記者発表 2007年2月15日

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地球環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクト
「脱温暖化2050プロジェクト」成果発表のお知らせ
〜2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削減可能性検討〜
(環境省記者クラブ、筑波研究学園都市記者会同時発表)

平成19年2月15日(木)
環境省地球環境局総務課研究調査室(直通03-5521-8247)
   室      長 塚本  直也 (内線6730)
   室長補佐 佐藤    保 (内線6732)
   係      員 千葉  康人 (内線6732)
独立行政法人国立環境研究所(029-850-ダイアルイン番号)
   地球環境研究センター長 笹野  泰弘 (2444)
   温暖化対策評価研究室長 甲斐沼美紀子 (2422)
   温暖化対策評価研究室主任研究員 藤野  純一 (2504)


チームマイナス6%ロゴ

環境省の運営する競争的研究資金である地球環境研究総合推進費の戦略的研究プロジェクトとして、2004年にスタートした「脱温暖化2050プロジェクト」は今年度で前期研究期間を終了することから、これまでの研究成果を本日、別添の成果報告として公表します。

本成果報告は「我が国が、2050年までに主要な温室効果ガスであるCO2を70%削減し、豊かで質の高い低炭素社会を構築することは可能である」と結論づけています。

「脱温暖化2050プロジェクト」は、技術イノベーションと住みやすい街づくり等社会そのものを変革するような社会イノベーションを織り込んだ2050年の望ましい将来を想定し、それを実現するための道筋を考える、いわゆる「バックキャスティング」に基づいたシナリオアプローチを採用し、まず、2050年における我が国の削減ポテンシャルを推測しています。

本報告では、本研究プロジェクトの中核である「2050日本低炭素社会プロジェクトチーム」(国立環境研究所・京都大学・立命館大学・東京工業大学・みずほ情報総研(株))が中心となってとりまとめました。


1.プロジェクトの概要

(1) プロジェクト名:「脱温暖化社会に向けた中長期的政策オプションの多面的かつ総合的な評価・予測・立案手法の確立に関する総合研究プロジェクト」(脱温暖化2050プロジェクト)

(2) 研究期間  前期:2004〜2006年度、後期:2007〜2008年度

(3) 研究プロジェクトリーダー:国立環境研究所  理事  西岡秀三

(4) 研究参加機関
国立環境研究所、京都大学、立命館大学、滋賀大学、文教大学、神戸大学、東京工業大学、青山学院大学、東京大学、(株)日建設計、成蹊大学、東京理科大学、日本電気(株)、富士通(株)、日本電信電話(株)、産業技術総合研究所、筑波大学、早稲田大学、名古屋大学から約60名の研究者が参画

(5) 研究予算  2006年度:約2.2億円  (2004〜2006年度予算額累積:5.2億円)

(6) 研究の概要
  脱温暖化2050プロジェクトは、地球環境研究総合推進費により、国立環境研究所が中心となって2004年度から実施。日本における中長期脱温暖化対策シナリオを構築するために、技術・社会イノベーション統合研究を行い、2050年までを見越した日本の温室効果ガス削減のシナリオとそれに至る環境政策の方向性を提示するもの。技術・制度・社会システム等を横断した整合性のある実現性の高い中長期脱温暖化政策策定に貢献。また、経済発展と両立した低炭素社会に到る道筋を提言することで研究者以外の人々の低炭素社会政策への関心を高め、社会システム・ライフスタイルの改善に役立つよう情報を発信する。
http://2050.nies.go.jp/index.html

2.中間報告の要点

背景:

・  気候の安定のためには、世界の温室効果ガス排出を2050年までに現在の50%以下にする必要がある。

・  一人あたり排出量の大きい先進国は、大幅な削減が求められうる。日本は、2050年までに1990年に比べて60〜80%の削減が必要とみられる。

・  これを踏まえて、本研究では、日本での主要な温室効果ガスであるCO2を2050年の時点で、1990年比で70%削減する可能性とそのコストについて、エネルギーの需要・供給面から検討。

結論:

<削減可能性とそのコスト>

・  CO2排出量70%削減は、エネルギー需要の40〜45%削減とエネルギー供給の低炭素化によって、可能となる。需要側のエネルギー削減は、一部の部門でエネルギー需要増があるものの、人口減や合理的なエネルギー利用によるエネルギー需要減、需要側でのエネルギー効率改善で可能となる。

・  エネルギー供給側では、低炭素エネルギー源の適切な選択(炭素隔離貯留も一部考慮)とエネルギー効率の改善の組み合わせで、CO2排出量70%削減が図られる。

・  2050年CO2排出量70%削減に関わる技術の直接費用は、年間約6兆7千億円〜9兆8千億円である。これは想定される2050年のGDPの約1%程度と見られる。なお、必ずしも温暖化対策が主目的ではない、国際競争力強化、将来の安全・安心で住みやすい街づくり、エネルギー安全保障等のために実施されるインフラ投資等の対策コストは含んでいない。

<分野別対策>

各部門でのエネルギー需要量削減率(2000年比)は以下のように見積もられる。

・  産業部門:構造転換と省エネルギー技術導入等で20〜40%。

・  運輸旅客部門:適切な国土利用、エネルギー効率、炭素強度改善等で80%。

・  運輸貨物部門:輸送システムの効率化、輸送機器のエネルギー効率改善等で60〜70%。

・  家庭部門:利便性の高い居住空間と省エネルギー性能が両立した住宅への誘導で50%。

・  業務部門:快適なサービス空間/働きやすいオフィスと省エネ機器の効率改善で40%。

<長期政策の必要性>

・  今のままの高炭素排出インフラへの投資を継続しないために、早期に低炭素社会のイメージを共有し、転換に時間のかかる国土設計、都市構造、建築物、産業構造、技術開発等に関する長期戦略を立て、計画的に技術・社会イノベーションを実現させる必要がある。

添付資料

・   別添資料1  「2050日本低炭素社会シナリオ: 温室効果ガス70%削減可能性検討」の背景解説 [110KB]

・   別添資料2  「2050日本低炭素社会シナリオ: 温室効果ガス70%削減可能性検討」 [659KB]

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