
シンポジウム「アジア低炭素社会にむけて」の結果について
(お知らせ)
平成23年3月31日(木) | ||
独立行政法人国立環境研究所 | ||
地球環境研究センター温暖化対策評価研究室 | ||
室 長 | : 甲斐沼美紀子 | (029-850-2422) |
主任研究員 | : 藤野純一 | (029-850-2504) |
研 究 員 | : 芦名秀一 | (029-850-2227) |
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者 クラブ同時配付 )
国立環境研究所は環境省、国際協力機構 (JICA)、科学技術振興機構 (JST)とともに、2月22日(火)に「アジア低炭素社会にむけて」Asia LCS scenarios and actions How to achieve sustainable low-carbon society(「環境省 環境研究総合推進費アジア低炭素社会研究(S-6)」プロジェクトの進展および「アジア地域の低炭素社会シナリオの開発(SATREPS)」プロジェクトの開始)を東京市ヶ谷のJICA研究所で開催し、12カ国から、約213名の聴衆を集めて盛会のうちに終了しました。
1.概要
2011年2月22日(火)に東京市ヶ谷の国際協力機構JICA研究所国際会議場において、日本を含む12カ国の政策決定者、研究者、企業、NGOら総計213名の幅広い参加を得て、「アジア低炭素社会にむけて」(「環境省環境研究総合推進費アジア低炭素社会研究(S-6)」プロジェクトの進展および「アジア地域の低炭素社会シナリオの開発(SATREPS)」プロジェクトの開始)が開催された。
2.主催者
(独)国立環境研究所、環境省、(独)国際協力機構 (JICA) (後援:(独)科学技術振興機構 (JST))
3.目的
2009年4月からスタートした環境省環境研究総合推進費S-6「アジア低炭素社会に向けた中長期的政策オプションの立案・予測・評価手法の開発とその普及に関する総合的研究(アジア低炭素社会研究プロジェクト)」では、(1)アジアにおける低炭素社会の実現に向けた統合シナリオの開発、(2)アジア地域の低炭素発展の可能性とその評価を行うための基礎分析調査研究、(3)アジア低炭素社会実現に向けた中長期国際・国内制度設計オプションとその形成過程の研究、(4)経済発展に伴う資源増大に起因する温室効果ガス排出の抑制に関する研究、(5)アジアにおける低炭素交通システム実現方策に関する研究、という5つの視点から2050年までを見越したアジア各国・地域の低炭素社会構築のための道筋を包括的、かつ定量的に提示するための研究を行っている。

また、本年度から国際協力機構(JICA)/ 科学技術振興機構(JST)地球規模課題対応国際科学技術協力事業(SATREPS)の枠組みの下で実施している「アジア地域の低炭素社会シナリオの開発」では、これまで開発してきた低炭素社会シナリオアプローチをベースとし、マレーシアジョホール州イスカンダル開発地域における事例研究を通じ、低炭素都市への施策ロードマップ策定とその実施プロセスを通じた改良を行い、手法の実用性と有効性の向上を図る研究を進めている。
上記2つの研究プロジェクトはいずれも各国・地域の研究機関、研究者との対話・協働を通じ、相互に補完し合いながら実施しているが、アジア低炭素社会研究の成果をアジア各国・地域の多面的な特質や価値に適合するように社会実装していくためには、関連するあらゆる主体が低炭素社会実現のためのビジョン・戦略を共有し、それぞれの役割をコーディネートしながら進めていくことが不可欠となる。
本シンポジウムの開催目的は、アジアの低炭素社会実現に向けた実際の活動に影響力を持つ関係者を招聘し、S-6および、SATREPSの枠組みのもとで実施しているアジア低炭素社会の実現に向けた研究活動やこれまでの研究成果を発信することである。また、本シンポジウムの開催を通じ、アジアの低炭素社会作りに影響力のある関係者の参加を得て、科学的知見に基づいた低炭素社会実現への道筋を社会実装していくための協力メカニズムを構築しながら今後の研究を進展させ、政策展開していくこと目指す。
4.参加者
12カ国213名

5.シンポジウムの成果
シンポジウムは二部構成で行われた。第一部では、環境省竹本和彦特別参与、国立環境研究所大垣眞一郎理事長の開会挨拶に始まり、国立環境研究所が中心となって進めている「環境省環境研究総合推進費アジア低炭素社会研究プロジェクト」の進展を中心に議論が行われ、プロジェクトリーダーである国立環境研究所地球環境研究センター温暖化対策評価研究室・甲斐沼美紀子室長が、2050年までに世界の温室効果ガス排出量を半減させるために、日本の研究者が主体となって行っている研究の成果を報告した。「アジア低炭素実現に向けて研究の視点から言えること・言えないこと」と題したパネルディスカッションでは、プロジェクトの5つのチームのリーダーから、アジアの国や都市を対象に低炭素社会に向けた取り組みをシミュレーションするシナリオ分析、アジアの多様性を踏まえた分析、新たな国際枠組みの検討、低炭素社会と低資源社会とのシナジーとトレードオフ、アジアに適した交通システムの分析などについて報告を行い、会場との質疑応答を行った。

第二部は、JICA地球環境部江島真也部長の開会挨拶に始まり、続いて、JICA/JST共同プロジェクト「アジア地域の低炭素社会シナリオの開発」のリーダーである京都大学大学院工学研究科・松岡譲教授から、アジア低炭素シナリオ開発の狙いと各国の進展状況についての報告が行われた。

次に、プロジェクト実施機関であるマレーシア工科大学のHo Chin Siong教授から、マレーシア・イスカンダルを対象にした低炭素シナリオ開発と社会実装に向けた取り組みが紹介され、さらに、中国、インド及びタイの研究者からは、各国の低炭素社会シナリオ開発と政策展開の状況についての報告が行われた。
その後のパネルディスカッションでは、プロジェクト実施機関である国立環境研究所の藤野純一主任研究員のコーディネートで「どうすればアジア低炭素社会の研究成果が現場に社会実装できるのか」をテーマに、討論が行われた。
シンポジウム当日は、日本及び海外の研究者の他、官民両セクターからも低炭素社会作りに影響力のある関係者が多く参加し、これら関係者の間で活発な意見交換が行われた。その中で、低炭素社会を実現するためには民間企業や経済界との連携が重要であることが再認識されるとともに、多様なセクターにまたがる関係者間の協力メカニズム構築への一歩を築くことができた。両プロジェクトでは、今後も定期的にシンポジウムやセミナーを開催し、共同研究の成果を積極的に発信するとともに、低炭素社会実現への道筋を社会実装していくための協力メカニズムの構築を進めていく。
なお、当日の発表資料や映像は、アジア低炭素社会研究プロジェクトのホームページに掲載されている(http://2050.nies.go.jp/sympo/110222/)。ご覧いただければ幸いである。
6.問い合わせ先
(独)国立環境研究所 地球環境研究センター温暖化対策評価研究室
主任研究員 藤野純一 TEL:029-850-2504
URL:http://2050.nies.go.jp/index_j.html