国立環境研究所特別研究成果報告書の公表について
(お知らせ)
(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時発表 )
平成22年4月26日(月) 独立行政法人国立環境研究所 |
|||
企画部長 | 齊藤 眞 | 029-850-2302 | |
環境情報センター長 | 岸部 和美 | 029-850-2340 | |
【課題代表研究者】 | |||
生物圏環境研究領域 | 竹中 明夫 | 029-850-2474 | |
化学環境研究領域 | 橋本 俊次 | 029-850-2531 | |
大気圏環境研究領域 | 今村 隆史 | 029-850-2406 | |
社会環境システム研究領域 | 日引 聡 | 029-850-2510 | |
【担当】 | |||
環境情報センター | 山口 和子 | 029-850-2343 |
国立環境研究所は、今般、特別研究課題の成果として4つの報告書を刊行しましたので、 お知らせします。
SR-89-2009 湿地生態系の時空間的不均一性と生物多様性の保全に関する研究
(特別研究):竹中 明夫
SR-90-2009 残留性有機汚染物質の多次元分離分析法の開発に関する研究
(特別研究):橋本 俊次
SR-91-2009 都市大気環境中における微小粒子・二次生成物質の影響評価と予測
(特別研究):小林 伸治(H22.3 退職)、今村 隆史
SR-92-2009 中長期を対象とした持続可能な社会シナリオの構築に関する研究
(特別研究):日引 聡
1.報告書・研究成果の概要
SR-89-2009 湿地生態系の時空間的不均一性と生物多様性の保全に関する研究 (特別研究)竹中明夫
本報告書は、平成18〜20年度に実施した特別研究「湿地生態系の時空間的不均一性と生物多様性の保全に関する研究」の成果をまとめたものです。
多様な生物と生態系を保全するには、まずはその分布を把握することが必要ですが、人間が歩き回って確認できることは限られます。飛行機や人工衛星などから全体を把握するリモートセンシングは有力な手段ですが、遠距離から姿をとらえることが難しい対象の場合は、空から得られる情報にもとづいて生物の分布の確率を推定するというアプローチが重要になります。本特別研究では、特に湿地を対象として、リモートセンシング情報から生物の分布パターンを推定することを試みました。空間統計学的な手法も取り入れて、群落の下層で暮らす稀少な植物や、植物群落を生活の場とする鳥などの分布確率を推定する手法を工夫したほか、植物群落の構造や、河川内の微地形の空間分布を推定することに成功しました。本報告書で呈示したアプローチが生物多様性の保全に役立つことを期待しています。
SR-90-2009 残留性有機汚染物質の多次元分離分析法の開発に関する研究 (特別研究)橋本俊次
この研究では、従来の環境汚染物質の分析法における問題点を解決することを目的に、高分離能力をもつ多次元ガスクロマトグラフ(GC×GC)と、広範囲の精密質量情報を網羅的に記録することができる高分解能飛行時間型質量分析計(HRTOFMS)を組み合わせた新しい分析方法を開発しました。
ダイオキシン類の分析では、前処理を省略し、複数回必要だった測定を1回で済ませることを可能にしました。同時に、公定法による測定値と同等の結果を得ることができるようになり、これまで非常に困難だった迅速さと正確さの両立に成功しました。また、この方法を応用し、試料量を少なくすることも可能になり、POPsやPCBの分析では、必要な大気や河川水の試料量を数百分の一にしています。さらに、試料中の化学物質の情報を余すことなくデータとして保存することも可能にしました。その中には未知物資も多数含まれているはずです。この画期的な分析法の普及と各分野への貢献が期待されます。
SR-91-2009 都市大気環境中における微小粒子・二次生成物質の影響評価と予測 (特別研究)小林伸治(H22.3 退職)、今村隆史
直径が数µm以下の微小な粒子状物質(PM)は、人の健康に及ぼす影響が大きいため、大気環境を保全する上で重要な物質として、2009年度にはわが国のPM2.5(直径2.5mm以下の微小粒子)の環境基準が設定されました。近年、工場などの固定発生源におけるダイオキシン対策やディーゼル車に対する排出ガス規制の強化により、都市の大気環境に大きな影響を及ぼしていたばいじんやディーゼル車からの粒子は減少する傾向にありますが、その一方で、窒素酸化物(NOx)や揮発性の有機物質(VOC)等のガス状物質から光化学反応で生成される二次粒子の影響が高まる傾向があります。しかし、二次粒子の発生、分布、健康影響などは、十分解明されてはおりません。この研究では、最新のディーゼル車の排出ガス評価、フィールド調査に基づいた二次有機粒子や生物起源粒子の挙動や寄与の推定、疫学的な見地からの大都市域およびその周辺地域でのPMへの曝露と死亡リスクとの関連性などに関する一連の研究を行いました。本研究報告書がPMの大気環境影響の研究の新たな取り組みの一歩になれば幸いです。
SR-92-2009 中長期を対象とした持続可能な社会シナリオの構築に関する研究 (特別研究)日引 聡
環境問題の解決策を検討する上で、環境問題はもとより、エネルギーや食料等の安全保障、国際貿易、社会経済活動などさまざまな観点から、将来にわたる長期的な持続可能な社会のビジョンを定め、問題解決に向けたシナリオやロードマップを構築することは重要です。本報告書では、平成18〜20年度に実施した特別研究の成果として、定量化が可能な事象については、統合評価モデルや計量経済モデルを用いて、ビジョン・シナリオを描き、定量化が困難な事象については、専門家インタビューなどの手法を用いて、定性的なビジョン・シナリオを描き、持続可能な社会像を構築するための道筋や課題を示しています。また、今後、持続可能な社会構築に向けたより詳細なビジョン・シナリオの検討のために、持続可能性指標のあり方についても提示しました。持続可能性の観点から社会の状況を把握する指標として、現在、必ずしも適切な持続可能性指標は存在しないからです。
これらの研究成果に基づいて、今後の持続可能な社会の構築に向けた取り組みに貢献したいと考えています。
2.報告書の閲覧・入手について
本報告書は、以下で閲覧できます。
○国立環境研究所ホームページ(URL:http://www.nies.go.jp/kanko/index.html)
○国立環境研究所図書室
○国立国会図書館
なお報告書の入手を希望される場合には、残部があれば頒布いたします(送料本人負担)。 下記へお問い合わせください。
連絡先:環境情報センター情報企画室出版普及係
(TEL: 029-850-2343、E-mail:pub@nies.go.jp)