記者発表 2009年9月14日

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温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の初期校正の完了について
(お知らせ)

平成21年9月14日(月)
(独)国立環境研究所 地球環境研究センター
  衛星観測研究室長: 横田  達也(029-850-2550)
GOSATプロジェクトオフィスマネージャ: 渡辺  宏
  (029-850-2035)
(独)宇宙航空研究開発機構広報部 報道グループ
  報道グループ長: 大嶋  龍男(03-6266-6413)
担  当: 萩原  明早香 (03-6266-6414)


(独)宇宙航空研究開発機構、(独)国立環境研究所及び環境省は、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT;平成21年1月23日打上げ)プロジェクトを推進していますが、今般、レベル1データの初期校正が完了しました。

今回公開する解析画像は、初期校正を反映したデータを用いて、陸上および海上の晴天域における二酸化炭素カラム平均濃度分布の導出を行い作成した全球分布図(未検証)です。

本解析結果につきましては、以下のホームページでもご覧いただけます。

http://www.gosat.nies.go.jp/ または http://www.jaxa.jp/

今後は、校正結果を反映したレベル1データ(スペクトルデータ)の解析処理を行ってレベル2データ(濃度データ)を作成し、その検証を行うとともに、校正結果の反映等を行ったレベル1データを一般に公開していく予定です。さらに新たに校正されたレベル1データの解析処理を行ってレベル2データ(濃度データ)を作成、検証の上、一般に配布していく予定です。

(添付資料1):「いぶき」搭載TANSO-CAI*の観測データから算出した晴天観測点情報をもとにTANSO-FTS*の短波長赤外バンドの観測データから求めた平成21年8月1日〜31日における二酸化炭素のカラム平均濃度の全球分布図

(添付資料2):添付資料1のデータに対して、空間的な内外挿および平滑化を施した二酸化炭素のカラム平均濃度の全球分布図

【参考】温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)のデータ解析の現状

「いぶき」は現在初期校正を完了し、定常観測運用を続けており、(独)宇宙航空研究開発機構及び(独)国立環境研究所において搭載センサデータの定常的な処理を行っております。搭載センサデータから導出された二酸化炭素のカラム平均濃度(注)等の検証作業を継続して実施しています。

添付資料の図は、平成21年8月1日〜31日の1ヶ月間の晴天観測点における二酸化炭素のカラム平均濃度の全球分布図ならびに、空間的な内外挿および平滑化を施した全球分布図(いずれも未検証)です。8月は北半球が夏であるため、南半球に比較して植生の光合成が活発な北半球高緯度領域で二酸化炭素濃度が低いという傾向は、従来の地上観測による結果に概ね整合しています。ただし本結果は未検証であるため、推定された個々のカラム平均濃度値、全球分布図に見られる分布の詳細について科学的な解釈を与えることは適切ではありません。今後検証作業を進め、算出値の信頼性を評価するとともに、その結果を踏まえてデータ処理パラメータ等の調整を行い、データの再解析することを予定しています。

(注)カラム平均濃度:地表面だけでなく、大気上端までの鉛直の柱(カラム)の中にある空気全量に対する対象気体の平均濃度。

今後、処理結果の精度確認、地上からの観測データを用いた検証作業を行った後、校正済みの観測スペクトルデータ(TANSO-FTSデータ)や観測画像データ(TANSO-CAIデータ)(レベル1プロダクト)を衛星打上げ9ヶ月後(平成21年10月下旬)から、解析処理後の二酸化炭素とメタンのカラム平均濃度や雲被覆に関する情報(レベル2プロダクト)を衛星打上げ12ヶ月後(平成22年2月上旬)から、登録いただいた一般ユーザに配布する予定です。さらに、温室効果ガス濃度の月別分布を作成すると共に、「いぶき」による温室効果ガス濃度データと地上付近で測定された濃度データ等を併せて利用して、全球における地域別の炭素収支の推定を行います。

* TANSO: Thermal And Near infrared Sensor for carbon Observation

* FTS: Fourier Transform Spectrometer

* CAI : Cloud and Aerosol Imager

添付資料1
初期校正済みレベル1データから計算した二酸化炭素のカラム平均濃度(TANSO-FTS SWIRのレベル2データから求めたXCO2)全球分布図(ただし,未検証)
(平成21年8月1日〜8月31日の観測データから計算)

図:初期校正済みレベル1データから計算した二酸化炭素のカラム平均濃度(TANSO-FTS SWIRのレベル2データから求めたXCO2)全球分布図(ただし,未検証) 
(平成21年8月1日〜8月31日の観測データから計算)

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「いぶき」搭載の温室効果ガス観測センサ(TANSO-FTS)の個々の観測点における雲被覆情報を、雲・エアロソルセンサ(TANSO-CAI)の観測データより推定し、晴天と判定された測定点に対して、TANSO-FTSの短波長赤外バンドの観測データ(輝度スペクトルの初期校正済みデータ)より求めた二酸化炭素カラム平均濃度の全球分布図(ただし、雲があると判定された地域と、地表面反射が低いために相対的に雑音の大きな地点のデータを除く)。

なお、海洋上については、太陽光の海面における鏡面反射点近傍を測定対象点としており(サングリント測定方式)、太陽高度角が高い領域のみで有効なデータが得られています。

本解析結果に見られる、南半球に比較して北半球高緯度領域で二酸化炭素濃度が低いという傾向は、8月は北半球が夏であるため、南半球よりも北半球で植生の光合成が活発であることによるもので、従来の地上観測による結果に概ね整合しています。

ただし、本結果は未検証であるため、推定された個々のカラム平均濃度値について科学的な解釈を与えることは適切ではありません。今後、検証作業を進め、算出値の信頼性を評価するとともに、その結果を踏まえてデータ処理パラメータ等の調整を行い、観測データを再解析することを予定しています。

添付資料2
添付資料1に示したデータに対して空間的な内外挿および平滑化を施した二酸化炭素カラム平均濃度(TANSO-FTS SWIR のXCO2から求めたレベル3に相当する)の全球分布図(ただし、未検証)(平成21年8月1日〜8月31日の観測データから計算)

図:添付資料1に示したデータに対して空間的な内外挿および平滑化を施した二酸化炭素カラム平均濃度(TANSO-FTS SWIR のXCO2から求めたレベル3に相当する)の全球分布図(ただし、未検証)(平成21年8月1日〜8月31日の観測データから計算)

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この図は、Kriging法と呼ばれる統計的手法(注)を適用することにより、全球濃度分布データに空間的な内外挿と平滑化を施し、2.5 度の緯度・経度メッシュでの値として算出したものです。ただし、近傍の250km 以内に観測データが存在しない領域はブランク(白色)としています。

本解析結果に見られる、南半球に比較して北半球高緯度領域で二酸化炭素濃度が低いという傾向は、8月は北半球が夏であるため、南半球よりも北半球で植生の光合成が活発であることによるもので、従来の地上観測による結果に概ね整合しています。

ただし、本結果は未検証であるため、推定された個々のカラム平均濃度値について科学的な解釈を与えることは適切ではありません。今後、検証作業を進め、算出値の信頼性を評価するとともに、その結果を踏まえてデータ処理パラメータ等の調整を行い、観測データを再解析することを予定しています。また、空間的な内外挿および平滑化にかかるパラメータについても、実観測データの特性を踏まえて改良を図る予定です。

(注)Kriging法:数の限られた地点で観測されたデータの重みつき平均によって、観測が行われていない地点での値を偏りなく推定する方法。未観測地点の値を精度良く推定するためには、地点間の距離に応じてデータがどの程度相関を持つかを適切にモデル化する必要がある。