記者発表 2010年2月16日

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温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による観測データの
解析結果(二酸化炭素・メタン濃度等)の一般提供開始について
(お知らせ)
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、文部科学省記者会同時発表 )

平成22年2月16日(火)
(独)国立環境研究所 地球環境研究センター
  衛星観測研究室長:
  横田 達也 (029-850-2550)
  GOSATプロジェクトオフィスマネージャ:
  渡辺 宏 (029-850-2035)
環境省地球環境局総務課研究調査室
  代 表: 03-3581-3351
直 通: 03-5521-8247
室 長: 小野 洋   (内線6730)
補 佐: 清野 達男  (内線6731)
係 長: 橋本 徹   (内線6735)
(独)宇宙航空研究開発機構広報部 報道グループ
報道グループ長:三輪田 真 (050-3362-5691)
  主 任: 萩原 明早香 (050-3362-5102)


環境省、(独)国立環境研究所及び(独)宇宙航空研究開発機構は、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT(ゴーサット)、平成21年1月23日打上げ)プロジェクトを推進していますが、今般「いぶき」による観測データの解析結果(二酸化炭素・メタン濃度等)について初期検証作業が完了したのに伴い、当該データの一般提供を開始します。

温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による晴天域の観測データより解析された、大気中の二酸化炭素とメタン濃度について、初期検証作業が完了したことに伴い、全球にわたる当該データ及び雲被覆情報の一般提供を平成22年2月18日より開始します。

今後は、さらに解析結果のデータ質の向上等を進めるとともに、平成23年上半期を目処に、月別・地域別の二酸化炭素吸収排出量(収支)の一般提供を開始する予定です。

【提供方法】

(独)国立環境研究所のいぶきデータ提供に関するホームページ
http://data.gosat.nies.go.jp/)よりユーザ登録を行えば、希望する地点、日時の解析結果(データ)をダウンロードできます。

また、解析された二酸化炭素・メタン濃度データを図示した結果を同ホームページで閲覧することができます。

【本件問い合わせ先】

(「いぶき」衛星、搭載センサ及び観測状況について)
(独)宇宙航空研究開発機構 宇宙利用ミッション本部 地球観測研究センター
電話: 050-3362-3064

(搭載センサデータ及びその解析結果について)
(独)国立環境研究所 地球環境研究センター GOSATプロジェクトオフィス
電話: 029-850-2966   

(添付資料)
「いぶき」による観測データの解析結果とその一般提供開始について

「いぶき」搭載の主センサである温室効果ガス観測センサ(TANSO-FTS)によって取得された輝度スペクトルデータ(レベル1Bプロダクト)をもとに解析された二酸化炭素とメタンの濃度(カラム平均濃度注1))データ(レベル2プロダクト)に対する初期検証作業が完了し、それらの一般ユーザへの提供準備が整ったため、同データの提供を平成22年2月18日より開始します。

データの取得を希望する方は、国立環境研究所のGOSATウェブサイトにおいて所定のユーザ登録を行ったうえで、GOSAT観測データベースの中から希望する地点、日時のデータを検索・選択しダウンロードすることができます。当面は平成21年4月6日〜8日と20日〜28日、6月、7月、ならびに10月29日以降平成22年1月31日までの観測データの解析結果の提供となります注2)。なお、ユーザ登録には電子メールアドレスが必要です。

データ提供に関するホームページ:http://data.gosat.nies.go.jp/

「いぶき」搭載の副センサである雲・エアロソルセンサ(TANSO-CAI)の地球観測画像データから解析された雲被覆情報注3)(レベル2プロダクト)についても、上記のウェブサイトにおいて平成22年2月18日より提供を開始します。

(注1) 地表面だけでなく、上空までの鉛直の柱(カラム)の中にある乾燥空気全量に対する対象気体量の比率を示す平均濃度。

(注2) 平成22年2月以降の観測データの解析結果は、観測の翌月に1ヶ月分をまとめて提供する予定。また、平成21年8月〜10月分については、準備が整い次第提供する予定。

(注3) TANSO-CAIのバンド間演算により求めた各画素の晴天域信頼確率を示すデータ。雲フラグと称する。当プロダクトについては、当面は二酸化炭素とメタン濃度データと同一期間のプロダクトを提供する。今後は、観測後に解析が完了次第、順次提供する。

(1)TANSO-FTSの観測点とレベル2プロダクト(二酸化炭素及びメタン濃度)の解析例

 TANSO-FTSにより観測されたデータ(レベル1Bプロダクト)は、TANSO-CAIからの雲被覆情報を基に観測視野の中に雲がないことなどを確認の上、二酸化炭素とメタン濃度の算出に利用されます。その後、算出結果の品質について精査した後、判定条件を満たした地点について、その算出値がレベル2プロダクトとなります。

