記者発表 2009年10月30日

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温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による
観測データ(輝度スペクトル及び観測画像)の一般提供開始について
(お知らせ)

(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、文部科学省記者会同時発表 )

平成21年10月30 日(金)
(独)国立環境研究所 地球環境研究センター
  衛星観測研究室長: 横田 達也(029-850-2550)
GOSATプロジェクトオフィスマネージャ: 渡辺 宏
  (029-850-2035)
環境省地球環境局総務課研究調査室
  代 表: 03-3581-3351
直 通: 03-5521-8247
室 長: 小野 洋 (内線6730)
補 佐: 清野 達男(内線6731)
係 長: 橋本 徹 (内線6735)
(独)宇宙航空研究開発機構広報部 報道グループ
  報道グループ長: 大嶋  龍男(050-3362-2673)
主 任: 萩原  明早香 (050-3362-5102)


環境省、(独)国立環境研究所及び(独)宇宙航空研究開発機構は、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT(ゴーサット)、平成21年1月23日打上げ)プロジェクトを推進していますが、今般「いぶき」が観測する輝度スペクトルデータ及び画像データの初期校正作業が完了したのに伴い、当該データの一般提供を開始します。

温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)は、今般温室効果ガス観測センサにより観測される輝度スペクトルデータ及び雲・エアロソルセンサによる地球観測画像データの初期校正作業が完了したことに伴い、当該データの一般提供を開始します。  今後は、さらにデータの校正・検証作業等を進め、平成22年1月末を目処に、二酸化炭素、メタン濃度データの一般提供を開始する予定です。

【提供方法】

(独)国立環境研究所のデータ提供に関するホームページ(http://data.gosat.nies.go.jp/)よりユーザ登録を行えば、希望する地点、日時のデータをダウンロードいただけます。

※輝度スペクトルデータについては、当面は10月29日以降の観測データの提供となります。

※雲・エアロソルセンサの地球観測画像データについては、初期校正作業は完了しており、準備が整い次第一般提供を開始します(11月中旬を予定)。

【本件問い合わせ先】

(温室効果ガス観測センサのデータについて)
(独)宇宙航空研究開発機構 宇宙利用ミッション本部 地球観測研究センター
電話: 050-3362-3064

(雲・エアロソルセンサのデータについて)
(独)国立環境研究所 地球環境研究センター GOSATプロジェクトオフィス
電話: 029-850-2966 

(添付資料) 「いぶき」一般提供開始データについて

「いぶき」搭載の主センサである温室効果ガス観測センサ(TANSO-FTS)にて取得した輝度スペクトルデータ(レベル1Bプロダクト)の初期校正作業が完了し、それに対応した輝度スペクトル注1) (レベル1Bプロダクト)の一般ユーザへの提供の準備が整ったため、同データの提供を10月30日より開始致します。

データの取得は、利用希望者が国立環境研究所のウェブサイトにおいてユーザ登録を行ったうえで、データベースの中から希望する地点、日時のデータを検索・選択の上ダウンロードする方法により可能となります。当面は10月29日以降の観測データの提供となります。ユーザ登録には電子メールアドレスが必要です。

データ提供に関するホームページ:http://data.gosat.nies.go.jp/

「いぶき」搭載の副センサである雲・エアロソルセンサ(TANSO-CAI)の地球観測画像データ注2)(レベル1B及びレベル1B+プロダクト)についても初期校正は完了しており、準備が整い次第、一般への提供を開始する予定です。時期は11月中旬を見込んでいます。

(注1) 太陽の地球表面での反射光または大気からの熱放射を光の波長別に分光して測定した光のエネルギーの様子。大気中の気体は特定の波長での吸収を示し、その強さなどから気体の存在量の情報が求められる。

(注2) CCDカメラで捉えた地球方向の画像データ。地理情報のほかに雲の被覆状況などがわかる。

(1) TANSO-FTSのレベル1Bプロダクト(輝度スペクトル)の例
提供を開始するTANSO-FTSのレベル1Bデータは、表1に示すバンド1〜4のスペクトルで構成されています。バンド1〜3については、偏光別にそれぞれP偏光とS偏光のスペクトルデータ注3)が提供されます。

