記者発表 2009年2月26日

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「環境GIS」ホームページ「東アジアの広域大気汚染マップ」サイトの公開について
〜黄砂、酸性雨など、東アジアの広域大気汚染情報をわかりやすく提供〜
(お知らせ)
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時発表 )

平成21年2月26日(木)
独立行政法人国立環境研究所
    環境情報センター長: 松本 公男  029-850-2340
  アジア自然共生研究グループ長: 中根 英昭  029-850-2491


国立環境研究所アジア自然共生研究グループは、アジア地域の大気汚染を観測とコンピューターシミュレーション予測の両面から研究してきました。

このたび、これまでの研究成果も踏まえ、国立環境研究所「環境GIS」ホームページ内に、「東アジアの広域大気汚染マップ」サイトを平成21年2月27日午後5時より開設し、アジア大陸からの黄砂の飛来や大気汚染物質の移流など、東アジア地域における予測と観測の結果を公開します。

予測については、「化学天気予報システム(CFORS)」、「大気汚染予測システム」を利用し、東アジア地域における黄砂や大気汚染物質の当日と翌日の2日分の濃度予測結果を提供します。また、観測については、日本、モンゴル、中国、韓国4カ国の17箇所に設置されたライダーによる観測結果、東アジア13カ国の酸性雨観測結果などの情報を提供します。

国立環境研究所「環境GIS」ホームページ( http://www-gis.nies.go.jp/ ) 内に新規に開設される「東アジアの広域大気汚染マップ」サイトでは、黄砂と大気汚染物質の濃度予測、ライダーによる黄砂等観測状況、東アジア酸性雨モニタリングネットワークによる酸性雨の観測結果、大気汚染物質の年間排出量の経年変化など、東アジア地域の大気汚染の過去と現在の状況がマップ上で視覚的にわかるコンテンツを提供します。

なお、本サイトは、「環境省黄砂飛来情報ページ」( http://soramame.taiki.go.jp/dss/kosa/ )と相互リンクを行い、環境省が提供する一般向けの黄砂情報を、より詳しく知りたい方のために研究情報を提供するものです。

「東アジアの広域大気汚染マップ」サイト トップページ

「東アジアの広域大気汚染マップ」サイト トップページ

黄砂 (左上) と 大気汚染物質の濃度予測分布図の表示例
(硫酸塩エアロゾル(右上)、人為起源の微小粒子(左下)、オゾン(右下))

黄砂 (左上) と 大気汚染物質の濃度予測分布図の表示例
(硫酸塩エアロゾル(右上)、人為起源の微小粒子(左下)、オゾン(右下))

(東アジアの地図上に濃度分布が視覚的に表示される。3時間ごとの濃度変化を動画表示)

ライダー装置による観測結果の表示例 (黄砂(オレンジ色)と非黄砂(大気汚染物質)(青色))
(右図:地図上のグラフをクリックした時の拡大表示例)

ライダー装置による観測結果の表示例 
(黄砂(オレンジ色)と非黄砂(大気汚染物質)(青色))
(右図:地図上のグラフをクリックした時の拡大表示例)

●新たに閲覧可能になる主な情報
(1) 黄砂と大気汚染物質(硫酸塩エアロゾル、人為起源の微小粒子、オゾン)の濃度予測分布図
当日3時から翌日24時までの3時間おきの予測結果を公開
(2) 黄砂の高度別濃度予測分布図
当日と翌日の3時間おきの地上及び高度1、3、5kmの予測結果を公開
(3) ライダーによる黄砂、非黄砂(大気汚染物質)の観測状況
各観測地点の観測結果を1時間に1回更新、過去5日分を公開
(4) 東アジア酸性雨モニタリングネットワークによる酸性雨の観測結果
各観測地点の2000年以降の年平均値を公開
(5) アジア地域排出源インベントリ(REAS)による大気汚染物質の年間排出量
1980年以降及び将来(2020年)のメッシュ毎の年間推定排出量を公開
●主な特徴
(1) 東アジアの大気汚染について、過去からの推移、現状、将来予測がわかります。
(2) これまで黄砂、酸性雨、大気汚染など、ばらばらに提供されていた情報をまとめることにより、東アジアの大気汚染物質の長距離輸送の流れが「見える」ようになりました。
(3) 刻々とダイナミックに変化する東アジアの大気汚染の広がりの状況が視覚的に理解できます。
●予測システム
それぞれの大気汚染物質の特性をふまえ、2つの予測システムを用いて濃度予測しています。複雑な反応計算の必要がない黄砂、硫酸塩エアロゾルは「化学天気予報システム(CFORS)」を使用し、複雑な光化学反応によって生成されるオゾンや人為起源の微小粒子については「大気汚染予測システム」を使用しています。
2つの予測システムは、それぞれ気象モデルと物質輸送反応モデルの2つの要素から構成されています。気象庁から提供される風、気温など数値予報データ(GPV:Grid Point Value)を基に、気象モデルで時空に細かい気象データを計算しつつ、大気汚染発生量データ(アジア地域排出源インベントリ(REAS)など)を用い、輸送反応モデルでメッシュ単位での大気汚染濃度を算出・予測しています。
「化学天気予報システム(CFORS)」は、比較的短い時間で様々な種類の粒子の濃度を予測できますが、大気中の反応はある程度簡略化されています。ただし、黄砂については、粒径分布を考慮して精緻に計算しています。一方、「大気汚染予測システム」は、大気中の詳細な反応を計算できますが、計算に長い時間がかかります。
●黄砂の観測体制
黄砂の観測には、国立環境研究所が開発したライダー装置を使用しています。 国内は、国立環境研究所等の研究機関と環境省が12か所にライダー装置を設置して観測を行っています。国外は、中国、韓国、モンゴルの関係機関と協力し、5か所に設置して観測データの共有化を図っています。
●東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)
EANETには、2008年現在13か国が参加しており、約50の観測地点において酸性雨モニタリングが行われています。(参加国:カンボジア,中国,インドネシア,日本,ラオス,マレーシア,モンゴル,フィリピン,韓国,ロシア,タイ,ベトナム,ミャンマー)
●「環境GIS」ホームページ(http://www-gis.nies.go.jp/)について
国立環境研究所は、環境の状況などを地図やグラフなどに表現して可視化し、わかりやすく提供するシステムを構築し、さまざまな環境調査・研究の成果を「環境GIS」ホームページとして、「国立環境研究所ホームページ」から公開しています。
○「環境GIS」ホームページの各サイトと主なデータマップ

