記者発表 2009年11月9日

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温室効果ガス削減中期目標に関わる世論調査結果について
(お知らせ)

(筑波研究学園都市記者会、環境省 記者クラブ同時発表 )

平成21年11月9日(月) 
独立行政法人 国立環境研究所
社会環境システム研究領域 環境計画研究室長
青柳みどり(029-850-2392)


独立行政法人国立環境研究所では、平成21年4月〜7月上旬に、温室効果ガス削減に関わる中期目標に関する世論調査を数次に亘り実施した。

その結果、中期目標値についての国民の認知度は高く、国民は温暖化対策を重要と考えており、早期の対応を求めていることが明らかになった。また、先進国の責任を明確にした基本姿勢が重要視され、さらに将来的・国際的な協調の方向としては、経済成長が見込まれる国々にも削減義務を負うべきとの意見が多い結果となった。

1.調査の目的

温室効果ガス削減中期目標が、平成21年度前半を目途に決定されることを踏まえ、この目標値が国民生活に大きな影響を与えることが推測された。そのため、その中期目標の設定の「基本的考え方」について、国民の声を聞くことを目的として実施した。

2.「4月調査」結果の概要(集計結果については別添1参照。)

(1)中期目標設定に当たっての基本的な考え方について

「最先端の技術の導入や国内制度の整備などで最大限努力する」(約65%)が最も支持され、「今までのやり方」(15%)、「他の先進国を目安」(11%)となり、国内において最大限努力することが最も国民の支持を集める結果となった。

(2)国際的な協調について

日本の国際協調の原則について聞いたところ、「削減率一定」が38%と最も高く、つぎに「他の先進国以上の目標値」(25%)、「費用が各国と同程度」(25%)となった。

(3)温室効果ガス削減も含めた日本の温暖化問題に対する取り組み姿勢について

温暖化問題に対する全般的な取り組みについて聞いたところ、「地球温暖化は深刻である」ことを前提とした選択肢に支持があった。「経済的な負担が大きくても最大限の手を打つべき」(35.5%)、「経済的な負担があまり大きくない程度」(35.4%)の二つである。

3.「6月調査」結果の概要(集計結果については別添2参照。)

(1)中期目標設定に当たっての基本的な考え方について

「先進国の責任」(34.4%)が最も支持され、「経済的な格差を勘案」が31.1%とこれに次いだ。「追加的費用が同程度」(17.6%)は、これらの半分程度の支持となった。

(2)温室効果ガス削減も含めた日本の温暖化問題に対する取り組み姿勢について(自然災害への言及追加)

温暖化問題についての全般的な取り組みについて、4月調査の選択肢3の一部を変更し、自然災害についての言及を追加した。その結果、この選択肢3についての支持は35.5%(4月)から、8.4%(6月)と減少し、選択肢2が20.0% →32.4%、選択肢4が35.5%→43.2%と増加した。増加した選択肢はどちらも、温暖化対策への早めの対応を支持するものである。

4.「7月調査」結果の概要(集計結果については別添3参照。)

(1)中期目標認知度について

中期目標値の6月10日の発表から1ヶ月経っての調査であるが、14.5%が「発表されたことも数字も知っている」、50.9%が「発表されたことは知っているが数字は知らない」と回答し、65%以上が中期目標の発表について認知していた。約3割が発表されたことも数字も知らない、と回答したのに対して、高い数字であると考えられる。

(2)今後の国際的な協調のあり方

6月に発表された数値目標は、いわゆる「真水(国内対策のみ)」の数字である。既にG8サミット等でも先進各国は温暖化対策に積極的な対応を行っていくことが確認されている。そこで、今後、国際社会との連携をどう取っていく際の考え方について聞いた。最も多い支持は、「経済的な格差を勘案」(30.3%)であり、「先進国の責任」(23.2%)、「長期的排出量の公平」(18.3%)と続く。「産業部門毎共通目標」は11.3%と低い支持にとどまった。

(3)科学者の提案に対する対応

長期的な安定化の目安として、「気温上昇2度」のIPCCの第4次報告書での目安に関しての意見を聞いた。52.8%が、「経済成長が見込まれる国々も削減義務を負うべき」に賛成し、「負担が大きすぎ、現実的に対応できる範囲」14.2%、「先進国で負担」17.5%の2つを大きく上回った。

(4)温室効果ガス削減も含めた日本の温暖化問題に対する取り組み姿勢について(自然災害への言及あり)

6月調査と同じ設問であり、結果もほとんど同じ分布になった。国民の態度は、「早めに対応」で一貫していると考えられる。

5.まとめ

今回の調査は、麻生政権下での中期目標値策定についての調査である。6月に発表された削減の数値目標についての国民の認知度は高く、国民は温暖化対策を重要と考えており、早期の対応を求めていることが明らかになった。また、先進国の責任を明確にした基本姿勢が重要視され、さらに将来的・国際的な協調の方向としては経済成長が見込まれる国々にも削減義務を負うべきとの意見に賛成が多い結果となった。

■問合せ先

独立行政法人 国立環境研究所 社会環境システム研究領域 環境計画研究室長
青柳 みどり   電話: 029-850-2392

<補足>

●調査の概要は以下のとおりである。毎月の集計結果は別添1〜3に示す。

(1)調査対象者の抽出と有効回答の状況

調査は、全国の層化副次(三段)無作為抽出法によって抽出された満20歳以上の男女4,000名を対象に、調査員による個別面接聴取法で実施した。実査は、社団法人中央調査社が行った。調査日程及び有効回答は、以下のようである。
(1) 4月調査:平成21年4月3日~13日、有効回答数1,299(有効回答率32.5%)
(2) 6月調査:平成21年5月30日〜6月9日(麻生首相(当時)による15%削減目標の発表前日まで)、有効回答数1,244(有効回答率31.1%)
(3) 7月調査:平成21年7月9日〜20日、有効回答数1,305(有効回答率32.6%)。

(2)調査項目

設問の作成にあたっては、数字よりも温室効果ガス削減にかかわる基本的な考え方が重要であるとの考えに基づき、以下のように設定した。
(1) 4月調査:ア)基本的な考え方、イ)国際的な協調、ウ)日本の温暖化問題に対する取り組み全般的姿勢について(自然災害への言及なし)。
(2) 6月調査:ア)基本的な考え方、イ)日本の温暖化問題に対する取り組み全般的姿勢について(自然災害への言及あり)。
(3) 7月調査:ア)中期目標値認知度、イ)今後の国際的な協調のあり方、ウ)科学者の提案に対する対応、エ)日本の温暖化問題に対する取り組み全般的姿勢について(自然災害への言及あり)。