所
企 画 部 長  : 齊藤  眞 (029-850-2302)
環境情報センター長  : 岸部 和美 (029-850-2340)
環境儀WGリーダー  : 村上 正吾 (029-850-2388)


国立環境研究所の研究成果を分かりやすく伝える研究情報誌「環境儀」第35号「環境負荷を低減する産業・生活排水の処理システム−低濃度有機性排水処理の「省」「創」エネ化」が刊行されました。人間活動に伴って発生する排水は産業排水が年間 120億トン、生活排水が160億トンにものぼり、その排水処理には微生物有機物の分解を促進させるために汚水中に酸素を供給する必要があり、その供給エネルギー(曝気電力)を含めると生活・産業排水処理に、合わせて国内電力のほぼ1.5%に相当する膨大なエネルギーが消費されており、下水処理にも省エネ機能を組み込んだシステムの開発が急務となっています。

国立環境研究所では、嫌気性微生物を利用することで、多くのエネルギーを要する低濃度/低・常温の有機性排水を低エネルギーで高速処理することが可能な排水処理システムの実用化に取り組んでいます。「省」エネルギーであるとともにメタンガスを効率よく生成する「創」エネルギーの機能も併せ持ち、次代を担う有機性排水の処理法として多くの期待が寄せられています。

1  第35号の内容

好気性微生物による排水処理技術の普及により、生活排水や産業排水は適切な処理が行われ、我が国の水環境は健全な状態に保たれていますが、エネルギーの消費が大きい点が課題であり、省エネルギー型処理技術の開発は急務となっています。また、開発途上国での深刻な水環境汚染問題に対しても、排水処理に関わるエネルギー(運転コスト)を十分に確保できない等の理由から、好気性処理法の普及だけでは対応できない状況にあります。

本号では、有機性排水処理に関わるエネルギー消費量の大幅削減が可能な処理技術の確立を目指す独自の嫌気性排水処理法(メタン発酵処理技術)の開発への取り組みと、実証処理試験などを通じての有効性の評価、実用化のための道筋を紹介しています。さらに、水環境および地球環境の保全への理解が、有機性排水処理に関する研究の最前線を通して深まる内容となっています。
環境儀第35号表紙写真

内容は次のとおりです。

(1) 研究担当者へのインタビュー

  • 珠坪 一晃
    水土壌圏環境研究領域
    水環境質研究室主任研究員

(2) 研究成果のサマリー及び国内外の研究の動向の紹介

(3) 『低濃度/低・常温の有機性排水を対象としたグラニュール汚泥床メタン発酵処理技術の開発』

(4) 『嫌気性排水処理技術の研究動向』 等



2  閲覧・入手についての問い合わせ先

「環境儀」は、研究所のホームページで閲覧することができます。
http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/
   
冊子の入手については、下記へお問い合わせ下さい。
連絡先:国立環境研究所環境情報センター情報企画室出版普及係
(TEL: 029-850-2343、E-mail:pub@nies.go.jp)


(参考)これまで「環境儀」で取り上げたテーマ

33号 : 「越境大気汚染の日本への影響−光化学オキシダント増加の謎」
32号 : 「熱中症の原因を探る−救急搬送データから見るその実態と将来予測」
31号 : 「有害廃棄物の処理−アスベスト、PCB処理の一翼を担う分析研究」
30号 : 「河川生態系への人為的影響に関する評価 よりよい流域環境を未来に残す」
29号 : 「ライダーネットワークの展開−東アジア地域のエアロゾルの挙動解明を目指して」
28号 : 「森の息づかいを測る−森林生態系のCO2フラックス観測研究」
27号 : 「アレルギー性疾患への環境化学物質の影響」
26号 : 「成層圏オゾン層の行方 - 3次元化学モデルで見るオゾン層回復予測」
25号 : 「環境知覚研究の勧め−好ましい環境をめざして」
24号 : 「21世紀の廃棄物最終処分場−高規格最終処分システムの研究」
23号 : 「地球規模の海洋汚染−観測と実態」
22号 : 「微小粒子の健康影響―アレルギーと循環機能」
21号 : 「中国の都市大気汚染と健康影響」
20号 : 「地球環境保全に向けた国際合意をめざして  ― 温暖化対策における社会科学的アプローチ」
19号 : 「最先端の気候モデルで予測する『地球温暖化』」
18号 : 「外来生物による生物多様性への影響を探る」
17号 : 「有機スズと生殖異常−海産巻貝に及ぼす内分泌かく乱化学物質の影響」
16号 : 「長江流域で検証する『流域圏環境管理』のあり方」
15号 : 「干潟の生態系−その機能評価と類型化」
14号 : 「マテリアルフロー分析−モノの流れから循環型社会・経済を考える」
13号 : 「難分解性溶存有機物−湖沼環境研究の新展開」
12号 : 「東アジアの広域大気汚染−国境を越える酸性雨」
11号 : 「持続可能な交通への道−環境負荷の少ない乗り物の普及をめざして」
10号 : 「オゾン層変動の機構解明−宇宙から探る  地球の大気を探る」
9号 : 「湖沼のエコシステム−持続可能な利用と保全をめざして」
8号 : 「黄砂研究最前線−科学的観測手法で黄砂の流れを遡る」
7号 : 「バイオエコ・エンジニアリング−開発途上国の水環境改善をめざして」
6号 : 「海の呼吸−北太平洋海洋表層のCO2吸収に関する研究」
5号 : 「VOC−揮発性有機化合物による都市大気汚染」
4号 : 「熱帯林−持続可能な森林管理をめざして」
3号 : 「干潟・浅海域−生物による水質浄化に関する研究」
2号 : 「地球温暖化の影響と対策−AIM:アジア太平洋地域における温暖化対策統合評価モデル」
創刊号 : 「環境中の『ホルモン様化学物質』の生殖・発生影響に関する研究」

バックナンバーはホームページから閲覧できます。
http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/