化学物質の毒性研究の歴史の中でわが国はいくつかの大きな貢献をしています。まず、「カネミ油症」は忘れてはいけない事件です。
この大規模なPCB中毒事例をきっかけに「化学物質審査規制法」を中心とした、わが国の化学物質管理の体制が出来上がりました。
それ以上に重要なことは、世界的にも極めて早くからわが国が化学物質の規制に取り組んだこと、また、その努力がストックホルム条約の下での残留性汚染物質(POPs)に対する国際的な取り組みに結びついたことです。
一方、化学物質の代謝や毒性メカニズム研究を進める上で絶対忘れてはいけないシトクロムP450はわが国で佐藤了先生により発見されたものです。その研究は大きく花開き、ダイオキシン類の毒性発現に重要と考えられるAhレセプターを介したCYP1A1などの遺伝子発現メカニズム研究では世界をリードしています。
わが国は化学物質の毒性メカニズムを明らかにする上で必須である変異原物質研究や薬物代謝研究は世界のトップレベルにあります。時代の潮流であるトキシコゲノミクス研究においても、わが国から新しいアイデアが次々と発信されています。
また、社会の安心・安全を確保する上でリスク評価は大きな課題ですが、化学物質の安全性評価・管理をリスク評価の立場から見直す動きが進んでいます。さらに、化学物質の管理の仕組みとしてPRTR(汚染物質排出・移動登録)が開始され、研究者にとっても化学物質管理は身近な問題となりました。
歴史的な背景も含め、わが国はそれぞれの分野で化学物質の毒性メカニズム研究に大いに貢献しています。しかしながら、化学物質の毒性、あるいはそのメカニズム、さらにはリスク評価の第一線に立つ先生方のご研究を一堂に伺い、議論させて頂く機会は、寡聞のこと失礼を許していただければ、あまりなかったように思われます。
本年度はぜひその機会を作らせていただきたく、標記学術講演会を企画いたしました。
10:00-10:15 |
イントロダクション |
青木 康展
国立環境研究所 |
10:15-11:05 |
「油症事件とダイオキシン・PCB汚染のリスク評価」 |
増田 義人
第一薬科大学名誉教授 |
11:05-11:55 |
「生体の外来異物応答におけるAhRの役割」 |
藤井 義明
筑波大学 |
11:55-13:10 |
休 憩 |
13:10-13:50 |
「環境化学物質のリスク評価における代謝過程の役割」 |
太田 茂
広島大学 |
13:50-14:30 |
「環境化学物質の発がん・遺伝毒性リスク評価:トランスジェニック動物を用いたアプローチ」 |
能美 健彦
国立医薬品食品衛生研究所 |
14:30-15:10 |
「Percellome手法を用いたトキシコゲノミクス研究」 |
菅野 純
国立医薬品食品衛生研究所 |
15:10-15:25 |
休 憩 |
15:25-16:05 |
「PRTRデータのリスク評価への活用方策」 |
片谷 教孝 山梨大学 |
16:05-16:45 |
「化学物質のリスク評価の実務と管理の姿」 |
東海 明宏 産業技術総合研究所 |
16:45-17:15 |
総合討論 |
(司会)内山 巖雄 京都大学 |
- 参加希望の方は、FAX または E-mailにて、氏名(ふりがな)・勤務先・住所・TEL・FAX・メールアドレスを明記の上、下記宛お申し込み下さい。
- (独)国立環境研究所 化学物質環境リスク研究センター 青木康展、吉川泰代
TEL:0298-850-2942 FAX:029-8502920
- E-Mailでのお問い合わせ : E-mail:hlthrisk@nies.go.jp
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