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特別研究平成14年度新規提案課題の事前評価(平成14年4月)
分子認識サイト構築法の開発とその環境研究への応用

  • 更新日:2003年6月30日

1)事業の概要

環境中の濃度が低く、毒性が極めて高いアオコ毒や環境ホルモンのような化学物質を環境中から除去する現在の吸着材は物質の一部の性質だけを利用しているために不必要なものを多く吸着し、目的とする物質の吸着効率を悪くしている。このような欠点を除くために、選択性の高い吸着材を開発することが重要な環境技術の一つとなっている。本研究では、標的分子の構造と電子状態を利用して選択性の高い分子認識サイトの構築法を開発し、環境研究や環境改善への応用を図ることを目的とする。

2)事業期間

平成14〜16年度(3年間)

3)研究計画

(全体計画)分子認識サイトの構築における戦略として、1)標的分子の部分構造の鋳型を利用する。2)標的分子の電子状態を利用した選択性の高い分子認識サイトを化学合成で構築する。  合成した分子認識サイトの評価は標的分子との親和性を指標として行う。 合成された分子認識サイトの利用法として環境ホルモンやアオコ毒の選択的濃縮や高分解能分析カラムへの適用を検討する。また、環境中の有害物質の除去を目的とした有害物質認識膜の可能性を検討する。

  • 14年度:
    分子認識に必要な要素を抽出するために、70種類近い同族体のあるアオコ毒ミクロシスチンを一グループとし、グループ全体を捕捉する分子認識サイトの構築を行い、分子認識における必要十分条件を明らかにする。
  • 15年度:
    ペプチド、両性イオン化合物、複素環化合物、ビシクロ環化合物などのモデル化合物を用いて、分子認識サイトにおける分子認識の必要十分条件を一般化する。また、鋳型モノマーの重合による水素結合能の発生を防止する手法の開発を目指す。
  • 16年度:
    合成された分子認識サイトの利用法として環境ホルモンやアオコ毒の選択的濃縮や高分解能分析カラムへの適用を検討する。また、環境中の有害物質の除去を目的とした有害物質認識膜の可能性を検討する。

4)研究度予算額

総額約42,000,000円

5)研究実施の背景

環境ホルモンやアオコ毒のように環境中の濃度が低い物質を測定する場合や環境中の有害物質を除去する場合に、吸着剤を用いた濃縮法が多用されている。しかしながら、現在用いられている吸着剤は標的物質の性質の一部を用いているだけであるために、選択性が低く、測定の妨害となる物質を多量に吸着する。また、有害物質除去では標的物質以外の物質が多量に吸着することによって、吸着剤がすぐに飽和状態になり、結局高価なものになっている。このような状況から、標的物質に対する選択性の高い吸着剤の開発が期待されている。

6)評価結果の概要

評価結果を大別すると以下の2点に絞られた。1)新しい可能性があり、息の長い研究を想定して専門家を育成するように研究費を投入すべきであろう。2)重要な研究であるが、多様な物質がある中で、それらを全てつくるのは無理では無いかとの指摘を受けた。

7)対処方針

新たな発想に基づく技術開発であり、専門家の育成も含めて息の長い研究として支援する必要がある。指摘を受けた2)については物質の構造に基づいた物質群をグループ化し、グループ全体を選択的に吸着する手法の開発に努め、汚染物質除去への可能性を早急に明らかにする。具体的には70種類近い同族体のあるアオコ毒ミクロシスチンを一グループとし、ミクロシスチン全体を選択的に吸着するサイトの合成を行うことにより、このサイト構築法の有用性を実証する。一方、分離手段として用いる場合には、幾何異性体や光学異性体を含めたより選択性の高いサイトの構築法を開発し、モニタリングや分析における手法の簡易化や高価な器機を必要としない分析法の開発につなげるようにする。