「自動車排出ガスに起因するナノ粒子の生体影響」に関する共同研究の実施について
(お知らせ:環境省記者クラブ、筑波学園記者クラブ及び(社)日本自動車工業会同時発表

平成15年5月20日(火)
独立行政法人国立環境研究所
統括研究官 森田昌敏 (029-850-2332)
担 当
新田裕史 (029-850-2497)


 独立行政法人国立環境研究所と社団法人日本自動車工業会は、このたび、「自動車排出ガスに起因するナノ粒子の生体影響」に関する共同研究を実施することに合意した。
 本共同研究の目的は、ディーゼル車をはじめとする自動車の排出ガスに起因するナノ粒子の生体への影響を科学的に評価することであり、国民の健康を守る行政の施策に科学的基礎を与えるとともに、より一層の環境保全のための自動車エンジン開発の方向性検討に資するものである。共同研究の期間は平成15年度から5カ年間を予定しており、研究計画や成果については広く公表していくこととしている。

 1.共同研究実施の背景

 ナノ粒子は、これまで健康影響評価の対象とされてきた0.1〜数ミクロンの粒径の粒子とは異なる体内動態が考えられ、健康への影響が懸念されている。

 一方、自動車排出ガス中のナノ粒子の生成機構、計測技術、環境動態についてその多くは明らかとなっておらず、生体影響研究にあたっては、自動車工学をはじめとする多分野の共同により研究を実施することが必要となっている。

 2.共同研究の概要

 本共同研究の実施期間は平成15年度からの5ヶ年の予定である。共同研究においては、自動車排出ガスに起因する粒径が数十ナノメートル以下の粒子を対象とするものとして、その生体影響の解明に取り組む。

 ナノ粒子の生体影響の評価に当たっては、ナノ粒子の性質、分析法、発生、動態、曝露、毒性、人への影響を総合的に考慮する必要がある。このため、本共同研究においては、ナノ粒子及びその凝集体について、広範な研究を視野に入れて、他の機関や研究プログラム(JCAP等*1)における取り組みを勘案しつつ必要な研究を実施する。具体的には、両者が実施する研究の中で、両者の所有するデータ・知見等の情報交換、企画・計画の共有、共同研究グループによる研究の推進、ワークショップ等会議の共同運営等の研究活動を行う。

 研究計画および成果は、一般に公表するとともに、必要に応じて第三者の学識経験者等からなる助言委員会を設置することとしている。

 3.共同研究への参加予定機関等

 独立行政法人国立環境研究所、社団法人日本自動車工業会、財団法人日本自動車研究所、ほか

 4. 国立環境研究所の取り組み

 当研究所においては、ナノ粒子生体影響研究のための動物実験施設を新たに整備し、環境省とも連携して共同研究に取り組む予定である。


 *社団法人日本自動車工業会の連絡先:環境統括部 浅川(tel:03-5219-6657)

*1;JCAPとはJapan Clean Air Programの略。経済産業省の補助により大気環境改善のための自動車業界と石油業界の共同研究プログラムであり、(財)石油産業活性化センター(PEC)が実施している事業である。



ナノ粒子生体影響研究のフレームワーク