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日本海の海洋構造及び生態系への温暖化影響把握を目的とする長期観測網の構築(令和 5年度)
Observational platform construction for understanding of warming impact to oceanographic structure and ecosystem in the Japan Sea

研究課題コード
2125BB001
開始/終了年度
2021~2025年
キーワード(日本語)
日本海,温暖化影響,海洋構造,海洋生態系
キーワード(英語)
Japan Sea,warming impact,oceanic structure,oceanic ecosystem

研究概要

日本海は、熱塩循環のタイムスケールがおよそ100 年と短く、かつ小規模ではあるものの外洋に特徴的な様々な海洋構造が凝縮された海域である。このため、他の大洋において将来的に生じると予測される温暖化影響が比較的早期に顕れ始めると考えられている。例えば、過去100 年の我が国周辺の海面水温の上昇は約1℃であるが、日本海北部域は1.7℃に達すると報告されている。また、深層における溶存酸素濃度減少が過去数十年に亘って顕著に続いていること、その原因は冬季における表層水の深海への沈み込み規模の縮小(すなわち温暖化による熱塩循環の抑制)であること、さらに、仮に表層水の沈み込みが停止すると100 年以内に日本海底層が無酸素化する可能性があるなど、温暖化による海洋構造への甚大な影響が検知され始めている。したがって、日本海は、我が国周辺海域における温暖化影響の監視対象の中で極めて重要である。さらに、日本海を循環時間スケールの短い「ミニチュア大洋」として捉えれば、その海洋環境への影響の長期的な監視は日本海における影響把捉のみならず、他の大洋における温暖化影響を予測していくための有益な知見となりうる。本研究では全球海洋の中でも温暖化に対して鋭敏な応答を示すとされる日本海を対象として、海洋構造の変化及びそれに連動した海洋生態系の変化を検出するための長期観測網を構築する。長期観測網では、北海道大学と長崎大学の練習船の協力により、流向流速計及び溶存酸素計を深海に長期係留する。また、海水循環の化学トレーサー、CO2 関連化学種,栄養塩類等の断面観測を行う。さらに、両練習船に表層pCO2 及びpH 計測システムを常設し、海洋表層の炭素循環の時空間変動を密に観測する。過去の観測データと新たな観測データを統合解析することで、我が国周辺海域における温暖化影響の早期検出を行うとともに、全球海洋への影響予測に資する知見を得る。

研究の性格

  • 主たるもの:モニタリング・研究基盤整備
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

(1)日本海の深度2500m 超の3つの海盆のうち日本の排他的経済水域に当たる日本海盆及び大和海盆の深度1000m、1500m、2500m に所有の流向流速計を係留して深海測流を実施する。係留作業はおしょろ丸及び長崎丸の航海を利用して設置・回収を繰り返すこととする。得られる1年分ずつの結果を過去の断片的な観測データと比較し、流れの変化を逐一確認する。これと並行して表層〜海底直上での海水特性(水温・塩分)に関する現場観測を行い、深海での密度場と流速場の関連について解析を進める。また、化学トレーサーの断面観測を実施して地球化学的側面からも海洋構造の変化をモニタリングする。(2)(1)で溶存酸素濃度の減少傾向を長期的に把握するとともに物理量の変化との関係性を把握した結果を用いて、上記のような溶存酸素濃度の減少傾向を長期的な視点で評価する。実習航海では表層〜海底直上での溶存酸素濃度の高精度分析を担当し、温暖化の進行により底層へ輸送されなくなった酸素の移行挙動、すなわち全水柱における溶存酸素量の存在度を把握することで、海洋構造の変化がもたらす物質循環の変化の指標として利用する。そして、日本海の観測定点における栄養塩の精密測定と過去データの品質管理を実施して最近数十年間での全水柱における変化を検出し、溶存酸素量の存在度などとともに解析を進めることから、日本海の栄養塩循環の変動要因(温暖化のほか、大陸からの窒素降下物の増加など)を長期的に明らかにする。(3)pCO2 とpH の精密データが取得できれば、炭酸系の解離常数を用いて同一海水の全炭酸濃度とアルカリ度を算出できるため、練習船航行海域表層のCO2 関連化学種を長期的にモニタリングすることが可能となる実習航海では表層〜海底直上での全炭酸、pH、アルカリ度などのCO2 関連化学種の断面観測を実施し、表層と断面のデータ統合により、温暖化に伴う炭素循環の変化や海洋酸性化の進行度を海洋断面で時空間的に捉える。

今年度の研究概要

(1)日本海盆及び大和海盆に流向流速計を係留して深海測流を継続する。表層〜海底直上での海水特性や化学トレーサーの断面観測を継続し、深海における海洋構造の変化をモニタリングする。(2)表層〜海底直上での溶存酸素及び栄養塩濃度の断面観測を継続してデータ蓄積を図る。歴史的資料をもとにした日本海全域の溶存酸素及び栄養塩の長期変動解析を継続する。(3)海面のpCO2及びpHの連続測定を継続するとともに、表層〜海底直上での全炭酸、pH、アルカリ度などのCO2関連化学種の断面観測を実施してデータ蓄積を図り、温暖化に伴う炭素循環の変化や海洋酸性化の進行度の解析を開始する。

課題代表者

荒巻 能史

  • 地球システム領域
    炭素循環研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(地球環境科学)
  • 化学,地学,水産学
portrait

担当者