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生物多様性および人間社会を脅かす生態学的リスク要因の管理に関する研究(令和 5年度)
-Study on the management of ecological risk factors that threaten biodiversity and human society

研究課題コード
2125AA107
開始/終了年度
2021~2025年
キーワード(日本語)
外来生物,ヒアリ,農薬,ネオニコチノイド,感染症,新型コロナ,アルゼンチンアリ,重症熱性血小板減少症候群,ニホンミツバチ
キーワード(英語)
alien species,fire ant,pesticide,neonicotinoide,infectious disease ,Covid-19,Argentine ant,SFTS,Apis cerana

研究概要

-生物多様性および人間社会に対して有害な影響を与える環境リスク要因として侵略的外来生物、農薬などの合成化合物、および野生生物感染症に焦点を当て、リスクの分析・評価、防除手法の開発、および政策・法律・規制システムへの実装を目指すとともに広く普及啓発を図り、リスクに対する社会的レジリエンスを高める。これらの目標達成のために以下の研究を行う。
・侵略的外来生物の早期発見・早期防除システムの開発および社会的実装、侵入生物データベースの拡充・強化・国際化
・新規防除剤(農薬など)の生態リスク評価、リスク評価技術の高度化、政策・法律へのシステム実装、国際的影響評価
・人獣共通感染症にかかる情報収集・データベース化、大規模データ分析によるリスク予測、感染症拡大防止策の立案、人獣共通感染症研究拠点の構築
到達目標は以下の通りとする。
3年目
・ヒアリ・ツマアカスズメバチなど特定外来生物の早期発見システムの実装完備、定着個体群の確実な根絶システム確立、日中韓でのシステム共有。
・慢性毒性評価の農薬取締法への実装。ネオニコチノイド農薬の生態影響メカニズムの解明。
・鳥インフルエンザ、豚熱、SFTS分布拡大メカニズムの解明、防除システムの開発。感染症データベースの構築
5年目
・外来生物防除研究拠点の構築、日中韓連携防除システム構築
・農薬による生物多様性影響の実態解明、規制システムの強化、OECDへの提言
・感染症サーベイランス・システムの構築、感染症防除システムの構築、OIEへの提言

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

・【外来種防除】ヒアリをはじめとする非意図的外来生物の防除システムを国際検疫、国内水際検疫、国内防除、根絶確認の各ステップごとに開発し、環境省およびCBDに提供、国際連携強化とアジア対策拠点の構築を進める。具体的には日中韓で共通の侵略的外来生物ヒアリ・アルゼンチンアリ・ツマアカスズメバチ・クビアカツヤカミキリ・セアカゴケグモなどについて、分布情報・生態情報を共有し、侵入ルートの解明を行い、移送過程での防除手法・システムについて協議し、実装試験を行う。また国内の国際港湾においては効果的な検疫手法・モニタリング手法の開発を進め、国内65港湾において定期モニタリング体制を構築する。国内防除では、既に定着・分布拡大が進行しているヒアリ、ツマアカスズメバチをはじめとする特定外来生物に対する有効な防除手法の開発を推進し、定着現場に実装して防除を進める。防除の際に、地域レベルでのコミュニティにおける外来生物対策リテラシー向上および地域連携体制の強化を進めるための「対話を通した普及啓発」事業も重点的に進める。さらに防除効果の定量的評価、根絶確認のための数理モデルの高度化を図り、国内における特定外来生物根絶事例の増強に貢献する。これらの防除研究成果を含めて侵入生物データベースの強化・拡充をはかり、外来生物防除の研究拠点を構築する

・【農薬リスク管理】新規殺虫剤をはじめとする生物防除剤の慢性毒性評価、野生ハチ類影響評価、群集影響評価などリスク評価手法の高度化を図り、国内外の規制システム・法律に実装を進める。具体的には、室内毒性試験・メソコズム試験データに基づき、慢性影響評価の科学的意義を明らかにするとともに薬剤の種類ごとの急性毒性・慢性毒性の特性を整理し、慢性毒性試験法の開発を行う。ネオニコチノイド農薬による野生ハチ類に対する生態影響に関する国際的データ収集および整理を行い、影響実態の解明を行う。低濃度暴露によるハチ類の免疫機能に対する影響・作用メカニズムを調査し、ハチ類感染症との関係を解明する。地理的スケールでの農薬暴露データと昆虫群集データを収集して、時空間的動態を分析することにより農薬による群集影響評価を進める。

