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特別研究平成14年度終了課題の事後評価(平成15年11月)
干潟等湿地生態系の管理に関する国際共同研究

  • 更新日:2003年6月30日

1)研究の概要

干潟生態系は現在、最も開発に曝されている生態系の一つである。開発に対する総合的・科学的・客観的評価がこれまで十分に行われない状況にあった。そこで、干潟生態系への開発影響を定量的・客観的に、物質循環的機能の観点から評価する手法の検討を行った。

2)研究期間

平成10〜14年度(5年間)

3)研究成果

モデル調査地として全国の13地点の標準的な干潟、東京湾富津干潟、盤洲干潟を例に干潟生態系の構造と機能の把握に関する調査を例に、生物地球化学的な観点から干潟の生態系について研究した。生態系機能の評価のためJHGMモデルを事業の比較対象地に適用するため、東京湾の比較調査を実施した。干潟の航空写真撮影と現地踏査、底生生物・底生藻類等の調査から各干潟生態系の構造と機能を明らかにした。小櫃川河口塩生湿地における高等植物の分布調査、測量調査、土壌環境調査を実施し、塩性湿地植物、海浜植物、陸上植物の総合被覆度を指標に環境(土壌水の電気伝導度、比高等)との関係を示す生育地適性(HSI)モデルを作成した。

4)研究予算額

  • 総額:92,000,000円

5)研究実施の背景

干潟・湿地生態系は国際的にも鳥類の生息地、越冬地あるいは中継地として重要な生態系であり、生物多様性に富む生態系である。日本の干潟は戦後だけでもその約4割が消失したと言われる。湿地に関するラムサール条約では湿原や干潟を含めた湿地生態系に対し、「賢明な利用・活用」を図ることが提唱され、湿地生態系をどのように国際的に維持管理の対応が急務である。また、1999年6月から施行された環境影響評価法には生態系影響評価の項目が加わり、数量的に影響を評価する事が必要になってきた。

6)評価結果の概要

時期を得た重要な研究であり、従来の評価法に対して干潟に適した新たなJHGMを提案した成果が高く評価された。国内の干潟に関する比較がなされ、干潟保全の為の基礎的なデータを相当量収集し、底質特性等をよく調査し、生態系の「構造」についての解析できており、評価要素と数値化はなされたと評価された。干潟の構造とその機能の把握をめざした堅実な手法、選んで課題に向けて行った作業、努力が評価された。生態系の管理評価非常に重要であるから湿地生態系の研究を続けるよう要望された。今後の発展のためには、周辺の環境変化・流域との関係・地形・塩分濃度・流れ・波などの物理的要素を取り入れ、生態系の「機能」、社会条件も視野を研究するとよいとの指摘を受けた。価値あるデータを総合的に解析し、生態系の特性を表すパラメーターの提案干潟形成メカニズムに関与する指標の導入、管理手法の開発へと発展させ、多くの場で使用される手法にするように要望された。国際的貢献・国際的視点・国際的フレームの区別を明示し、残された希少な干潟の保全水準・目標、守るべき基準を明らかにし、管理目標を明確にすることが今後の課題であるとの指摘を受けた。地域を代表する手つかずの干潟の保全や維持する手法の開発研究が必要との指摘を受けた。

7)対処方針

今後、干潟流域の環境変化・物理的要素・社会的要素を取り入れ、生態系の機能評価手法を完成させて行きたい。本研究のデータを総合的に解析し、生態系の特性の指標の提案、干潟形成メカニズムに関与する指標の研究、エコシステムマネジメント手法の開発へと発展させ、使用される手法に進歩させたい。国際的視点に立って、希少な干潟・湿地の保全基準・目標、守るべき基準を明らかにし、管理目標の作成や手つかずの干潟・湿地の保全や維持する手法の開発研究も進めて行きたい。