つくば市内における放射性物質及び放射線の測定
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1.高エネルギー加速器研究機構との協力による、大気中の放射性物質の測定
茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構と国立環境研究所が協力し、2011年3月15日(火)午後から、つくば市における空気中の放射性物質の種類と濃度の測定を実施しています。
国立環境研究所では、ハイボリュームエアサンプラという研究機器を使用し、同研究所敷地内で大気を採取しています。この機器には、粒子状物質を捕らえるための石英繊維フィルターと、ガス状物質を捕らえるための活性炭素繊維フィルターがあり、それらのフィルターで捕らえられた物質を、高エネルギー加速器研究機構で分析しています。
これまでに得られた測定結果は、高エネルギー加速器研究機構のホームページに公開されており、今後も新しいデータが追加されます。
両者は今後も協力して測定を継続し、正確なデータの公表に努めていきます。
大気の採取時間は1回あたり1~2日間(連続)、採取量は1気圧換算で850~1700m3程度です。
風により運ばれてくる物質の影響をとらえやすい、地表よりもやや高い場所を選定しました。
石英繊維フィルターは、上記の写真1で人が手を添えている部分にあります。実際には雨よけのふたを閉めて採取します。
活性炭素繊維フィルターは、機器内部にある円筒の中に装備されています。
大気は、機器上部から、石英繊維フィルター、活性炭素繊維フィルターの順に通過し、フィルターに大気中の物質が捕らえられます(写真2)。
■大気中を風で運ばれる放射性物質
発電所敷地内などごく近くでは、施設自身や爆発で生じたがれきからの放射線を受けるために高い放射線量が観測されています(原子力発電所施設周辺での測定データ)。一方、環境中で観測されている放射線は、施設から直接に届く放射線ではなく、施設から放出され、大気中を風で運ばれた放射性物質からの放射線です。野菜や水道水から検出されている放射能は、こうして各地に運ばれた放射性物質が地表に降下して直接葉に付着したり、植物体中に取り込まれたり、雨水とともに河川に流れこんだりしたものです。
■情報を読み解くために大切なこと
放射能は物質が放射線を出す能力を意味しますが、放射能漏れ、という場合には、放射能をもつ物質=放射性物質が施設外部に出たことを指します。発表されているデータを読み解くために放射線、放射能、放射性物質を区別することが大切です。
また、「1時間あたりの放射線量」(線量率)のデータは、医療検査などで「1回あたりに浴びる放射線量」と直接に比較するのではなく、それを浴びる時間をかけて足し合わせて(積算して)比較することが適切です(福島県内の積算線量データ)。また、環境中の放射性物質に由来して体の外から浴びる放射線(外部被ばく)と、呼吸や飲食によって体内にとりこまれた放射性物質から浴びる放射線(内部被ばく)の区別も大切です。
■内部被ばくの影響を考える上で、大気中の放射性物質を直接はかることは重要
今回、国立環境研究所がハイボリュームエアサンプラでの試料採取を行い、高エネルギー加速器研究機構が測定したデータは、大気中を漂っているガスや微粒子を採取し、そこに含まれる放射性物質の種類や放射能の強さを測定したものです。このように大気中の放射性物質を直接採取し、測定したデータは、内部被ばくの影響を検討する上で重要です。
一方、多くの機関による空間線量測定器を用いた測定データも大気中放射線として発表される場合がありますが、これには大気中を漂う放射性物質からの放射線だけでなく、地表などに付着した放射性物質からの放射線も含まれますので、意味が異なります。
2.つくば市教育施設の放射線測定への協力
2011年5月27日、国立環境研究所はつくば市の要請により市内132ヶ所の学校施設の放射線量測定に協力しました。この測定には国立環境研究所、高エネルギー加速器研究機構、産業技術総合研究所、筑波大学、物質・材料研究機構から13名の専門家が参加しました。
国立環境研究所では、放射線計測機器2台を貸し出すとともに職員2名を派遣しました。つくば市内の保育所、幼稚園、小中学校などを13グループに分け、校庭等の放射線量を測定しました。この測定結果は、つくば市のホームページで公表されています。
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