・【感染症対策】人獣共通感染症の国内サーベイランス強化するとともに、国内外における感染症発生・拡大リスクの予測、具体な防除システムの開発を行う。具体的には、現在国内で喫緊の課題とされる鳥インフルエンザ、豚熱、SFTSなどの感染症発生動態についてモニタリング・検査体制を強化して、政府・自治体への情報提供に貢献する。これらの感染症を含め、国内外で発生している感染症の時空間的動態データを収集し、今後の動態予測を図る。地球レベルでの生物多様性情報と感染症発生情報の統合を行い、土地開発データ、気候変動データ、人口移動データ、貿易(サプライチェーン)データなど環境・生物・社会・経済にかかる多面的パラメータに基づくビッグデータ分析を行い、地域レベル・世界レベルの感染症発生・分布拡大メカニズムを解明するとともに今後の発生・拡大シナリオを構想する。DNAデータに基づき宿主-病原体の共進化分析を行い、感染症の進化生態学的メカニズム(病原体の起源はなにか、どのようにホストスィッチが起こるのかなど)を解明し、感染症の生態学アカデミアを発展させる。感染拡大を防ぐ上で必要とされる生物多様性保全策、ゾーニングをはじめとする生息域管理、経済・社会システムの変容など具体な対策・政策を提言する。OIE日本事務局、森林総合研究所、国立感染症研究所、動物衛生研究所、酪農学園大学など人獣共通感染症関連の機関との連携を強化して、対策研究拠点を構築する。

今年度の研究概要

【外来種防除】2023年の外来生物法改正に向けて、ヒアリおよびそのほかの非意図的外来生物対策の強化を行う。特にヒアリに対しては、東京港における個体群動態を詳細に調査し、定着および分布拡大の実態把握を行う。伊丹市に侵入定着したアルゼンチンアリの防除連絡協議会を立ち上げ、今年度中に個体群密度および分布範囲の半減を目指す。九州に侵入したツマアカスズメバチについてトラップ調査を推進し、定着の実態把握を行う。これらの外来昆虫防除にあたって薬剤防除手法の高度化を製薬メーカーと共同で進め実装する。改正外来生物法の普及啓発を進める。

【農薬リスク管理】農薬リスク評価研究では、環境省が今後、推進予定の陸域生態影響評価システム導入に向けて、ハナバチ類に対する慢性影響の実態調査を進め、有効なリスク評価システムの開発を行う。ニホンミチバチを対象とした巣内農薬残留および生態影響のデータ収集を行い、統計的評価を進める。トンボ類を対象とした残留農薬による生態影響データをとりまとめ論文化を進める。得られたデータをもとに環境省農薬リスク管理政策の課題を検討し、環境省と共同で新規事業の立案を進める。

【感染症対策】野生鳥獣類の傷病個体を対象として、感染症病原体の網羅的解析をすすめ、野生生物集団における病原体多様性の把握を進める。北海道および南西諸島を対象として野生獣類および飼育動物におけるSARS-CoV2の感染実態および遺伝的変異のサーベイランスを進める。マダニ媒介感染症SFTSのリスク管理研究において、野生マダニ防除剤の実装試験を繰り返し、効果の評価を進める。マダニDNAデータ収集を継続し、地理的データと合わせてデータベース化するとともに、マダニの海外からの侵入、国内における移動、SFTSウイルス動態の関連について、国立感染症研究所・森林総合研究所と共同で分析を進める。南西諸島を中心としてカエルツボカビ菌の遺伝的多様性調査を進め、起源解析を行うとともに、菌の分離培養を検討する。ハナバチ類野生・飼育集団中における感染症病原体のサーベイランスを継続する。

外部との連携

農研機構、森林総合研究所、国立感染症研究所、岐阜大学、東京農工大学、産業技術総合研究所,
アース製薬株式会社、フマキラー株式会社

課題代表者

五箇 公一

  • 生物多様性領域
    生態リスク評価・対策研究室
  • 室長(研究)
  • 農学博士
  • 生物学,農学,化学
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