地球環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクト「脱温暖化2050プロジェクト」
成果発表のお知らせ 〜低炭素社会に向けた12の方策〜
(環境省記者クラブ、筑波研究学園都市記者会同時配布 )
平成20年5月22日(木) | |||
環境省地球環境局総務課研究調査室 代表:03−3581−3351 |
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室 長 | : | 塚本 直也(内線6730) | |
室長補佐 | : | 世一 良幸(内線6731) | |
室長補佐 | : | 松浦 安剛(内線6732) | |
係 員 | : | 田畑 桂(内線6732) | |
独立行政法人国立環境研究所(029-850-ダイヤルイン番号) | |||
地球環境研究センター長: 笹野 泰弘(2444) | |||
温暖化対策評価研究室長: 甲斐沼 美紀子(2422) | |||
温暖化対策評価研究室 主任研究員: 藤野 純一(2504) |

環境省の運営する競争的研究資金である地球環境研究総合推進費の戦略的研究「脱温暖化2050プロジェクト」は、2007年2月に(〜2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削減可能性検討〜)と題した中間報告を公表しました。このたびは、これに続く研究成果として、「低炭素社会に向けた12の方策」を公表します。
本報告は、中間報告の「我が国が、2050年までに主要な温室効果ガスであるCO2の排出量を1990年に比べて70%削減し、豊かで質の高い低炭素社会を構築することは可能である」との結論を受け、70%削減を達成するために取るべき12の方策を提案するものです。
本報告は、本研究プロジェクトの中核である「2050日本低炭素社会」シナリオチーム」(国立環境研究所・京都大学・立命館大学・みずほ情報総研(株))が中心となってとりまとめました。

1.プロジェクトの概要
(1)プロジェクト名:「脱温暖化社会に向けた中長期的政策オプションの多面的かつ総合的な評価・予測・立案手法の確立に関する総合研究プロジェクト」(脱温暖化2050プロジェクト)
(2)研究期間 前期:2004〜2006年度、後期:2007〜2008年度
(3)研究プロジェクトリーダー:(独)国立環境研究所 特別客員研究員 西岡秀三
(4)研究参加機関
(独)国立環境研究所、(独)産業技術総合研究所、(独)森林総合研究所、(財)地球環境戦略研究機関、(社)日本エネルギー学会、京都大学、神戸大学、名古屋大学、東京工業大学、東京大学、信州大学、文教大学、東京海洋大学、東京理科大学、立命館大学、早稲田大学、慶応義塾大学、日本工業大学、国際大学、東洋大学、日本電信電話(株)、みずほ情報総研(株)、(株)三菱総合研究所、(株)ジェイ・ケイ・エル、(株)日建設計総合研究所から約60名の研究者が参画
(5)研究予算 2008年度:約2.5億円 (2004〜2008年度予算額累積:10.3億円)
(6)研究の概要
脱温暖化2050研究プロジェクトは、地球環境研究総合推進費(S-3)により、国立環境研究所が中心となって2004年度から実施しており、日本における中長期脱温暖化対策シナリオを構築するために、技術・社会イノベーション統合研究を行い、2050年までを見越した日本の温室効果ガス削減のシナリオとそれに至る環境政策の方向性を提示するものである。
(http://2050.nies.go.jp/index.html)
2.「低炭素社会に向けた12の方策」の概要
「2050日本低炭素社会」シナリオチームは、2007年2月に「2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削減可能性検討」報告書を作成し、日本を対象に2050年に想定されるサービス需要を満足しながら、主要な温室効果ガスであるCO2を1990年に比べて70%削減する技術的なポテンシャルが存在することを明らかにした。
本報告は、70%削減シナリオ研究から得られた分析結果をもとに、どの時期に、どのような手順で、どのような技術や社会システム変革を導入すればよいのか、それを支援する政策にはどのようなものがあるかを、整合性を持った12の方策としてまとめ、対策モデルと組み合わせてそれぞれの方策の削減効果を定量的に把握したものである。特にエネルギー需要側での削減努力が重要であり、2000年比の削減分担を、おおむね産業13〜15%、民生21〜24%、運輸19〜20%、エネルギー転換35〜41%と算出した。
12の方策は、モデル研究から得られた効果的削減が可能な分野を主な対象として、その分野で取りうる対策とそれを推進する政策を組み合わせ、有識者の意見を加えて、構成したものである。すべての方策を組み合わせることで、70%削減が可能となる。
●低炭素社会に向けた12の方策●
方策の名称 | 説 明 | |
1 | 快適さを逃さない住まいとオフィス | 建物の構造を工夫することで光を取り込み暖房・冷房の熱を逃がさない建築物の設計・普及 |
2 | トップランナー機器をレンタルする暮らし | レンタルなどで高効率機器の初期費用負担を軽減しモノ離れしたサービス提供を推進 |
3 | 安心でおいしい旬産旬消型農業 | 露地で栽培された農産物など旬のものを食べる生活をサポートすることで農業経営が低炭素化 |
4 | 森林と共生できる暮らし | 建築物や家具・建具などへの木材積極的利用、吸収源確保、長期林業政策で林業ビジネス進展 |
5 | 人と地球に責任を持つ産業・ビジネス | 消費者の欲しい低炭素型製品・サービスの開発・販売で持続可能な企業経営を行う |
6 | 滑らかで無駄のないロジスティックス | SCM*1で無駄な生産や在庫を削減し、産業で作られたサービスを効率的に届ける |
7 | 歩いて暮らせる街づくり | 商業施設や仕事場に徒歩・自転車・公共交通機関で行きやすい街づくり |
8 | カーボンミニマム系統電力 | 再生可能エネ、原子力、CCS*2併設火力発電所からの低炭素な電気を、電力系統を介して供給 |
9 | 太陽と風の地産地消 | 太陽エネルギー、風力、地熱、バイオマスなどの地域エネルギーを最大限に活用 |
10 | 次世代エネルギー供給 | 水素・バイオ燃料に関する研究開発の推進と供給体制の確立 |
11 | 「見える化」で賢い選択 | CO2排出量などを「見える化」して、消費者の経済合理的な低炭素商品選択をサポートする |
12 | 低炭素社会の担い手づくり | 低炭素社会を設計する・実現させる・支える人づくり |
*1 SCM(Supply Chain Management):材料の供給者、製造者、卸売、小売、顧客を結ぶ供給連鎖管理
*2 CCS:二酸化炭素隔離貯留 Carbon dioxide Capture and Storage