スターン・レビュー「気候変動の経済学」に対するコメント(お知らせ)
平成19年2月16日(金) | ||||
独立行政法人国立環境研究所(029-850-ダイヤルイン番号) | ||||
地球環境研究センター長 | : | 笹野 泰弘 | (2444) | |
温暖化対策評価研究室長 | : | 甲斐沼美紀子 | (2422) | |
温暖化対策評価研究室 主任研究員 | : | 藤野 純一 | (2504) |
国立環境研究所とアジア太平洋統合評価モデル(
(注1)アジア太平洋統合評価モデル(AIM: Asia-Pacific Integrated Modeling)チーム
国立環境研究所の温暖化影響・対策研究に携わる研究者を中心とする、アジア太平洋地域における環境問題を考慮した、地球温暖化影響・対策評価のためのシミュレーションモデルを開発している研究チーム。
(注2)スターン・レビュー
世界銀行の元チーフ・エコノミストで、現在は英国政府気候変動・開発における経済担当政府特別顧問であるニコラス・スターン博士が取りまとめ、2006年10月30日に、英国首相と財務大臣に報告されました。
なお、スターン・レビュー報告書のExecutive Summary(概要)部分は、環境省と駐日英国大使館の企画・監修のもと、国立環境研究所とAIMチームの研究者グループが翻訳しており、国立環境研究所のホームページ
(http://www-iam.nies.go.jp/aim/stern/SternReviewES(JP).pdf)
でご覧いただけます。
1.背 景
国立環境研究所とAIMチームの研究者グループは、環境省と英国環境・食糧・地域開発省が目下進めている日英共同研究「低炭素社会の実現に向けた脱温暖化2050プロジェクト」に参画していることから、2005年のスターン・レビュー計画当初から英国から協力を求められ、AIMチームの研究結果の提供も行いました。報告書の完成を受けて、報告書全文のチェックと評価を関係者で行い、このたび、その結果をAIMのホームページに公開しました
(http://www-iam.nies.go.jp/aim/stern/200702-AIM_Comment_on_Stern_Review(JP).pdf)。
2.評価結果のポイント
スターン・レビューの政策提案に向けた重要な結論は、
1) 気候変動の被害は、長期にわたり甚大である。
2) 気候変動を回避するための対策コストは高くない。
3) 早期の対応は、経済的に有利である。
という点です。これらの分析は、既往研究から大きくはずれない範囲であることを確認しました。また、持続可能性を十分考慮すると、温暖化により影響を受ける自然システムおよびそれに依存して生活する人間システムは、より長期の視点で見ていく必要がある、と主張していることがわかりました。経済学の学問としての限界を熟知するスターン博士が、綿密なレビューに基づき、敢えてそのような積極的な評価を行った点は、大いに評価しなければなりません。
別添資料: Comments on the Stern Reviewスターン・レビューに対するコメント
http://www-iam.nies.go.jp/aim/stern/200702-AIM_Comment_on_Stern_Review(JP).pdf