「環境GIS」ホームページ 「環境GIS」ホームページには、環境調査・研究の種類ごとに調査結果を公開するサイトがあり、各種のデータマップを見ることができます。
(環境調査・研究)
  ・「大気汚染状況の常時監視結果」サイト
  ・「有害大気汚染物質マップ」サイト
  ・「全国自動車交通騒音マップ」サイト
  ・「公共用水域の水質測定結果」サイト
  ・「海洋環境モニタリングマップ」サイト
  ・「ダイオキシンマップ」サイト
  ・「大気汚染予測システム」サイト
(サイト横断検索)
  ・「測定地点マップ」サイト

【本件に関するお問い合せ】
東アジアの大気汚染研究について
(黄砂)
  環境研究基盤技術ラボラトリー
    環境分析化学研究室長  西川 雅高(029-850-2495)
  大気圏環境研究領域
    遠隔計測研究室長  杉本 伸夫(029-850-2459)
  アジア自然共生研究グループ
    アジア広域大気研究室  清水 厚 (029-850-2489)
(広域大気汚染)
  アジア自然共生研究グループ
    広域大気モデリング室長  大原 利眞(029-850-2718)
  大気圏環境研究領域
    大気物理研究室   菅田 誠治(029-850-2457)
ホームページによる情報提供について
  環境情報センター情報整備室
    室長      佐々木 寛壽
    地理情報専門職  宮下 七重
      電話:029−850−2342
      FAX :029−850−2566
      e-mail:gis@nies.go.jp(環境GISサイト問合せ窓口)
(注) 用語解説
○黄砂
中国・モンゴルの砂漠乾燥地帯の表層土壌が、強風によって大気中に舞い上がったもので、それが偏西風に乗り、特に3〜5月にかけて日本にもやってくる。日本に飛来する黄砂の最大発生地域はゴビ砂漠である。その色が黄土色であることから黄砂と呼ばれる。
○硫酸塩エアロゾル
工場や自動車などから排出される二酸化イオウが大気中で化合、吸着し、微小粉じん(エアロゾル)となったもの。粒径2.5μm以下の粉じんの主要構成粒子が硫酸塩エアロゾルである。火山性のものなど自然起源のものもあるが、人為汚染の割合を示す指標となる。
○人為起源の微小粒子
大気中に漂う粒子のうち、粒径2.5μm以下の小さなものを微小粒子状物質もしくはPM2.5と呼んでいる。これら微小粒子の多くは人為起源であり、ディーゼルエンジンや工場等での化石燃料の燃焼や、ガス状の大気汚染物質の反応による粒子への変換により生成される。
○オゾン
光化学スモッグ(光化学オキシダント)の主成分がオゾンであり、自動車排ガス中などに含まれる窒素酸化物と炭化水素が光化学反応を起こすことにより生成される。人体や植物に対して悪影響があり、濃度が高くなるほど影響が大きくなる。オゾンは地表付近では有害であるが、成層圏のオゾンは紫外線を遮断して地表の生物を保護している。
○ライダー装置
ライダーは、レーザー光を用いたレーダー装置。大気中に射出したレーザー光が、浮遊粒子状物質(エアロゾル)などに当たり、戻ってくる散乱光を受信することによって、エアロゾルの高度別濃度分布や大きさ、形状などを測定する装置。レーザーレーダーとも呼ばれる。