ホーム > 研究紹介 > 研究計画・研究評価 > 外部研究評価 > 平成21年外部研究評価実施報告  > 胚様体を用いた発生分化毒性学に最適化したマトリックスの開発

ここからページ本文です

V 平成21年度新規特別研究の事前説明
3.胚様体を用いた発生分化毒性学に最適化したマトリックスの開発

1)研究の概要

ES細胞から作製した胚様体を、神経組織等に、効率良く分化誘導、機能成熟させるための細胞外マトリックスを開発する。この際、胚様体から遊走する細胞の分化誘導過程が、毒性研究に応用出来る様に、マトリックスを設計する。

[外部研究評価委員会事前配付資料抜粋]

研究目的  /  研究予算  /  研究内容

2)研究期間

平成21〜23年(3年間)

3)外部評価委員会の見解

(1)研究内容

[内容評価]

胚葉体、とくにヒトES細胞を用いた化学物質に関する発生毒性学の研究は、これまでの生物を用いた化学物質の影響評価をヒトレベルの問題として解明する上で極めて重要で、独創性のある研究成果が期待される。基底膜基質の開発も、環境研究で細胞レベルでの研究を推進するためには重要である。今後のリスク評価の質を向上させる上で、実施すべき内容と考えられる。

[提案、要望]

環境問題の解明・解決につながるかどうかは、これを利用した発生分化毒性試験法の開発がうまくいくかどうかに大きく依存する。その意味では、生体をどれだけミミックできているのか、陽性結果、陰性結果の両方についてのin vivo試験と本試験系での結果の一致性等が鍵を握る。また、研究のゴールを明確にしつつ、リソースは限定されているので、特定段階の研究に集約した方が良い。

[対処方針]

ES細胞から作成した胚様体を出発点として、in vivo を模倣した擬似基底膜基質を用いることで、より精緻な神経組織への分化・成熟培養系を開発し、発生毒性試験の信頼性を高める。神経組織の発生初期段階が当面のターゲットとなるが、より成熟した神経組織への分化が確認できれば、後期段階についても検討したい。

(2)研究の進め方・組み立て

[内容評価]

本研究はすでに基底膜作製について特許も保有しているなど研究の準備状況が整っており、また、予測できない支障に対する対策も立てられていると判断され、成功が期待できる。

[提案、要望]

ホールボディーのin vivoに代わる代替試験法の開発のような最終目標を常に考慮しつつ研究開発を行うことが大切である。

細胞増殖に利用する基底膜基質に関することが中心であるが、胚葉体を用いた毒性試験の方はどのように進めるのか、2グループでの共同研究体制をうまく進めていただきたい。また、知的財産の流れにも注意して研究を進めてほしい。

[対処方針]

外部評価の際に、胚様体を用いた神経組織への分化誘導系として、基底膜構成成分を分泌する細胞を用いて作製した擬似基底膜基質は、従来のゼラチン基質を用いた場合より格段に優れていることを呈示した。また、この基底膜成分を分泌しない細胞にはこの効果が殆ど無いことから、この基底膜成分がその主たる理由と考えられることも示した。この種の細胞以外にも、グリア細胞、または、間充織細胞から作製した擬似基底膜基質と比較することで、神経組織の分化・成熟にとってより適した培養基質の探索も併せて行う予定である。

Adobe Readerのダウンロードページへ PDFの閲覧にはAdobe Readerが必要です。Adobe社のサイトからダウンロードしてください。