記者発表 2010年11月22日

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世界的な金融危機にもかかわらず、2009年の化石燃料由来の
二酸化炭素排出量の減少は小幅にとどまる

(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付 )

平成22年11月22日(月)
独立行政法人国立環境研究所(029-850-内線番号)
グローバルカーボンプロジェクト(GCP)つくば国際オフィス事務局長
ソバカル・ダカール(2672)
地球環境研究センター 主席研究員 山形与志樹(2545)


グローバルカーボンプロジェクト(GCP) (注1)は、世界金融危機の経済的影響にも関わらず、2009年における世界の化石燃料由来の二酸化炭素排出削減量が予測値である2.8%を下回り、前年比1.3%にとどまったことを、Nature Geoscience(ネイチャー・ジオサイエンス(英国地球科学専門月刊誌))に発表します。この成果は、2010年11月22日(日本時間午前3時)の電子版に掲載の予定です。

グローバルカーボンプロジェクト(GCP)は、Nature Geoscience誌に掲載されるレポートにおいて、2009年における世界の化石燃料由来の二酸化炭素排出削減量が予測値である2.8%を下回り、前年比1.3%にとどまったことを発表します。

レポートでは、この理由として、GDPの減少が予測を下回ったこと、世界の経済活動における炭素集約度(GDP単位あたりの化石燃料由来の二酸化炭素排出量)の改善が予想より進まなかったことを報告しています。2009年における世界の化石燃料由来の二酸化炭素排出量は308億トンで、2008年の排出量に次ぎ、人類史上2番目に高い数値を記録しました。(独)国立環境研究所GCPつくば国際オフィス事務局長のソバカル・ダカール博士は、「新興国ではGDPは継続して増加傾向にあり(例えば、中国は前年比+9.1%)、これが世界における2009年のGDPの値を増加させ、結果として化石燃料由来の二酸化炭素排出を増加させることとなった」と述べています。

さらにレポートでは、2009年における世界の二酸化炭素排出削減量が1.3%にとどまった背景には、排出地域の大幅なシフトがあることも報告しています。日本、ヨーロッパおよび北米での減少幅が大きかった(例えば、いずれも前年比で、日本は-11.8%、米国は-6.9%、英国は-8.6%、ドイツは-7%、ロシアは-8.4%)一方で、新興国では二酸化炭素排出量が大幅な伸び(例えば、いずれも前年比で、中国は+8%、インドは+6.2%、韓国は+1.4%)が見られました。ダカール博士は、「経済成長が予測どおり伸びると仮定すれば、世界における化石燃料由来の二酸化炭素排出量は、2010年に3%以上増加すると予測され、2000年から2008年に観察された大幅な排出量の伸び率に近づくこととなる」と述べています。

一方で、土地利用変化(LUC)による二酸化炭素排出量は、国連食糧農業機関(FAO)の森林被覆および土地利用に関する最新データの発表を基に、前回予測から下方修正されました。豪州連邦科学産業研究機構(CSIRO)GCPキャンベラ国際オフィス事務局長のペップ・カナデル博士は、「幸いなことに、熱帯雨林における伐採の減少および温帯地域での森林再生の拡大により、土地利用転換部門において、確実に二酸化炭素排出量が減少している状況を目の当たりにしています」と述べています。また、「FAOにより新しく発表されたデータによれば、アジアの熱帯地方における森林伐採が以前の予測より進まなかったこと、また、温帯地域、とりわけユーラシア大陸での森林が再生されていることが示されています」とも述べています。

(注1) 地球環境変動にかかわる国際研究計画(IGBP, IHDP, WCRP, DIVERSITAS)の連携による「地球システム科学パートナーシップ(ESSP)」がスポンサーとなって2001年に発足した国際研究計画。グローバルな炭素循環にかかわる自然と人間の両方の側面とその相互作用について、自然科学と社会科学を融合した分析を実施し、国際的な炭素循環管理政策の策定に役立つ科学的理解を深めることを目的とする。
(独)国立環境研究所と豪州連邦科学産業研究機構に事務局が設置されている。

さらに詳しい情報については、以下のウェブサイトをご参照ください。
(2010年11月22日(月)日本時間午前7時以降掲載)
http://www.globalcarbonproject.org

【お問い合わせ】

(独)国立環境研究所
地球環境研究センター
GCPつくば国際オフィス事務局長
ソバカル・ダカール(Shobhakar Dhakal)
Tel: 029-850-2672, Fax: 029-850-2960
E-mail: shobhakar.dhakal@nies.go.jp

(独)国立環境研究所
地球環境研究センター 主席研究員
山形与志樹
Tel: 029-850-2545, Fax: 029-850-2960
E-mail: yamagata@nies.go.jp

豪州連邦科学産業研究機構 海洋大気研究部門
GCPキャンベラ国際オフィス事務局長
ペップ・カナデル(Pep Canadell)
Tel: +61-408-020-952
E-mail: Pep.Canadell@csiro.au

【関連リンク】

国際エネルギー機関、『2010年世界エネルギー展望』報告書で世界のエネルギーシステム転換に向けさらなる行動を要請 http://tenbou.nies.go.jp/news/fnews/detail.php?i=4580

国際エネルギー機関、CO2濃度450ppmでの安定化に向けた報告書を公表 http://tenbou.nies.go.jp/news/fnews/detail.php?i=2868

環境研究・技術開発の分野別取組マップ[A-1. 脱温暖化社会の構築領域] http://tenbou.nies.go.jp/science/support/fukanzu/01a.html