記者発表 2009年7月6日

ここからページ本文です

「自動車CO排出量マップ」サイトの公開について
(お知らせ)
(筑波研究学園都市記者会 )

平成21年7月6日(月)
独立行政法人国立環境研究所
  環境情報センター長: 松本 公男 (029-850-2340)
  情報整備室長: 佐々木寛壽 (029-850-2342)
  担当: 宮下 七重 (029-850-2342)
  社会環境システム研究領域交通都市環境研究室
  主任研究員: 松橋 啓介 (029-850-2511)
  担当: 米澤 健一 (029-850-2947)


国立環境研究所では、市区町村別の自動車からのCO排出量推計値を国民の皆様に分かりやすい情報として提供するとともに、市区町村等の地方公共団体における運輸部門の地球温暖化対策を推進するための基礎データとして活用いただけるよう、国立環境研究所「環境GIS」ホームページに「自動車CO排出量マップ」サイトを開設しました。

公開されたマップでは、例えば、「関東地域」の自動車COの総排出量は、横浜市など政令指定都市に次いで、水戸市、宇都宮市等、地方自治法上の中核市や特例市となっている都市で多く、地球温暖化対策推進法でこれらの都市に義務づけられた「地方公共団体実行計画」策定の必要性が高いことがわかります。また、同じ「関東地域」で「人口一人あたりの自動車CO排出量」をみると、公共交通網があまり整備されていない都心から離れた市町村において比較的高い値が多く、こうした地域で地球温暖化対策を進めるためには、自動車からのCO排出量の削減が重要な要素となることが示唆されています。

今回の「自動車CO排出量マップ」の作成にあたっては、自動車からのCO排出量をより適切に算出するため、国立環境研究所が、道路交通センサス自動車起終点調査のデータから推計する方法を研究・開発し、算出した平成11年及び平成17年における全国の市区町村別CO排出推計値を用いています。

1.背景

我が国の運輸部門におけるCO排出量は、環境省から公表されている平成19年度の温室効果ガス排出量確定値によれば、2億4900万tで、全体の19.1%を占めています。特に、自家用乗用車からの排出量は基準年(1990年)比41.6%と大幅に増加しており、今後の対策による大幅な削減が課題となっています。

一方、日本の地球温暖化対策の目標を示した京都議定書目標達成計画においては、市区町村等の地方公共団体が地域の環境行政の担い手としてイニシアティブを発揮することが期待されており、さらに、平成20年には地球温暖化対策の推進に関する法律が改正され、都道府県及び特例市(人口20万以上で地方自治法に基づく政令で指定される都市)以上の規模の自治体では、地方公共団体実行計画を策定することが義務づけられました。

以上のように、地方公共団体で温暖化対策に積極的に取り組むことが求められていますが、そのためには自治体ごとに運輸部門も含めCO排出量の現況を把握し、削減目標や対策を立案することが不可欠です。

国立環境研究所では、これまで市区町村別の自動車からのCO排出量推計値をより適切に算出する方法として、道路交通センサス自動車起終点調査のデータから推計する方法を研究・開発し、平成11年及び平成17年における全国の市区町村別CO排出量推計値として算出しました。このたび、これらのデータを、市区町村別の「自動車CO排出量マップ」として国立環境研究所「環境GIS」ホームページで公開することとしました。

2.「自動車CO排出量マップ」の概要

排出量マップでは、平成11年及び平成17年の市区町村別の自動車からのCO排出量について、「人口一人あたりの排出量」と「総排出量」を見ることができます。また、「全自動車」のCO排出量のほか、「乗用車」「貨物車」に区分してCO排出量を表示することができます。ただし、サンプルデータが不足し、統計的信頼性を満たさないデータについては、網掛けをして注意を促しています。

なお、環境省が6月15日に公表した平成20年の地球温暖化対策推進法の改正を踏まえた地球温暖化対策地方公共団体実行計画(区域施策編)策定マニュアルでは、「地方公共団体実行計画(区域施策編)」策定のために使用可能なデータとして本サイトのCO排出量推計値が紹介されています。

本サイトは、NIESホームページ「環境GIS」(http://www-gis.nies.go.jp)からご覧いただけます。

※「環境GIS」ホームページについて
国立環境研究所は、環境の状況などを地図やグラフなどに表現して可視化し、わかりやすく提供するシステムを構築し、さまざまな環境調査・研究の成果を「環境GIS」ホームページとして国立環境研究所ホームページ(http://www.nies.go.jp/index-j.html) から公開しています。

3.「自動車CO排出量マップ」の期待される効果

(1) 平成20年6月に改正された地球温暖化対策推進法において、都道府県及び特例市以上の地方公共団体に対し、「地方公共団体実行計画(区域施策編)」策定が義務づけられており、地方公共団体地域内における自動車からのCO排出量を把握する際に、本データをそのまま使用することができる。

(2)環境GISにより、地図上で、一目で地域の自動車からのCO排出量が確認できることによる“見える化”を図ることにより、環境問題に関する理解を深め、自発的な環境保全活動等の促進に繋がることが期待されます。

<参考>公開されたマップから見えること

  • 例えば、「関東地域」の「総排出量」のマップを見ると、当然、横浜市、さいたま市、千葉市といった政令指定都市の排出量が大きいこと(マップ上でオレンジ色で表示)が分かりますが、次のレベル(マップ上で黄色で表示)として、宇都宮市、前橋市、川越市、船橋市、柏市、横須賀市、相模原市といった、地方自治法上の中核市や水戸市、高崎市、伊勢崎市、太田市、川口市、所沢市、越谷市、熊谷市、厚木市といった、特例市で自動車からのCO2排出量が多いことが示されています。(東京都の23特別区は足し合わせると最も排出量が大きくなります。)
    これらの中核市、特例市は、平成20年度に改正された地球温暖化対策推進法で温室効果ガスを削減するための「地方公共団体実行計画」を策定することが義務づけられており、その計画策定の必要性が、自動車からのCO2排出量からも示唆されています。
  • 一方、同じ「関東地域」について、「人口一人あたりのCO2排出量」のマップを見ると、都心から遠い地域の市町村において、比較的高い値(マップ上で赤又はオレンジ色)のところが多くなっています。これは、そのような地域においては都心に近い地域と比較して公共交通網がそれほど整備されておらず、自家用車等への依存が大きいためと考えられます。
    このため、こうした地域において、地球温暖化対策を進めるためには、自動車からのCO2排出量の削減が重要な要素となることが示唆されています。

○「自動車CO排出量マップ」の公開イメージ

「自動車CO2排出量マップ」の公開イメージ
<「環境GIS」トップページの表示イメージ>

市区町村別排出量マップの表示例(例示:関東地域の総排出量)
<市区町村別排出量マップの表示例(例示:関東地域の総排出量)>

市区町村別排出量マップの表示例(例示:関東地域の一人あたり排出量)
<市区町村別排出量マップの表示例(例示:関東地域の一人あたり排出量)>