ここからページ本文です

2.循環型社会研究プログラム
(1) 近未来の資源循環システムと政策・マネジメント手法の設計・評価

研究の目的

資源枯渇や地球温暖化問題など、将来においてかなりの可能性をもって起こりうる地球環境の危機的な状況を前に、問題を回避あるいは緩和するための長期的なビジョンや転換戦略の提示が世界的に求められている。わが国においても、第三次環境基本計画を受けて超長期ビジョンづくりが行われ、脱温暖化の観点からは「脱温暖化2050」のプロジェクトが実施されている。循環型社会づくりにおいても、将来の循環型社会への方向性が議論され、第二次循環型社会形成推進基本計画が策定されたが、近未来に向けた具体的な道筋や対策の目標水準設定、目標達成の際の天然資源消費抑制や環境負荷低減の定量的な効果の予測については今後の喫緊の課題である。

そこで本中核研究プロジェクトでは、近未来における循環型社会の形成を目指し,日本社会がどのような方向に行っても,持続可能な資源利用と廃棄物管理が達成された循環型社会のビジョンと必要な対策パッケージを提示することを目的とする。具体的には,(1)10〜20年後の社会条件の変化(社会シナリオ)との因果関係から循環資源・廃棄物の物質フローの変化を予測して,資源循環の指標群や定量的な目標の設定のもとに,それを達成するための循環型社会ビジョンを提示する。(2)地域から国レベルの具体的な技術システムと政策・マネジメント手法を含む社会経済システムに関する具体的な対策を検討し,その実現可能性と効果を評価することによって,循環型社会ビジョン実現のための対策パッケージを示す。

平成21年度の実施概要

サブテーマ(1) 物質フローモデルに基づく資源利用・廃棄物等発生の将来予測と近未来ビジョンへの転換シナリオ評価

これまでに類型・リスト化してきた天然資源消費抑制や環境負荷低減につながる対策を、主として技術やシステムの変更に関わる対策とライフスタイルの変更に関わる対策とに分け、前者の対策を中心とするビジョンA、後者の対策を中心とするビジョンBとしてパッケージ化した。さらに、各種の社会変化や対策導入がもたらす製品・サービス需要への影響、天然資源消費量・環境負荷発生量への影響を推計するモデルを用いて、いくつかのベースラインシナリオと2つのビジョンにおける天然資源消費量、温室効果ガス排出量、廃棄物最終処分量を試算した。また、その結果を用いて、近未来の物質フローに大きな影響を与える社会変化や効果の高い対策の一次同定を行った。

サブテーマ(2) 近未来の循環型社会における技術システムの設計と評価

近未来の循環技術システムの提案を目指し、サブテーマ1で構築するモデルと連携しながら、より効果的な対策が求められている食品廃棄物、プラスチック、廃家電、および建設廃棄物を対象とした事例分析を行った。食品廃棄物については原料としての品質を考慮した排出区分を提案し、プラスチックについては現行より合理的な排出区分を提案し、各々の区分に応じた循環技術システムを設計・評価した。廃家電については廃棄物になる以前の製品の状況を、建設廃棄物については再生製品の状況を考慮して、各々の状況に応じた循環技術システムを設計・評価した。

サブテーマ(3)循環型社会の形成に資する政策手法・マネジメント手法の設計・開発と評価

資源回収ポイント制度の適用性等を検討し、その有効性と限界を明らかにすることとした。また、自治体ベンチマーキング手法に関連して、コミュニティレベルの優良活動事例についてその成功要因を探ることとした。トップダウン型の制度研究としては、3R政策の対象物選定のための資源、素材、製品のポジショニング解析を行い、その解析の方法論を検討した。また、責任分担に係る研究を進め、国外の研究者との議論を行った。さらに、3Rのなかでも取組が遅れているリデュース・リユースに着目して効果推計を行った。

研究予算

(実績額、単位:百万円)
中核PJ1:近未来の資源循環システムと政策・マネジメント手法の設計・評価
  平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 累計
運営交付金 46 46 47 41   180
受託費            
科学研究費 26 14 14 13   67
寄付金            
助成金            
総額 72 60 61 54   247

今後の研究展望

①異なる対策パッケージの典型例として構築した2つのビジョンが、想定されうる様々な近未来のシナリオのもとで、一定量の天然資源消費抑制と環境負荷低減を達成できるように、またそれぞれのビジョン内で不整合がないようにこれを再構成する。特に、廃棄物対策に関わるビジョンをより詳細に検討する。また、こうしたビジョンの検討にあわせて、天然資源消費および環境負荷排出を推計するモデルの改善、対策コストの定量化等を行う。

②①で提案した対策パッケージの精度を上げるべく、より詳細な地域と技術のデータを収集・整理し、国レベルのデータベース整備とモデル構築に還元する。それによって、国と地域で整合した政策提案を目指す。特に、廃棄物の循環利用に関する技術システム提案と政策提言を優先事項とし、効果的対策が求められる廃棄物を中心として、データ収集、対策シナリオの検討・提案、およびモデル分析を実施する。

③制度研究について、引き続きボトムアップ型とトップダウン型の研究を着実に行う。デポジット制度を含めた回収制度の知見をまとめるとともに、リデュース・リユース効果のケーススタディから、リデュース・リユース研究・施策の体系化を図りつつ、将来の3R施策ビジョンを提示する。

以上を総括し、将来の政策展望と具体的な対策パッケージが示せるような検討を行う。