知的研究基盤の年度評価(平成16年4月)
地球環境研究センター
- 更新日:2004年7月22日
1)事業の概要
地球環境の『モニタリング』を実施する、スーパーコンピュータやデータベースなどを中心とする地球環境研究の『支援』を行う、地球環境研究の様々な学問領域、対象、国々などの研究を『総合化』する。
2)事業期間
平成13年度〜
3)平成15年度研究成果の概要
1. 戦略モニタリング・ベータベースの整備
1. 温室効果ガス モニタリング・データベース
- 波照間島・落石岬における連続自動観測の継続、データのHPによる公開。HFC、黒色炭素など新規連続観測の開始
- 西太平洋南北海洋性大気の観測の継続。同位体・酸素観測との連携
- 標準ガス・分析センターの整備(第二世代CO2、オゾン校正など)
- シベリア上空(3地点)の高度分布測定の継続と高頻度化・地上支援観測の整備
- 北太平洋および西太平洋のCO2収支観測の継続
- 苫小牧CO2フラックスの観測継続、総合観測拠点としての整備
- 天塩における森林施行による炭素循環モニタリング継続
2. 成層圏オゾン減少
- つくばにおける成層圏オゾンのミリ波分光観測の継続
- つくばにおけるFTIRによる高分解能観測の継続
- 陸別での成層圏オゾンのミリ波分光連続観測と低高度観測への改良・ブリューワ分光器による紫外線観測の継続
- 有害紫外線観測ネットワークの継続
3. 海洋・陸水環境
- GEMS/Waterのモニタリング継続
- メコン河国際河川の水質・生物多様性モニタリングの検討
4. 社会科学・その他の分野
- 温室効果ガス排出シナリオデータベースの整備
- 炭素吸収源データベースの整備・衛星データの収集と解析
- 東南アジア森林データ収集整備の継続
5. 温室効果ガス排出インベントリの整備と解析
- 日本国の温室効果ガス排出/吸収インベントリのとりまとめと報告
- 温室効果ガス排出/吸収インベントリデータの解析
- 東アジア地域における温室効果ガス排出/吸収インベントリに関する国際研究協力
- IPCC、気候変動枠組条約下での活動への参画・貢献
6. 衛星による温室効果ガスモニタリング手法の開発
- 近赤外太陽光散乱法によるCO2、CH4の気柱濃度測定手法の開発
2. 地球環境研究の総合化および支援
1. 地球環境研究の総合化
- 地球環境研究(炭素隔離)の現状把握調査
- IGBP、WCRP、IHDPによるGlobal Carbon Project 国際オフィスの開設
- UNEPのGlobal Environment Outlook編纂への参加
2. 地球環境研究成果の発信
- 地球環境研究センターニュースの発行(12回)
- ホームページの充実
- CGER事業報告書の出版
4)今後の課題、展望
上記モニタリング・データベース、地球環境研究の総合化、地球環境研究成果の発信は長期的事業である。平成15年度からモニタリングとデータベースを統合しオリジナルデータを整備することとした。今後新たに、温室効果ガス観測衛星であるGOSAT、温暖化対策技術としてのオフィスビル省エネ対策技術開発に取り組む。
5)研究予算額
- 平成13年度:673,000,000円
- 平成14年度:831,000,000円
- 平成15年度:855,000,000円
6)評価者意見の概要
地球環境のモニタリング、データベースともに業務が着実に進捗しており、本センター設置の目的は果たされていると認められると、概ね肯定的な評価であった。特に測定法の基準化、標準ガスの整備、長期モニタリングの実行は高く評価された。
他方、他省庁のデータを統合した分析、世界とのマッチングや我が国がカバーすべきもの等の明確化、全体としては、テーマの大きさ複雑さに対し研究者数や予算が少ないこと、ヒトや生態系に対する影響を直接調査研究する必要性、温暖化のリスクを示すこと、地球環境の変化の兆候を把握するシステムを検討することなどのご指摘をいただいた。
7)意見の反映
現在実施中の研究については高い評価を得たので、一層の努力を積みつつ着実に成果を出していく方針である。
- 炭素循環に関する研究成果・データの収集取りまとめは、国内の他の研究との連携の仕組みが整いつつあることから、その中心となって取り組みたい。
- 世界の協力体制は、地球環境研究センターに開設された国際炭素プロジェクトの国際事務局や、総合科学技術会議などとも共同し、その強化に努める。
- 地球環境の変化の兆候全般については、本研究の枠を超えた取り組みが必要であるが、炭素循環の変化の兆候については、本研究において検出システムの検討を行いたい。
- 競争的資金の獲得だけではなく、長期安定なモニタリングやデータベース整備の推進資金や組織の仕組みについて、国の施策の改善を求めている。人材の確保については、研究所の判断でできる改善と、国の施策改善に待つところがあり、両面で努力している。