表1 TANSO-FTS の仕様

表1 TANSO-FTS の仕様

(注3) 光には波長(色)、強度(明るさ)の他に「偏光」という性質があり、「いぶき」では、直交するPとS成分の偏光情報を取得する。偏光は観測時の地表面、大気中のエアロソルや薄い雲の状態によって変化するため、それを解析に利用する。

図1は2009年4月23日に茨城県つくば市上空で観測されたTANSO-FTSのバンド1〜4の輝度スペクトル(バンド1〜3は偏光別のスペクトル)です。横軸が波長(ミクロン)、縦軸が分光放射輝度(波長分別された光の強さ)を表します。各バンドで観測対象ガスの吸収が測定されていることがわかります。

図1 輝度スペクトルの例(2009年4月23日のつくば地点の観測スペクトル)

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図1 輝度スペクトルの例(2009年4月23日のつくば地点の観測スペクトル)

なお、これらの輝度スペクトルデータを解析することにより、二酸化炭素とメタンの濃度が導き出されます。これらのデータが蓄積されることにより、図2(2009年9月1ヶ月間の「いぶき」観測データから求められた二酸化炭素のカラム平均濃度注4)(未検証)の例)や、図3(2009年9月1ヶ月間の「いぶき」観測データから求められたメタンのカラム平均濃度(未検証)の例)のような全球分布が得られます。なお、当結果は未検証の解析結果であるため、推定された個々のカラム平均濃度値に解釈を与えることは適切ではありません。このような濃度データについては、平成22年1月末を目処に、初期検証作業とそれに基づくデータ処理手法の調整の後に、一般提供を開始する予定です。

図2 「いぶき」観測データから求められた二酸化炭素のカラム平均濃度(未検証)の例(2009年9月1ヶ月間)

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図2 「いぶき」観測データから求められた二酸化炭素のカラム平均濃度(未検証)の例(2009年9月1ヶ月間)

図3 「いぶき」観測データから求められたメタンのカラム平均濃度(未検証)の例(2009年9月1ヶ月間)

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図3 「いぶき」観測データから求められたメタンのカラム平均濃度(未検証)の例(2009年9月1ヶ月間)

(注4) カラム平均濃度:地表面だけでなく、上空までの鉛直の柱(カラム)の中にある空気全量に対する対象気体量の平均濃度。

(2) TANSO-CAIのレベル1B画像例
TANSO-CAI レベル1Bプロダクトは、表2に示すTANSO-CAIのバンド1〜4の1ストリップ注5)のデータ(GOSATの軌道に沿ったほぼ半周回分のデータ)をフレーム注6)に分割し、バンド3のセンサ座標に合わせて内挿を行わずにバンド間の位置合わせ(レジストレーション)を施したもので、4つのバンドから構成されます。図4は、日本付近のサンプル画像で、バンド1,2,3にそれぞれ青、赤、緑を割り当てたものです。

表2 TANSO-CAI の仕様

表2 TANSO-CAI の仕様

(注5) ストリップ: 衛星の軌道に沿った日照部の幅約 1000 kmの一連のデータ。

(注6) フレーム:昼夜を通した衛星の地球1周分の1ストリップを60に分割した単位。日照部には30または31フレームのデータが存在する。レベル1B及びレベル1B+プロダクトの提供単位である。

図4 TANSO-CAIレベル1B画像の例(2009年4月23日の関東付近,緑:バンド3,赤:バンド2,青:バンド1のデータを当てはめた合成画像)

図4 TANSO-CAIレベル1B画像の例(2009年4月23日の関東付近,緑:バンド3,赤:バンド2,青:バンド1のデータを当てはめた合成画像)

TANSO-CAI レベル1B+プロダクトは、1ストリップのデータ(GOSATの軌道に沿ったほぼ半周回分のデータ)を、レベル1Bと同様にフレームに分割し、内挿を行って地図投影法に合わせ、バンド間の位置合わせ(レジストレーション)を施したものです。画像は、北が上になるように幾何的に変換されています。4つのバンドから構成されています。図5は日本付近のサンプル画像で、バンド1,2,3にそれぞれ青、赤、緑を割り当てたものです。

図5 TANSO-CAIレベル1B+画像の例(2009年4月23日の関東付近,緑:バンド3,赤:バンド2,青:バンド1のデータを当てはめた合成画像)

図5 TANSO-CAIレベル1B+画像の例(2009年4月23日の関東付近,緑:バンド3,赤:バンド2,青:バンド1のデータを当てはめた合成画像)