このようにして求めた、平成21年4月、7月、11月、および平成22年1月それぞれの「いぶき」による晴天域における二酸化炭素、メタンの濃度分布を図1、2に示します。

図1 平成21年4月,7月,11月,平成22年1月の、晴天域における二酸化炭素カラム平均濃度の1.5度メッシュ平均値分布(平成21年4月分は4月6〜8日と20〜28日の12日間の平均値)

図1 平成21年4月,7月,11月,平成22年1月の、晴天域における二酸化炭素カラム平均濃度の1.5度メッシュ平均値分布(平成21年4月分は4月6〜8日と20〜28日の12日間の平均値)

図2 平成21年4月,7月,11月,平成22年1月の、晴天域におけるメタンカラム平均濃度の1.5度メッシュ平均値分布(平成21年4月分は4月6〜8日と20〜28日の12日間の平均値)

図2 平成21年4月,7月,11月,平成22年1月の、晴天域におけるメタンカラム平均濃度の1.5度メッシュ平均値分布(平成21年4月分は4月6〜8日と20〜28日の12日間の平均値)

「いぶき」により、これまで地上観測局がほとんど存在しなかった観測の空白域のデータが取得されるようになりました。例えば、シベリア(夏季)、南アメリカ中東部(夏季)、オーストラリア大陸(年間)、アラビア半島(年間)、デカン高原(秋冬)、アフリカ大陸中北部(年間)、アフリカ大陸南部(春夏)などです。これによって、これまで地上測定値がほとんどなかった地域についても、晴天時には二酸化炭素等の濃度分布とその変化を知ることができるようになります。

「いぶき」より得られた二酸化炭素とメタン濃度の分布やその季節変化は、従来の地上・航空機による観測結果と整合しています。

・二酸化炭素濃度は、陸域の植生活動の影響により、北半球では冬から春にかけて高濃度、夏季に低濃度になります。また、南半球では北半球と比較して季節変動は小さいことが知られています。これらの傾向は、「いぶき」の解析結果でも確認することができました。

・メタンは1年を通して北半球の濃度が南半球より高いことが知られています。これは「いぶき」の解析結果からも確認することができました。

また、「いぶき」の解析結果と、地上観測や航空機観測によるデータとの比較検討(初期検証作業)を行った結果、濃度の分布や季節変化は整合しているものの、「いぶき」による二酸化炭素とメタンのカラム平均濃度は、地上や航空機からの観測結果に比べて2〜3%程度低いことが確認されました。

なお、図1、2には、アフリカ北部とアラビア半島の砂漠地域とその周辺に、季節によって際立った高濃度が見られます。これらの高濃度のデータには砂漠の砂塵等による大きな誤差が含まれている可能性があります。

今後は、「いぶき」のデータ処理手法をより精密化することにより、誤差等を改善するとともに、継続して検証作業を実施し、「いぶき」による解析結果の評価を続けます。平成22年夏季を目処に、新たな手法による処理の準備が整い次第、新バージョンの解析結果を順次提供する予定です。また、「いぶき」による二酸化炭素濃度解析結果と地上観測データとを併せて解析した月別・地域別の二酸化炭素の吸収・排出量(収支)の一般提供に向けて、データ解析を開始する予定です(図3)。

図3 二酸化炭素の吸収・排出量マップ(イメージ)

図3 二酸化炭素の吸収・排出量マップ(イメージ)

(2) TANSO-CAIのレベル2プロダクト(雲被覆情報)の例

TANSO-CAI レベル1Bプロダクトのバンド間演算により、各画素の晴天域信頼確率が計算されます。これを「雲フラグ」プロダクトとして提供します。

図4に、日本付近のTANSO-CAIレベル1Bプロダクトのサンプル画像及び雲フラグプロダクトの例を示します。

図4 TANSO-CAIによる画像と雲フラグプロダクトの例(2009年4月23日の本州付近)

図4 TANSO-CAIによる画像と雲フラグプロダクトの例(2009年4月23日の本州付近)

図4では、晴天域信頼確率(0から1までの実数)がカラーコードによって示されています。晴天域信頼確率が0とは、その画素の内部に雲が存在する確率が100%と推定されたということを示し、晴天域信頼確率が1とは、その画素の内部に雲が存在する確率が0%(即ち晴天である)と推定されたことを示します。0から1の間の数値は曇りか晴れかの判断が難しいことを示しており、本プロダクトのユーザが0〜1の間に適当な閾値を設定することで、雲の画素と雲でない画素を調整することができます。